78話 小学生くらいの女の子にお姫様抱っこされる(そんな主人公)
「では、夜も遅いので寝ましょうか」
「ん、ああ。3人で部屋に戻るか」
空いていた部屋が一室あったので、そこを俺達3人に割り当てられていた。
「えーっと、映司さんとフェリさんは別の所で寝ましょう」
ランドグリーズによる唐突な提案。
「え? なんでだ?」
「よっ……と。それはですね……」
俺に密着するような体勢で、背の小さい彼女は耳打ちしてくる。
背が足りないので、椅子を使っている姿が可愛いのは秘密だ。
「……今の雰囲気のまま、フェリさんと一緒になったら映司さんが若気の至りをしてしまいそうだからです。子供達に悪影響です」
……とんでもない事を言ってくれる。
いくら俺でも……ええと……。
まぁ、その、自分に自信が持てない事ってあるよね!
「それじゃあ、ワタシはリビングで勝手に寝るぞ。慣れてるからどこでも平気だ」
俺の気も知らないで、ぶっきらぼうにフェリは言う。
向こうは雰囲気とか何か感じていなかったのだろうか……。
「私と映司さんは部屋で寝ましょうか」
椅子から降りながら、ランドグリーズはニコリと笑った。
「何か聞かれたらすごい誤解されそうな言い方を……」
「映司さんは、胸が大きい人が好きだから平気じゃないですか?」
確か今日の日中、町で──。
『背は小さめだけど、おっぱいはちゃんと大きい娘もいるな!』
『胸の話は今度ゆっくりと聞かせてくださいね?』
と恐ろしく微笑まれていた事を想いだした。
一生、根に持たれそうである。
若干、目が据わっているようなランドグリーズ見ないようにしつつ、部屋へ向かった。
だが、そこでふと気が付いた。
……うん、まぁ、部屋のドアを開けて、中に入ったら気が付くだろう。
「なぁ、この部屋」
「さ、一緒に寝ましょうか」
……ベッドが一つしか無い。
「よし、寝るか」
俺は部屋の隅に座ろうとした。
だが──。
「ほら、映司さん。カモンですよ?」
「ランドグリーズ、お前酔ってないか?」
「そうですね、寄っているかもしれません。ふふっ。ほら、早く~」
ランドグリーズは小学生サイズで、ベッドに入って手招きをしている。
「いや! やめてえええ! 俺が風評被害でロリコン扱いされるううう!」
「あの、この私──ランドグリーズは結構、身体年齢高いですよ? 具体的にはフェリさんと同じくらいです」
「あ、そうなんだ。なら──って、よくないから! 俺の女の子に対しての小心者ハートは潰れちゃうから!」
ランドグリーズは呆れたような顔をして──。
「小心者ハートってなんですか……? もう、女の子からこんな事をさせるなんて」
「いーやー!」
小学生くらいの女の子に、お姫様抱っこされてベッドに連れ込まれる俺であった。
「も、もうお嫁にいけない……」
「映司さんはお嫁にはいきませんから……。それに、風璃から昔聞いていたんです、添い寝。羨ましかったです」
小さい頃、俺は風璃と一緒に布団に入っていた時期がある。
それを藍綬が聞いたのだろうか。
「だから星々が許してくれる今くらい、映司さんを独り占めさせてください」
藍綬の声でそう言われると、断るわけにもいかない。
観念して、風璃にしていたように腕枕をする。
ランドグリーズの頭の重みを感じ、横を見ると眼が合った。
「今日のプリン、私のために作れるようになってくれたんですか?」
「まぁ、な……」
嬉しそうに、無邪気な顔をされてしまった。
それに呼応するように、昔の記憶が蘇ってくる。
「砂漠の夜は長いです。私……いえ、藍綬がいなくなった後の事とか聞いても良いでしょうか?」
「ああ」
俺が、食べ物にこだわるようになった理由。




