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異世界序列のシムワールド ~玄関開けたら2分で半壊……しょうがないから最下位から成り上がる~  作者: タック@コミカライズ2本連載中
第四章 神槍精製

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62話 俺の妹がこんなに暗躍しているはずが(……ある)

「今夜はハンバーグとオムライスだ!」

「よっ! 師匠! ハンバーグな師匠なのじゃー!」


 我が尾頭家の夕食。

 若干、米国的なバランスになってしまっているので、山盛りのサラダも投入する。

 野菜食え野菜。


 風璃がテーブルの上に食器を並べていく。


「あ、私も手伝いますよ」

「ありがとう、スキールニル」


 今日は風璃がお世話になっているということで、ハーフエルフさんもご招待している。

 普段より賑やかな食事になりそうだ。


「のじゃー、ワシはどこに座ればいいのじゃ?」


 若干一名、招かれざる客もいるようである。


「おめーの席ねーから!」

「のじゃっ!?」


 スリュムは放って置いて調理に戻る。

 下ごしらえは大体済ませているので、後は仕上げをごろうじろだ。


「やはり自分の席は自分で作る物……! 地球でもそれは変わらないのじゃな!」


 フライパンで肉をひっくり返していると、後ろから不穏な声がしたが……聞かなかった事にした。

 いくらなんでも、食べ物がある場所で爆発オチはしないだろう。

 そんな中、フリンは背が足りず……どこかを手伝おうとするも、たらい回しにされている状況にあった。


 つまみ食いをしようとしている、食いしん坊狼と一緒に遊ぶという任務を任せておいた。


「映司さんは口では色々言っても、やっぱり優しいですよね」

「ん? ランドグリーズ?」


 今日はいつものアルマジロの姿ではなく、藍綬姿の方になっている。

 俺の側にきて、機嫌が良さそうな飛びきりの笑顔だ。


「スリュムさんの分、食べに来た時はちゃんと用意してあげてる事です」

「あ~……。腹を空かせている相手を見ると、つい……な」

「そうですね、空腹はつらいから──」


 その顔を見ていると、藍綬を重ねてしまい、色々と思い出してしまう。

 そういえば、俺が料理を勉強し始めたのも……。


「あ、コゲ始めてますよ」

「いっけね、これはスリュムの分にしよう!」



* * * * * * * *



「あぁ~……しあわせ……」


 食事後、フェリの目がトロンとしていた。

 こんな顔をされるのなら、毎日味噌汁を作ってやりたくなるものである。


「映司、後でさっきの絵を描いてみたいです!」

「ん? フリン、オムライスにケチャップで描いたアレか?」


 ちょっと茶目っ気を出して、フリンのオムライスにスマイルマークを描いてみたのだ。

 メイドカフェとかで見るような感じの。

 そうしたら、フリンは大はしゃぎ。


 調子に乗って、萌え萌えキュン★ とか振り付けの動作完璧でやってみたら、全員からどん引きの眼で見られたのは気のせいだ。

 敗因は……たぶん声をキュートに裏返らせておくべきだった。


「今度、フリン用にお絵かきセットでも買ってくるか。芸術的な何かが目覚めるかも知れない」

「それならワシは、フリンに工作とかを教えてやってもよいのじゃぞ?」


 スリュムは自信満々に、さっき自作した金属製の椅子とテーブルをチラチラ見ながら、ドヤ顔を晒してくる。

 席が無いから、物理的に席を用意するという脳筋発想。

 ぶぶ漬けとか用意しておいても絶対に無駄だろう、こいつ相手じゃ。


 だが、自分で物を作れるというのは便利かもしれない。

 そろそろ俺も素手だと見栄えが悪いと思ってきたし……こう、戦ってる最中に武器を生み出して戦うみたいな、男子なら誰もが憧れるような──。


「映司お兄ちゃん、そろそろフェリちゃんの鎖の事……」


 俺が中二病的な妄想をしていると、風璃が小声で話しかけてきていた。

 そういえば、なぜかスリュムもいるしタイミング的にはよさそうだ。

 我が妹の一言が無ければ、妄想技のポーズでも考えてしまう寸前だった。


「えーっと、スリュム。ちょっと聞きたい事があるんだ」

「のじゃ? 好きなは誰かという事かの? ついに言わせるのか、それを……ふふ、まぁよかろう」

「いえ、遠慮しておきます」

「の~じゃ~……」


 スリュムは自信満々の表情から、恨めしいようなジト目で見詰めてくる。


「ヴィーザルが言っていた、黒妖精の国とか、イーヴァルディの親子とか──」

「ふむ、ヴィーザルの事も話したいので、ちと長くなるぞ?」


 ──珍しくスリュムの真剣な表情。

 語り出す、霧の巨人の王の記憶。

 遠い昔、まだ神や巨人が種族単位で敵対していた時代。


 初代オーディンの息子として、巨人族を蹂躙していた神──ヴィーザル。

 戦う意思を持った者が死に行くのは構わないが、無抵抗や降伏の意思を見せた者もお構いなしの虐殺。

 それが巨人族から見たヴィーザルの印象。


 そのため、あの時に先手必勝で戦闘しようとしたのだ。

 だが、戦う意思が無いと分かったために退いた。


「なるほどな。だから、いきなり殴りかかったのか」

「あやつら3人が本気を出せば、相性的に両者とも悲惨な事になっていたはずなのじゃ」

「神殺しと巨人殺し……か」

「次に鎖……これはフェリに直接聞くが良い。いくらワシでもそこまでプライベートな事を話そうとは思わないのじゃ」


 一瞬、フェリの方をチラッと見た。

 その顔は伏せられていて、表情は分からない。


「じゃあ、俺達が作成中の鎖を壊しに行く場所……ええと、なんていったっけ」

「スヴァルト・アールヴヘイム。ここの説明なら任せるのじゃ」


 異世界序列第五位、黒妖精の国──スヴァルト・アールヴヘイム。

 妖精の国アールヴヘイムと光と影のように対になっている世界。

 エルフから忌み嫌われ、ダークエルフやドヴェルグ等がそこに追いやられたという過去があるらしい。


 そこの聖剣の故里という町は、腕の良い職人のドヴェルグが集まるとされている。

 その名の通り、いくつもの聖剣や神器などを鍛え上げた伝説の地。

 中でも、イーヴァルディというドヴェルグの女性は、初代オーディンが持つグングニルを精製したという。


「ええと、今回はその親子が作っている鎖が目的という事か」

「そう! じゃが、あの星は気難しいからの……降り立つ許可が下りるかどうか」


 星が気難しい? 管理者の神とかが交渉しにくい相手なのだろうか?


「話せば分かる相手なら、俺が何とか──」

「うーむ、相手は星の意思。こちらから話すこと自体、神や巨人では難しいかもしれんの」

「星の意思? 管理者は神とかそこらじゃないのか?」


 何かまたスケールが大きくなってきた気がする。


「黒妖精の国は、その星自体が意思を持って管理しているのじゃ。なので──」


 空中に現れるウインドウ。

 そこに、黒妖精の国へは転移不可といった内容が書かれていた。


「基本的に部外者の転移は拒否られるの」

「無理って事か……」


 俺ならどうにかなるかもしれないと思って、同じように試したが、転移陣を黒妖精の国へは貼れなかった。

 分かってはいたが、ユグドラシルから拒否されるというのは割ときついものがある。


「これは……困ったな」


 流れる沈黙。

 頼みの綱としていたユグドラシルがダメな場合、かなりの手段が限られてくる。


「はい! そこで映司お兄ちゃん、こんな事もあろうかと!」


 話を聞いていた風璃が突然、自慢げな表情で挙手する。

 そして、横に居たスキールニルをガッシと掴んで、前に押し出す。


「あ、あの……」


 いきなりの事でビックリしているのか、スキールニルは辿々(たどたど)しく伝えてくる。


「私なら何とか出来るかもしれません……」

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