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異世界序列のシムワールド ~玄関開けたら2分で半壊……しょうがないから最下位から成り上がる~  作者: タック@コミカライズ2本連載中
第四章 神槍精製

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幕間 忘れ去られた傾国幼女

時間軸は映司が黒妖精の国へ出発した直後です。

基本的に幕間はコメディ時空。

 私──フリンは、大草原の上に立っていた。

 どこかは知らないが、風が吹くとサァッと草なびくような感じのナイスな場所だ。

 だが、どこかぼんやりしているような風景。


 ──いや、これ知ってる! 夢だ! ドリームだ!

 導入部が夢なら、主役フラグが立つってアニメの魔法少女も言っていた!

 ここは夢っぽく、自然な振る舞いのまま進めよう。


 ハイテンションなスキップ。

 ニヨニヨしながらしばらく飛び跳ねていると、そこに見知った後ろ姿があった。


「あ、映司! 少し前に出掛けたと思ったら、もう戻ってきたですか!」

「……ごめん、どちら様でしたっけ? 風璃の知り合いかな?」


 振り返った映司は、きょとんとした顔でそんな事を言い放った。

 人違い……ではない。

 ゆで卵が好きな方の、ヤケに野球に詳しい中年タレントの英二でも無い。


 正真正銘、胸の大きな人と話すとき、眼が泳ぐ方の映司だ。


「え、えーっと、映司……いくら夢とはいえ、私の事が分からないですか!?」

「うっ、国を傾かせるプロ幼女……。確か4ヶ月前くらいにメインヒロインだった気も──」


 刻の流れは残酷だった。


* * * * * * * *


 「──ンちゃん? フリンちゃーん?」


 重いまぶたを開けると、風璃の姿が見えた。

 ぼやける意識の中、口元に付いているよだれをぬぐう。


「おっはよ~、ゲームやりっ放しで寝ないようにね~。そんな事してると映司お兄ちゃんみたいに、ろくでもない人間になっちゃうよ」

「ふぁ、ふぁい」


 ダークな魂を感じる三作目のゲーム……をプレイしてる最中に寝落ちてしまったらしい。

 そして、さっきの夢を見──はっ!?

 夢の中、確か言われていた……。


「うわっ……私の存在感、薄すぎです……?」


 自然と身体が反応し、口元に両手を当ててショックを現してしまう。

 どこかで見た事あるようなセリフとポーズだが、気のせいだろう。


 ここは尾頭家のリビング。

 テレビにゲーム機を繋いで、そこが私の城だ。

 日々、ニチアサスーパー子供タイムを楽しみに生き、ゲームを攻略し、女神らしく──。


「あれ……もしかして、これって、いや、まさかそんなはずはないです……」


『怠惰に毎日を過ごしているだけ』

 天使の輪っかを付けたミニ自分が諭す。


『でも~人間達の気持ちを知るのも大切だよね~』

 悪魔の羽根を付けたミニ自分が楽しげに言う。

 楽しげに天使の自分をフルボッコしながら言う。


「よし! ゲームをしよう! ……の前にトイレです」


 今はまだ夜ではないので、一人でトイレも余裕である。

 まさに女神の余裕である。

 ちょっとだけ、物陰に干からびた亡者でも隠れていて、華麗にサイドステップをしてきたら恐いなとビクビクしながらも、ミッションは余裕でこなす。


 出来る女神は違う。

 恐怖で漏らしそうだった小さい方を軽やかに済ませて、キチンと手を洗う。

 思わず洗面所の鏡に向かって、やり遂げたドヤ顔をしてしまう。


 そこに映る金色のツインテールに、大きな瞳。

 幼いために背は小さいが、何かフェリも『血筋的に成長する』とか言ってくれていたし平気だろう。

 そしてお気に入りのいつもの白いワンピース──いや、待つんだ私。


 これはニチアサ的に、どこにでもいる標準的な幼女という奴ではないのだろうか。


「お、きちんと手を洗って偉い偉い」


 風璃が洗面所を覗き込んでくる。

 それに向かって、私は思わず問い掛ける。

 ええと、何て言ったっけ。


 あの、自分の事を現す言葉みたいな……アイ……アイデン……。


「風璃! 私にはアイアンメイデンが足りないような気がします!」

「フリンちゃん、それ拷問器具ね」

「……私には拷問器具が足りなかったですか」


 若干、風璃は悩みながら答えを導き出す。


「あたしの推理によると──アイデンティティーが足りないと言いたかった気がする。鏡を見ていたし」

「そんなティティーっぽいのは知らないです!」

「えーっと、自分らしさのワンポイントが欲しいみたいな意味の」

「それです!」

「合ってた」


 きっと言葉の妙というやつだろう。

 そこでふと気が付いた。

 風璃が手に何か持っている。


「ん? あ、そうだ、これフリンちゃん宛ての宅急便」

「ドラマタクエスト11ですか! 予約してたけど発売が早まったですか! いつもいつもいつもいつも発売延期するらしいのに!」

「ええと、送り主は確か──」


 私は、風璃からゲームソフトが入りそうなミニサイズのダンボール箱を受け取り、包装をバリバリと破いて中身を確認する。


「フレイヤって人からみたい。どこの国の人だろう」

「……それ神の国の人で」


 入っていたのは、一通の手紙と──黄金の首飾り。


「──私のお婆ちゃんです」

「神様もダンボール使うんだね。中には何が入ってたの?」

「えへへ、神器です!」


 アイデンティティーを手に入れた!

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