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異世界序列のシムワールド ~玄関開けたら2分で半壊……しょうがないから最下位から成り上がる~  作者: タック@コミカライズ2本連載中
第四章 神槍精製

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63話 黒妖精の国(砂漠地帯)

 ──というわけで、俺達は黒妖精の国スヴァルト・アールヴヘイムへと降り立っていた。

 上下左右、どこを見回しても……空以外は全て砂漠。

 今は日中なので、気温の高さは半端無い事になっている。


 オマケに日本とは違い、湿気が無いので常人なら焼けるような熱射で倒れてしまうだろう。


「フェリ、その格好で平気なのか?」


 横を歩く狼少女は、そこらのコンビニに出掛けるようなラフな姿。

 俺が使っていたTシャツと、ジーパンである。

 そこはかとなくむっちり感が強調されていて嬉しい事は嬉しいが、ここは砂漠。


 場違いすぎる格好。


「ん? エイジ、日本とは違ってエーテルを張り巡らせている状態だから、太陽に飛び込んでも平気だぞ?」


 何という規格外のスペック。

 ビキニアーマーで戦う女戦士理論みたいなものだろうか。


「というか、エイジも同じ様な事が出来るし」

「あー……、そうだな」


 俺もエーテルを身体中に広げ、人から神のような状態へ移行する。

 砂漠なのに熱くない不思議な感覚。

 そういえば、天上の階位で上級の奴らなら宇宙でも活動できるんだった。


 外見上は変わらないのにな。


「お腹も空かなくなるから、ワタシとしてはリラックスした状態でいたいんだけどな~」

「まぁ、街に着いたら何か食べよう」

「さっすがエイジ! 話が分かるぅ!」


 一気に魔法で飛んだり、神の肉体パワーで猛ダッシュ出来なくもないのだが、今回はスキールニルに迷惑をかけないため徒歩だ。

 ──昨日、彼女が話してくれた事を思い出す。

 出身地の異世界の幼馴染みが、黒妖精の国に顔が利くらしく、話したら転移許可をもらえたらしい。


 どうしてその場にスリュムもいて、スキールニルもいて、話がトントン拍子に進んだか?

 大体は、風璃の手の平の上という状態だ。

 俺達がヴィーザルと出会って、どうしようかとリビングで話している内容から察して、ここまでセッティングをした。


 山賊との取り引きの時も思ったが、大雑把な俺と違って優秀な妹である。

 というわけで彼女らに迷惑をかけないように、神パワー全開してしまって、開幕で半壊の強制解決は絶対回避である。

 あくまで紳士的な感じで鎖の交渉に挑む。


「ランドグリーズは平気か?」

「はい、私も戦乙女なので大丈夫です」


 普段は風璃に付いて、護衛になっているランドグリーズ。

 ゆったりとしたワンピースとエプロンドレスの中間のような服を着ている。

 風璃曰く、森ガールというファッションらしい……俺には難しい。


 とにかく、今回は荒事になるかもしれないので付いてきてもらった。

 俺、フェリ、人間形態ランドグリーズ(小)の3人で聖剣の故里を目指す。


「映司さん、その背負ってきているものは何ですか? 外からでも分かるくらい色々と凄まじいのですが」

「ん? ああ、これか」


 俺は、竹刀などを入れるロングバッグを肩にかけている。


「鍛冶士がいっぱいいると聞いたから、ミーミルからお土産にでもらったユグドラシルの枝を持ってきた」

「つまり……神槍を作るのですか?」

「うん」


 今の俺は、素の状態だとエーテルを攻撃に変換する時の効率が悪すぎる。

 魔法は使えても、得意とまではいかない。

 なので、武器が欲しい。


 あのヴィーザル達にも対等以上に戦え、もしもの時に誰かを守れるくらいの力。


「エイジぃ~、あの槍はすごいぞ~」

「フェリは知ってるのか?」

「もちろん! すごい威力だし、すごいいっぱいの敵を倒せるし、すごい命中力だし──ええと……すごい面倒臭いし?」


 最後のだけ、何やら武器らしくない。


「私も戦女神として、映司さんがアレを持つところを見てみたいですね。きっと、格好良いです」


 ランドグリーズから、格好良いという言葉を聞けてしまった。

 若干、照れてしまう。

 ふふ、格好良いか。


 未来の俺は最強の槍を携え、寡黙気味に相手を睨み付ける。

 その瞳は女の子達を惹き付けて……うへへ。


「あ、エイジ。その一歩先に──」


 フェリがハッとした表情で告げてきた瞬間、足下が一気に沈み込んだ。

 俺のにやけ顔は、足下の空間が無くなった事のビビリへと変わった。


「旅人をバリバリ食い殺す、四本脚の巨大な化け物が罠を張っているから、迂回した方が良いと思う。味は結構良いけど、今倒して食べちゃうと……街でご飯食べられなくなるし!」


 真剣なんだか、のんきなんだか分からないフェリである。

 足下に待ち受けるのは、人を丸呑みできるサイズの口腔。

 凶悪なギザギザの白牙で大歓迎されている。


 普通の人間からすると、地獄の入り口というやつだろう。


「ちょ、まじかよ!?」


 このまま落下すると、胃袋へ一直線だ。


「前、失礼しますね」


 弾丸の様に、眼前に飛び出してくるランドグリーズ。

 その手に持つ大盾を裏拳のようなフォームで回転させ、化け物の横っ面をぶっ飛ばした。

 巨体が砂から浮き上がり、数メートル離れた場所でピクピクと痙攣している。


 埋まっていた部分も見えて初めて分かる姿。

 全長7メートル程度。

 何か太った人体がエクソシストポーズをして、首の代わりに口を付けたようなホラー巨大生物。


「平気かと思いましたが、服が汚れるかも知れなかったので。……出しゃばって、ごめんなさい」

「い、いや。完全に驚いて対処しきれなかった。ありがとう、ランドグリーズ」


 蟻地獄のような地形から抜け出るため、ランドグリーズと手を繋ぎ、上にいるフェリに引っ張ってもらう。

 左右に柔らかい女の子の手。

 これはかなり幸せ度が高い。


 ランドグリーズが、なぜか頬を赤らめているが……砂漠で急に動いたからだろうか。

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