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異世界序列のシムワールド ~玄関開けたら2分で半壊……しょうがないから最下位から成り上がる~  作者: タック@コミカライズ2本連載中
第四章 神槍精製

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97話 ちょっと宇宙へグングニル作りに行ってくる!(垂直跳び)

 俺は星の中心から、空を目指してロケットのように突き進む。

 土の中、自らの身体を杭のように打ち込んでいるので、頭への振動が床屋のシャンプーのように心地良い。

 見栄を張って美容院と言いたかったが、普通の男子高校生はそんなオシャレな所へは手が届かない。


 あんな、きらびやかっぽい場所どうしろと。

 ──ただ、太陽らしき恒星へは手が届きそうだ。

 プレート、岩石、土、全てをぶち抜きながら、春のツクシのようにニョッキリと大地から顔を出し、そのままの勢いで空へと打ち上がった。


 地表から10㎞、20㎞、30㎞。

 大体、対流圏を突き抜けた。

 そこから成層圏、50㎞、100㎞。


 エーテルで物理法則を書き換え、その中から見る世界は──空気との摩擦で玉虫色に染まっていた。

 綺麗だな~と思っている内に、真っ暗な宇宙へと辿り着いた。


「地球は青かった……けど、スヴァルトアールヴヘイムは砂漠が多くて色合いが地味だな」


 そこからさらに加速して、この異世界の太陽を目指す。

 距離が遠いために速度を出すが、ワープに近い状態なのだろうか。


 速度計(メーター)は無いので、残念ながらざっくりとしたスピードしか分からない。

 たぶんアインシュタインにゴメンナサイしないといけない程度。

 地上でこれをやると、人類絶滅まっしぐらなので、宇宙限定だ。


 ウラシマ効果その他は、今の所……起きていない。

 ユグドラシルが封じている魔法の種類と何か関係がありそうだが、今は置いておこう。


「周りの星々が、流れるような線に見えて面白いなぁ……うわっ!?」


 よそ見操作をしていたため、月の半分サイズの星に衝突してしまった。

 音は聞こえないが、エーテルで観測するとその振動は凄まじく、ケーキに爆弾を仕込んだみたいに四散してしまった。

 その巨大な破片一つ一つが目にも止まらぬピンボールとなって、辺りの星々をショットガンとなって破壊し尽くす。


「はわわ……」

『小さき者よ、黒妖精の国(こちら)には影響は出ないと観測できた。今は鍛冶の事だけを考えろ』


 エーテルによる、星の意思からの通話。

 ぶつかった方向的にセーフなのだろうか……。

 それとも今後、破片を処理して影響が無いという事にするのだろうか。


『ただ、戻ってくる時はこちらへ弾き飛ばさないようにしてくれ。と……私達は思う』

「は、はい……」


 三度目の異世界破壊は避けたい所であった。

 細心の注意を払いながら太陽へ向かう。

 進路上に障害物がある時は細やかに避けたり、破片を残さないように魔法で消滅させる。


 ちょっとしたシューティングゲーム気分だ。

 これで鋼鉄の魚類や、『キガ ツク トワ タシ ハバ イド ニナ ツテ イタ』的な敵機がいないのが残念だ。

 ……いや、あれはいない方がいい、うん。


 そんな異層次元戦闘機の事を考えながら、太陽に到着した。

 感想としてはとてつもなくでかい。

 赤々というより、白飛び混じりの出来の悪いカメラ映像を見ているようだ。


 だが、期待していた部分は──。


「うーん、あんまり熱くないな」


 最高のグングニルを作るには、中心部の1500万度でも足りない。

 太陽に近付き、身体を晒しても全く皮膚を焦がさない。

 感覚的には、布団に入って温々(ぬくぬく)していた方が百倍暖かい。


 火の蛇のように襲いかかる紅炎(プロミネンス)すら、欠伸をして迎えられる。

 これなら胃袋の中に入れても平気なくらいだろう。


「やっぱ自前で炎を作るか」


 太陽を破壊してもやばいので、また場所を変える。

 今度は、遠目に星がチラチラ見える程度の寂しい場所。

 暗黒空間の中で、恒星の光だけが俺という存在を照らす。


「よし、ここで良いか。──来い! ミスリルツール!」


 かざした手に光が集まり、四角い物体が召喚される。

 特製のボックスに収納されている、オリハルコンハンマー等の鍛冶道具。

 後は材料のエーテライトを……。


 転移陣を作り、星の中心に繋げる。

 空気などが漏れないように調整もしてある。

 そこに手を入れて、エーテライトを探し──。


「うわっ!?」


 急に向こう側から手を引っ張られ、上半身だけが転移陣の中に入ってしまった。

 体勢的に逆さまの視点。

 そこに見えるのは、冷めたジト眼をしているランドグリーズ。


「ど、どうした?」

「映司さん、いきなり天井をぶち破って行かないで、最初から転移で向かってください。フルメタルドラゴンさんと、私で穴を修復してる最中です……」


 そういえば、転移許可は下りたのだから──。


「そりゃそうだな!」

「そりゃそうです……」


 ちょっと諦め気味なランドグリーズの表情も可愛いのであった。

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