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異世界序列のシムワールド ~玄関開けたら2分で半壊……しょうがないから最下位から成り上がる~  作者: タック@コミカライズ2本連載中
第二章 星砕き 魂いつわる 力得て(序列二位との激突)

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33話 フリンの加護(仮物)

 俺、フリン、現地の冒険者2人は森の中を進む。

 見た所、この冒険者2人は普通の人間が背伸びしたくらいの戦力だろう。

 一般人と比べれば強いが、ドラゴンと戦うには絶対無理な程度。


 たぶん、今からやり合うであろう巨人モドキ相手では、怪我をさせないように注意する必要すらあるだろう。

 フリンの戦力は──あれ、そういえば……フリンの神としての能力は、初対面の時にやらかしたアレから見ていない気がする。


「なぁ、フリン」

「なんです?」


 俺は、さすがに今回は危険が及ぶかも知れないので、一応は詳細な事を聞いておくことにした。

 ただの杞憂に終われば良いが。


「その、なんだ……。フリン、戦う事は可能なのか?」

「ふっふっふ! 無理です!」


 自慢げに答えられてしまった。

 この幼女、俺の腰辺りまでしか背が無いのに、何故かいつも偉そうである。

 さすが神の血統と言った所か。


「なぜなら、私の力は全て映司の加護にまわされているからです!」

「……そんな予感はしていた」


 そう、無意識には分かっていたのだ。

 最初のフリンと、その後のフリンで何が違うかとか、そういう事を考えれば推測としてはすぐ浮かぶ。

 たぶん、俺に与えられたフリンの加護のストッパーを外してしまったため、力全てを譲渡されてしまったのだろう。


 俺のせいでもあるので、さすがに少し心苦しくある。


「映司、気にする事は無いです」


 どうやら、幼女にすら気遣われてしまうくらいに、顔に出ていたらしい。


「それは私の意思です。私が選んだ、ただ1人の……私だけの勇者ですから」

「フリン……」


 最初の頃のフリンと比べて、明らかに成長した言葉を聞いてジ~ンとしてしまった。

 

「だから、これからも──」

「ああ!」


 俺は、横を歩くフリンの手をギュッと握りしめた。

 小さく、暖かい神様の手。


「な、なんか俺達完全に無視されてませんか……」

「くくく……隠密性とは、時として最強の武器になる」

「さすがっす! ランク10熟練冒険者さんさすがっす!」


 いや、ちゃんと聞こえてるし、見えてるし……。

 むしろ、2人は無駄に鉄製の装備を付けているため、ガッチャガッチャと金属音がうるさい。

 そうこうしている内に、森を抜け目的の丘陵地帯に出た。


 緑の芝生が地平線の彼方まで見え、まだ人工物が少ない地方独特の美しさだ。

 ……全力疾走してくる巨人達を除けば。

 高さは超高層マンションや、通天閣くらい。


 もっとわかりやすく言うと、某ロボットが大戦するゲームのLLサイズ程度。

 全長100メートル辺りだろう。


「ひぃぃぃいい。アレなんですかああ!?」

「お、落ち着け。ランク10の俺にかかれば逃げられるからああ!」


 大パニックな冒険者達である。

 ランク10と言っているが、何のランクが10なのかすら怪しくなってきた。

 あまり詳しくないが、冒険者ランク1000とかまであって、その10とかなのだろうか。


 おっと、今はそんな事をやっている場合ではなかった。


「逃げなくても平気です。映司がやってくれるです」


 のんびりまったり、フリンはいつもの口調で言い切った。

 これは、期待に応えるしかないな。

 小さな女の子の期待を裏切るとか、死んでも出来ないし。


 距離感が狂いそうな大きさの巨人が、遠くから数体走ってくる。

 向こうから攻撃してこないのは射程の長い武器が無いか、小さなこちらを認識していないためだろうか。

 それなら、こちらから出る。


 両手を前に突きだし、手の平を大きく開く。

 先端に意識を集中──金色の光をイメージしながら、空間の歪みが発生する程度の魔力を送り込む。

 明るすぎる不規則な光量と共に、パリパリと何かが細かく弾ける音が聞こえてきたので、充電完了という所だろうか。


 走ってくる巨人──複数にターゲット。


「巨人を粉砕しろ! スーパーサンダー!」

「……またすごい微妙なネーミングセンスです」


 酷い事を言われたが、きっと気のせいだろう。

 寝ずに考えたのだから……。


「な、なんだこれぇ!?」


 冒険者2人は目をひんむいた。

 俺の手から放たれた魔力の雷は、一瞬で遠方の巨人達複数に直撃。

 派手に上半身を爆砕させていた。


 今回は生身相手ではないので、幼女が見ているという配慮も無しに撃ったため、ちょっとした巨大建造物の爆破解体みたいになっている。

 残った下半身だけが、轟音と共に跪いた。

 ──やはり、このフリンから与えられている加護の力は凄まじい。

 

 これでどうにかならない相手なんて相性最悪のフェリくらいだろうし、この程度の相手なら数千体が同時に襲ってきても平気な自信すらある。

 おっと、冒険者2人を連れてきた理由を忘れていた。


「冒険者のお二人さん」


 俺は、営業スマイルのようなものを浮かべ、2人に視線を向けた。


「あまり見栄ばかり張っていると、空の上の神様が本当に叶えちゃうから、分相応な冒険を求めないと危ないよ」

「ひゃ、ひゃいいいい」

「これからは、地道にゴブリンを駆除します……」


 年上相手なのに、ちょっと偉そうだっただろうか。

 まぁ、これも彼らのためだ。

 格上相手に戦いを挑むのは無謀以外の何者でもない。


 ──それこそ、本当に命を捨てる覚悟が無ければならない。


「あれ、そういえば……ゾンビはこっちには居なかったか」


 若干、嫌な予感がしたが、向こうにはフェリもいるので平気だろう。

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