130話 巫女の予言(その8)
『それでも、キミは運命に抗うのかい? 逃げようと思えば、キミの力なら逃げ続ける事が出来る』
確かに俺の能力──完全擬態でも使えば、それは楽かも知れない。
『様々なキミを見てきた。それに借りもある。ボクは、キミが全てから逃げても責めない。もし、そうしたいのなら、このまま地下室から出て行ってくれて構わない』
でも──。
「オウズよ、どうするのじゃ?」
「決まってるだろう」
好きな女の子のためなら、逃げずに本気になる。
『……まぁ、キミならたぶん、女の子のためなら本気を出すとか言うんだろうね。その馬鹿みたいにストレートな所は羨ましいよ』
「シィも、好きならリバーサイド=リングの奴に伝えれば良いのに。この録画から時間経つっぽい現在でも、そんな雰囲気無いのがなぁ……」
「……お主もキチンとした告白はしてないがの」
うぐっ!。
グングニルからのボソッとしたツッコミが痛い。
『ああ、ちなみに巫女の予言は連鎖的に封印……封印なのかな……。それによって四度目の巫女の予言を知っているのはたぶんボクだけ。まぁ、そこの箱の中にいるから触らないように。キミがそれをやると犯罪になるから』
「巫女の予言が、箱の中にいる……?」
シィが指差した場所には、一つの棺桶のような物があった。
巫女の予言のイメージは魔導書とか、クリスタル的なオーパーツみたいな感じだが、あの中にみっちりと詰まっているのだろうか。
ずぼらっぽいシィの事だから丁度良いケースが無かったのかも知れない。
……本当は死体が入っているような雰囲気だが、正直怖いので気にしない事にしよう。うん。
『さてと。色々と回りくどかったけど、もう一つのエーデルランドの状態や、キミがすべきことを伝えようか』
ガクブルする俺を放置して、シィは語気を強めた。
『クソッタレな黒い運命を一方的に押しつけてきた、諸悪の根源に風穴開ける方法を!』
やっと反撃の時が訪れるらしい。
『……その前に、たぶんボクの事を盗撮したモノは消去するように。しない場合は今、一緒にいるカザリに報告する事になる。直接覗いたのは伝えておくけど』
なぜ、ここだけシィの予測がキッチリ当たっているのだろうか。
恐るべし巫女の予げ──。
『ちなみに巫女の予言を使わなくても、だんしこーこーせーという生態は簡単に予測できるから』
これからは清く正しく生きよう。




