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異世界序列のシムワールド ~玄関開けたら2分で半壊……しょうがないから最下位から成り上がる~  作者: タック@コミカライズ2本連載中
第四章 神槍精製

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幕間 キャラかぶりグングニル

 俺──尾頭映司は、我が家に帰ってきた。

 ちょっと散らかっていたが、アレはスリュムに不眠不休で片付けさせるので問題は無いだろう。


 比較的無事なリビングで一息吐きながら、お互いの情報交換をした。


「──というわけで、これがグングニル」


 俺は手に持っている、白銀の神槍を見せた。


「おぉ、懐かしいのじゃ。……いや、これは今まで見たグングニルの中でも特異な……神器というよりは、まるであの存在そのまま──」

『まだ主も、儂の真の力を発揮出来ぬだろうな。さて、この身体ではお初にお目に掛かるのじゃ、霧の巨人の王』


 久しぶりに喋った気がするグングニル。


「槍が喋ったー!」


 フリンは驚きつつも、その目をキラキラとさせていた。


「喋ったよ! ねぇ、フェリ! ねぇ、スリュム! ねぇ、映司!」


 すごいテンションだ。

 フェリは冷凍庫から持ってきた棒アイスで、久しぶりの地球の味を堪能しながら無言でコクコク頷いていた。


「神器クラスの武具ともなれば、意思を持つものも多いからの」

『そうじゃの。普段は必要な時以外は喋らない(きゃつ)らも多いがの』


 続いて喋るスリュムとグングニル。

 そこでふと思った。


「お前ら2人、口調かぶりすぎじゃね?」

「のじゃ!?」

『のじゃ!?』


 スリュムは少女の声で、グングニルは老人の声。

 そこらへんの違いはあるが、のじゃのじゃうるさい。


『神器の中でも、偉大な一振りとしての威厳を保つためのこの口調なのじゃ……』

「そう、偉大な口調なのじゃのじゃ」


 のじゃがゲシュタルト崩壊するのじゃ。


「でも、2人同時だとかぶってるというか、後から来たグングニルがパチモン口調っぽいというか……」

『今、パチモンと言いおったか!? のじゃ!?』

「そこ、咄嗟に無理やり“のじゃ”を付けただろ」

『儂の個性が……』


 槍がのじゃのじゃ言って、勝手に落ち込む図はシュールである。


『で、ではこれはどうなのじゃ!』


 槍はピカリと光り輝き、その姿を変化させた。

 おぉっ、と女性陣が歓声を上げる。


『ふふふ……。可愛らしい小動物──ムササビに変化するなど、個性的であろう?』


 リスに似た、手足の間にマントのような膜を張って空を飛ぶ小動物。

 モモンガと見分けが付かないナンバーワンの、ムササビである。

 グングニルの投擲槍という特徴から、空を飛んでいく動物を選んだのだろうか。


「映司! これ、飼っていいです!?」


 愛らしいつぶらな黒い瞳にやられたのか、フリンはすっかりメロメロだ。


「うーん、でもランドグリーズがアルマジロになった姿である、ランちゃんがいるからなぁ……」

『……もしかして、小動物マスコットキャラもかぶっておるのじゃ?』


 可愛く首をかしげるムササビ。


「あー、うん。既にアルマジロが家に」

『のじゃ……』


 そのまま地面に突っ伏してしまう。

 感情豊かに動くその姿は、まるで海外動物アニメのようだ。


『知名度ではエクスカリバー程度に負け──』

「エクスカリバーさんを程度とか言うな、程度とか」

『地球では何故かオーディンは斬鉄剣とかいう謎武器を使う事になっているし──』

「あ、即死攻撃が失敗するやつです!」

『もう儂はどうすればいいのじゃー!?』


 あげくに泣き出してしまったムササビグングニル。

 神槍とか神器としての威厳の欠片も無い。


「なぁ、スリュム。なんでコイツ、作ったばかりなのに地球の事に詳しいんだ」

「ああ、それはの。ユグドラシルの一部を使っておるから、そこに蓄積された知識の一端を持っているのじゃ。特に兄弟とも言える3本あるグングニルとは知識も意思も共有しているのかもしれんの」


 ムササビグングニルは床を小さな手で叩きながら、大げさに泣き喚き続けている。

 ──その時、フリンの首元に飾られているブリシンガメンが光った。


 そして一言。


『うるさい黙れ』


 流れるように事務的な発音だが、ドスの利いた成人女性の声。


 言葉を向けられたムササビグングニルはビクッと反応。


『……は、はい!』


 ピンとした姿勢で、のじゃ言葉すら忘れて顔面蒼白。

 どうやら神器同士にも上下関係があるらしい。

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