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異世界序列のシムワールド ~玄関開けたら2分で半壊……しょうがないから最下位から成り上がる~  作者: タック@コミカライズ2本連載中
第四章 神槍精製

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102話 必中せし魂響の神槍(グングニル)

 地面に転がっている蒼霊銀装甲竜を放置しつつ、俺は次の一手を打とうとしていた。

 黒き炎剣を使うか? いや、あれは極小範囲に制限できても、炎の巨人スルトの加護を一時的に借りて使う魔法。

 ガルムの身体に当てると、加護が消失して無効化されてしまう。

 そうすると、やはり不安はあるが槍を使うしか選択肢が無い。


 俺は方針を定め、実行しようとした。

 だが──。


「尾頭映司、一つ良い事を教えてやるぜ……」


 俺の友達(モンスター)で肉布団のようになっている塊の中心から、ガルムの声が聞こえてくる。


「オレはなぁ……逆境なら逆境になる程、燃えるんだぜぇ……」


 嫌な予感がした。

 確か、スリュムも同じ戦闘狂で、このパターンで驚異的な防御力を発揮していた。


「増やせぇ……」


 さらにエーテルが高まっている、もしかしてガルムも──。


「増やせ、増やせ──増やせ増やせ増やせ増ヤせ増やセ増やセェぇェエエエエエ!! オレを増やせぇ! 不死英雄の荼毘(だび)、相伴いし──金色の玖夜捌雫(ドラウプニル)!!」


 金色の光が肉布団から漏れ、広がり、爆発した。

 溢れ出るガルムの群れ。

 数百程のガルムだろうか、正直同じ顔で気持ち悪い。


 これが可愛い女の子だったら、心底嬉しいのだろう……。

 フェリと同じ様な獣耳と尻尾で、顔も整っているのに、男だ、野郎だ、雄だ。

 全く嬉しくない。


「ガルム。お前の神器は9日に1回、8体に分裂できる能力とか言ってたよな?」

「ああ! だが、オレは数字を気にしない番犬だ! ヘル様にも都合が良いと言われ、残業の日数とかも気にしないようになった!」

「ある意味、労働的には最強だなお前……」


 ガルムは器用に、空中に打ち上がった友達軍団を優しく受け止め、1人1匹で遠くへ運んでいく。

 邪魔者を命を奪わず排除するためだろう。

 例外としてはフルメタルドラゴンだけ、雑に尻尾を持ってビタンビタンと引きずられて行ってしまった。


 残ったのは俺1人と、ガルム数百人。


「神器って、無茶苦茶すぎだと思うんだけどな……。はぁ、俺の神器もそろそろ起きろ」


 右手で持っていた白銀の槍をコツンと叩いた。


『ふぁ~あ……、何なのじゃ……』


 槍から響く、老人のアクビ。

 のんきなもん──。


「ぐぉッ!?」


 いつの間にか飛来してきたガルムのジャンプキック。

 俺の腹に深くめり込み、吹き飛ばす。


「が、ガルム……お前空気読めよ」

「あ、悪い。まだお前の神器は起きていなかったのか」

「どうやら爺さんらしく、スロースターターみたいなんでな……」


 俺は腹への鈍痛に耐えながら、精一杯強がる。

 ガルムの強いエーテルによって、俺のエーテルを相殺しているために普通にダメージが通っている。

 地味に見えるが、星を壊す派手なだけの魔法とは比べものにならない威力だ。


 これを数百人相手とか正直、馬鹿馬鹿しい。


『オウズよ、なぜ戦乙女を随行させておらぬのじゃ?』

「あ~、そういえば、そうだな」


 今、この喋る槍に指摘されるまで、すっかりと忘れていた。

 別に存在感が薄いとか、普段からランドグリーズを気にしていないとかではない。

 戦闘でランドグリーズを使うという発想が薄かったのだ。


戦乙女使役(ヴァルキリースレイヴ)──盾の破壊者(ランドグリーズ)召喚!」


 淡い光と共に、いつもよりちょっと背の高い、中学生くらいの成長済みランドグリーズが現れた。

 格好は、頭に羽根飾り、スレンダーな肢体に蒼と白銀の鎧、右手にメイス、左手に大盾という凛々しい戦乙女。


「……映司さん。呼ぶの遅くないですか? 忘れていませんでしたか?」

「いや、ちゃんと覚えていた。覚えていたとも。その鎧に隠れているけど、胸はちゃんと成長しているとか──」

「胸……。良いでしょう。このメイスで、消えないくらい頭に刻みつけましょう」


 悪鬼羅刹の如く眼を光らせ、ランドグリーズが鈍器を振りかぶる。

 何となく、俺の頭が大変な事になりそうな気がしたので、全力で謝ることにした。


「ッサーセンッシタ! ランドグリーズさん! 帰ったら精一杯、プリンを生贄に捧げさせて頂きます!」

「よろしい。ところで──すごい状況ですね、これ」


 そういえば、呼び出されたランドグリーズからしたら、俺はいつの間にか神器を作っていて、ガルムが数百人に増えている状態だ。


「えーっと、とにかくランドグリーズの力を貸して欲しい」


 ランドグリーズの、という所で耳をぴくりと動かし、その表情を緩ませている戦乙女。


「え、ええ~? ど、どうしようかなぁ?」


 ニヨニヨしながら、その表情は抑えつつも抑えられない歓喜に溢れていた。

 視線がチラチラとこちらへ向かってきている。


「お前が! 必要なんだ!」


 ちょっとだけ悪ふざけで、大げさに言い放ってみた。

 見つめ合う瞳と瞳。


「しょ、しょうがないですね! もう、これだから映司さんは! そんなのだから一緒にいる風璃とか、私が苦労しちゃうんですよ!」


 既に隠そうともせず、キラキラした女の子の表情に戻っていた。

 俺は、それを見て若干、心苦しく思う所があった。

 ランドグリーズに『転移で済ませれば?』と言われた後なのに、また忘れて地下都市に大穴を開けてしまったからだ。


「本当にしょうがない映司さんですね! んもうっ!」

「は、はは……これからもずっと付いてきてくれよ。俺の足りない穴を埋めるように」

「な、なんですかそれ! ま、まだ心の準備が!?」

「いや、たぶん後で分かるから気にしないでくれ、うん」

「うん~?」


 可愛く首をかしげ、にへらとしながらも、俺の鎧へと変化してくれた。

 また全身金色鎧に突っ込みたくなるが、あとの怒りを倍増させないために黙っておこう。


「そろそろいいか、尾頭映司?」


 臨戦態勢のまま、待ってくれていたガルム達。

 数百人が同じ表情のまま、マテをしているのは壮観である。


「今度はちゃんと空気を読んでくれて感謝だ、ガルム」

「ああ、オレは数字は読む気はないが、空気なら読めなくも無い!」

「いや、数字も読めるなら読めよ」


 俺は思わず突っ込んでしまった。

 少しだけ和やかに笑った後、訪れる一瞬の沈黙。

 俺とガルムの間には、天井に空いた穴かられる光。


 お互いの視界に幻想的なフィルター通していた。

 そして合図のように、上空からカツンと小石が落下。


「さてと、それじゃあ!」

「やるか!」


 そこだけは息ピッタリだった。

 完全擬態していた時に、フィーリングでも合ってしまったのだろうか。

 真っ正面からいざ、普通に戦えるとなると嬉しくなってしまう。


 俺も、ガルムの事はとやかく言えないという事か。


「オラァッ!」


 先手はガルム。

 左、中央、右から3人が迫ってくる。

 それが同時に爪を繰り出す。


 俺は神槍を構え、相手の動きを追う。


「よっと!」


 俺は神槍の切っ先で中央と右のを捌きつつ、間に合わない左攻撃から身をよじって躱そうとする。

 だが、その動きは単一的では無く、左だけフェイントを織り交ぜながら、こちらへ攻撃を届かせた。


「まじかっ!?」

「オレは一人一人が別に考えてるんだぜ!」


 腹にえぐり込むように吸い込まれる、ガルムの爪。

 最初の攻撃の威力を思い出して、血の気が引いた。

 だが──。


『大丈夫です。この程度の攻撃なら無視して下さい』


 鎧から響く、ランドグリーズの力強い声。

 ガルムの攻撃を簡単に弾き、相手の体勢すら崩させた。


「分かった! 任せる、ランドグリーズ!」

『任されました。映司さんを守るのが、私の存在意義ですからね』


 好機と見て、体勢を崩したガルムの右手に狙いを()ませる。

 そして、神槍で金腕輪──グレイプニルを打ち砕く。


「くっ!?」


 分裂ガルムの1人が消滅。

 他の2人も一瞬動揺したので、すかさず穂先を振るい、追加で2つのグレイプニルを破壊する。


「やるな、尾頭映司」

「グレイプニルも、お前と同じ耐久力だったらやばかったけどな。一部が脆ければそこが弱点だ」


 ──さてと、これで優勢に……なるわけないよな。

 脆いと言っても素手や、生半可な魔法では破壊できない強度なのがもどかしい。

 今のを100回かそこら繰り返せば何とかなるかもしれないが、それは現実的では無い。


 今度はグレイプニルを壊されないように警戒するだろうし、三体以上の同時攻撃や、波状攻撃などのパターンなどはいくらでも考えられる。

 オマケに、ガルムには隠しているが、まだ神槍はエーテルの適合調整が終わっていない。


 そのせいで、本来は副次的に魔法の杖としても使えるが、今は刻まれたルーンですら全く反応しない。

 


【通常状態移行不可。適合率:80%】


 神槍の枝を通じて、なにかの声が頭の中に響いてくる。

 機械のような異質な意思。

 多重変換魔法を通してやっとだが、意味は何となく分かる。


 もしかしたら、これが機械仕掛けの神(ユグドラシル)というやつで、ミーミルはこんな感じで通訳してくれていたのだろうか。


「それじゃあ、どんどん行くぜぇ!」

「ああ、こい!」


 さっきは長話などで時間を稼いだが、%は上がらずだった。

 3人のガルムを倒した後に77%から80%に変化があったので、ただ時間を稼ぐのは無駄だろう。


「さっきはひとつ、ふたつ、みっつ……だったから、次は──ええい、いっぱいだ!」


 そこは4から順番に来て欲しかった。

 もう、目の前の敵を倒して行くしか無いか!


「行け! 行くぞ! オレ達!」


 雪崩のように押し寄せてくるガルム数十匹。

 これだけでも脅威だが、さらに後ろに三桁の数が控えている。

 しかも、グレイプニルを壊せば消えるとは言え、一匹一匹はガルムそのままの強さだ。


 笑うしか無い。


『映司さん、楽しそうですね?』

「男の子には、ツボに入っちゃうシチュエーションというものがあるのさ」


 やけっぱちでランドグリーズに言い放つ。


『ふふ、私も楽しいですよ。やっと映司さんのお役に立てていますから』

「そうか! それじゃあ、一緒に楽しむか! 俺だけの戦乙女!」

『はい! もう守られるだけの私じゃありません! お守りします!』


 リーチの差を利用して眼前に迫る最初の1人を倒し、左右の2人も同時に消し去る。

 ついでに背後に回り込んでいたガルムも、エーテルで後ろを視て、肩越しに金腕輪を貫く。


【通常状態移行不可。適合率:84%】


 いつの間にか、消えたガルムの後ろから、タイミングを見計らっていたかのように新たなガルムがポジションチェンジしてくる。

 コンビネーションで拳を繰り出して、俺へ的確に当ててくる。

 ランドグリーズを信じ、防御はせずにそのまま2人の金腕輪を砕く。


【通常状態移行不可。適合率:86%】


 消したら消した分だけ、パズルゲームのように、そのスペースに新たなガルムが入り込んでくる。

 次のガルムは、爪は無理だと悟ったのか、拳に全開エーテルを込めて吹き飛ばそうとしてきた。

 俺は必死に相殺しながら踏ん張る。


 反撃で金腕輪を突こうとしたが、空いていた左手で防がれてしまった。

 弱点以外は、未覚醒の槍を受けても無事なようだ。

 たぶん俺の魔法も通じないだろう。


 ガルム達はそれを学習して、さらに押し迫ってくる。


「尾頭映司よぉ! オレはフェンリルの姐さんがずっと好きだったんだぜ!」

「いきなり告白タイムかよ!?」


 だが、ガルム達の手は止まらない。

 1人倒せば、その間に5回攻撃を受けるような状況が続く。


「強く孤独なフェンリルの姐さん。強さ故に独りぼっちで、ずっと心を傷付けられながら、誰にも迷惑をかけないために根無し草の異世界放浪生活……」

「くっ」

「そんな女の子を見て、オレは心底救いたいと思ったよ! 何せ尊敬するヘル様の家族でもある!」


 この嘘の世界──疑似空間にガルムの本当の声が響く。


「並ぶくらい強くなれば! いや、守れるくらい強くなれば! そう思って、オレは拾った神器──ドラウプニルを使えるようになった!」

『ドラウプニル──分裂の際に精神異常を引き起こし、普通の精神では耐えられないという欠陥神器です。本来はバルドルという神が所有者のはずですが……』


 ランドグリーズの同情するような声。

 ……つまり金腕輪の所有者は犬では無く神。


「だけど! あの時にフェンリルの姐さんの心を救ったのはお前だった! 尾頭映司! 無力な子供だったお前が!」

「子供……?」


 たぶんガルムは年齢不詳なので、俺も子供に見えるのだろうか。


「弱いお前が、だ! 今もお前は弱い!」


【通常状態移行不可。適合率:92%】


「本当にフェンリルの姐さんを守ってやれるのは、オレ──ガルムだと証明してやるんだ!」


 さらにガルムの軍団は数を増し、俺に数百匹単位で向かってくる。


「だから、お前を倒す! ──尾頭映司!」


 既にそんな宣言されなくても、話している最中もピンボールのように扱われていた。

 弾き飛ばされては立ち上がり、また弾き飛ばされて意識は朦朧。

 長期による打撃によって、ランドグリーズの鎧もヒビが入り、欠け始めている。


「……大丈夫か、ランドグリーズ?」

『……余裕です。これくらいで……泣き言を言っていたら……風璃に笑われます』

「俺は、この事を話したら風璃に怒られそうだけどな……」


 ガルムを1人倒し──俺は殴られ、蹴られ、飛ばされ、倒れる。

 死なないだけで、俺達は満身創痍だ。


『それに……言いました……よね?』


 さすがに疲労が伝わってくる、ランドグリーズのか細い声。


『守りますよ……。もう風璃と映司さんに守られていた……(こども)では無く……、今度は守れる存在になりたいと星に願った戦乙女──ランドグリーズです!』

「そうか、ありがとう」


 その言葉を聞いて、俺は再び立ち上がった。

 藍綬(ランドグリーズ)に守られている限り、俺は何度でも立ち上がるだろう。


【通常状態移行不可。適合率:98%】


 そして、一歩一歩、前に進んでいく。

 左目の偽装すら解いて、その概念が無くなった死纏う左目をさらけ出す。

 身体とは関係無く、意思だけは崩さないように神槍を構え、ガルムのドラウプニルを貫く。


【通常状態移行不可。適合率:99%】


 その背後、控えていたガルムに槍を遠くに弾き飛ばされ、俺は素手になった。

 もうランドグリーズの鎧はボロボロで、俺も体力とエーテルはギリギリ、そしてドラウプニルを壊せる槍を手放してしまった状態。


 眼前には数百体の無傷のガルム達。

 血のような赤さを持つ髪が、まるで絨毯のようだ。

 見渡す限りの赤い絶望。


 だが、俺は不敵な表情のままだ。


「お、尾頭映司。これでオレ、ガルムの方が強いと分かったな……?」


 傷だらけでも、決してぶれ無い俺の異様さ見て、焦燥感が出てきたガルム。

 

「ああ、ガルム。お前はすげぇ強い。そしてフェリにも優しいし、色々考えてくれている」


 俺は、思わず笑みが漏れてしまう。

 楽しい、心底楽しい。

 今までの完全擬態した猛者達の気持ちでは無く、逆境に立たされた俺自身の本当の気持ちだ。


「じゃあ、どうして武器を失ったのに倒れないんだ? 笑っているんだ? オレに後を任せないんだ!?」

「どうしてかって? そんなの簡単だろう──」


 ガルムの1人が突進しながら、凄まじい力で拳を振るってくる。

 俺は、その攻撃をガードせず仁王立ちで受け、黒き炎剣(レーヴァテイン)を一瞬だけ発動。


 無防御のカウンター。

 唯一スルトの加護が通る、本来は神の所有物──金色の玖夜捌雫(ドラウプニル)をピンポイントで壊した。


【適合率:100%──通常状態可。起動開始】


 槍は特性を発揮し、持ち主である俺の手元へ飛んできた。

 それを希望とばかりに、グッと掴んで受け止める。


「──俺の方がもっと強くなるし、ずっとフェリの事を優しく抱きしめて、これからも護り続けてやるからだ!」


 俺の手の中で神槍が輝きだし、25のルーン文字が浮かび上がる。

 そして、一条の光枝に変化した。


「──絶対勝利、ただ其れだけの為、幾千幾万の楔と成れ。もう一つの主神オルタナティヴオーディンの名において──我放つ──」


 溢れる光を逃さないようにしっかりと握り、両足を地に踏み込み、最強の神槍を天高く掲げ、力を溜めるように弓形(ゆみなり)に振りかぶる。


「──『必中せし魂響の神槍(グングニル)』!」


 投擲。

 光の速度を超えて飛翔、ソレは分裂した。


 数本──。

 数十本──。

 数百本──。

 

 残存するガルムと同じ数になる。


「本当に! 本当にグングニルを使いこなしちまったかぁ!? 尾頭映司ィ!」


 1人につき1本向かっていくグングニルに対し、ガルム達も回避しようとする。

 光速を超える、なり振り構わぬ物理法則を無視した地獄の番犬の挙動。

 数百の常識外れの行動により、数百の衝撃波が聖剣の故里を襲う。


 街は簡単に崩れ、掻き混ぜられ、洪水の日のマンホールのように天井の穴から何もかもが吹き飛んでいく。

 だが、分裂したグングニルはさらに加速。

 そして、超スピード中に直角の軌道など、全てを無視した神器の法則でガルム──金色の玖夜捌雫(ドラウプニル)に向かい絶対命中。


 一瞬にして、嵐巻き起こる聖剣の故里──だった場所のガルム人口は激減。

 訪れる沈黙。

 風が通り過ぎ、今はもう無残な廃墟。


 そこに立っているのは俺と、神器を無くしたガルム本体のみだった。


「ははは……──アッハッハッハ! 自分じゃ分からなかったけど、誰かに使われる神器ってやつを見るとさ、本当にメチャクチャなんだな! 尾頭映司!」

「くくくっ。だろう? お前の神器も頭おかしかったしな!」


 俺達は笑い合った。

 まるで仲直りした旧知の親友のように。


『これにて一件落着ですね』


 ランドグリーズのホッとした声。

 俺は、戻ってきたグングニルをキャッチしながら返答した。


「いや? これからだろう。なぁ、ガルム?」


 俺はランドグリーズの鎧を脱ぎ、グングニルと共に投げ捨てた。


「ああ、やっぱ──やり足りねぇよな……尾頭映司!」

『え、あの……お二人?』


 俺達は凶悪に笑い合った。

 これから殴り合う悪友のように。

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