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異世界序列のシムワールド ~玄関開けたら2分で半壊……しょうがないから最下位から成り上がる~  作者: タック@コミカライズ2本連載中
第二章 星砕き 魂いつわる 力得て(序列二位との激突)

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41話 慟哭(幼き女神は死者の笑顔を顧みる)

「ケッ、スリュム様と戦った事がある奴だからと期待していたら、あっさりとくたばっちまったぜ」

「おいおい、黒髪のお前、新米か? 何もここまでやらなくてもいいだろう。コゲ臭ぇし、消し炭になっちまったよ……」

「ああ? ゾンビみたいに蘇ったらどうするんだよ」


 俺を含めた兵士達の会話。

 この手で燃やしてやった、転がっているアレをサカナに、じゃれ合っているようなものだ。


「そういえば、スリュム様はまだゾンビ状態になったままなのか?」

「何か、可愛いからそのままなのじゃ、とか言ってたぞあの人」

「今なら、回復魔法かけたら死んじまうんじゃねーの?」

「どんだけ大量のエーテルで、密着した状態で油断させなきゃなんねーんだよ。いくら馬鹿でも、あの御方を戦闘中に油断させるなんて無理無理」


 響く下品な笑い声。

 俺もそれに合わせておく。

 一方、泣き叫ぶ悲痛な声も聞こえてきている。


「それにしても、そこの黒髪の。新入りの癖にトドメを刺すとはやるじゃねーか」

「まーな。武器に頼ってるだけのちょろい雑魚だったぜ」


 俺は笑った。

 二つの意味で。


「なぁ、持って帰りたいものがあるんだけど平気?」

「ん? ああ、戦利品漁りか。良いんじゃね? そいつの死体近くに色々落ちてるしな」

「そっか」


 俺は(・・)俺の残骸(・・・・)に歩み寄り──。

 その近くで泣き崩れている幼女様の手を掴んだ。

 そして、視線を上げて驚いたその顔に、にっこりと笑顔を向けた。


「え、えいっ──むぐ!」


 まるで生き返った死人を見たような顔で、俺の名前を呼ぼうとしたフリンの口を塞ぎ、そのまま戦勝ムードでざわめく館から猫の付近まで移動する。

 一番、心配だったのはここだ。

 フリンを連れての移動。


 これだけは俺の能力では隠しきれない。

 フリンを連れてきたメイド──確か最初にスリュムに付き添っていたな。

 彼女も、俺が何かの命令を受けてかと思ったのか、そのまま笑顔で見逃してくれた。


 それに対して、『ご苦労様』というていでボディタッチをしておくのも忘れなかった。

 まぁ、あの執事っぽい警備隊長を偽って命令して、うまく誘導したのも俺だけどな。

 フェリ達が派手に陽動をしてくれたので、潜入、工作が楽だったのもある。


「騒がしいのじゃ。部屋に籠もってろと言われても、いくら何でも出たくなるのじゃ──のう、尾頭映司よ?」

「一発でバレちまったか。俺の能力──完全擬態オーディンズミミックが」


 奥から現れたスリュム。

 こちらにも工作を施していたが、さすがに出会わずに終了とはいかなかったか。


「完全擬態? 阿呆めが、アレは初代オーディンとロキくらいにしか出来ん。エーテルすら一致させ、相手の力すら擬態で得るという最上級の能力なのじゃ。お主のはエーテルでバレバレ、ただの変装──それと大方ガラクタを自分と思わせただけじゃろう」


 異世界アダイベルグで使われていた機械兵のヘッドパーツを改造し、外見をうまくマントで隠して遠隔操作していたのだ。

 ちなみに、ベルグには何かしらバレそうなので話していない。

 お陰で、猫から顔を出したベルグは涙と鼻水で酷い事になっている。


「ククク……じゃが、上手く潜入したもんじゃの。その才能は褒めてやるのじゃ」

「霧の巨人の王にお褒め頂き光栄ですよ、っと!」


 フリンを持ち上げ、猫上部ハッチのベルグに渡して安全を確保する。


「さてと。残念ながら、お前の望みである『巫女の予言』は持ってきていない。特殊な方法で封印されてしまったから、それは後で持ち主にでも聞くといい」

「ふむ、そういう事かの。たぶん、そういう事だったのじゃな」


 珍しく思案げなスリュムの表情。

 だが、それもすぐ、いつもの自信満々な笑みに戻る。


「良かろう! 理由はどうあれ、欲しいモノがあるのなら勝て! 勝ち取れ! 奪い取れ! それが世界の単純なルール! さぁ、受けるか尾頭映司よ!」

「ああ、今の俺は負ける気がしない!」

「ふははっ! わっぱが抜かすのじゃ!」


 俺達2人は天を仰ぐ。


「映司……無事帰ってきてね。映司がいなくなるのは凄く辛かったです……」

「フリンが選んでくれた俺だ。負けねーよ」


 俺はフリンに背を向け、振り返らずに誓った。

 そして、俺とスリュムは──。


「ユグドラシル! 疑似空間を展開しろ!」


 戦いの場へとおもむいた。

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