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異世界序列のシムワールド ~玄関開けたら2分で半壊……しょうがないから最下位から成り上がる~  作者: タック@コミカライズ2本連載中
第四章 神槍精製

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94話 星になったドヴェルグの話(イシ)

 同じ様な要領で、今度はミスリルハンマーを使ってオリハルコンハンマーを作る。

 最高の戈を作るためには、最高の下地からである。


「はぁ……」


 ランドグリーズの半眼による、独りでつまらないですよ~という抗議の視線。

 最初のうちは、鍛冶場にある大きな椅子に座って、楽しげにこちらを見ていたりもした。

 だが、途中からは段々と飽きてきたのか、地面まで届かない脚をブラブラさせながら溜息を吐いている。


 男子的には武器作成は心躍るものだが、女の子には退屈だったのかもしれない……。

 ケンの方は目を輝かせながら、興味津々。

 この男女による温度差……耐えがたい雰囲気である!


「ふむ、そこのおなごは暇なようじゃな。さりとて、主人から戦乙女が離れるわけにもいかんだろう。そこで、だ──」


 助け船を出してきたのは、扉から斜め45度で顔を覗かせているフルメタルドラゴンであった。

 たぶん、地面に顔をすりつけながら、こちらへ話しかけているような気もするが、そっち側の視点では想像しないようにしておこう。

 彼の名誉のためだ。


「昔の話をしてやろう」

「え、それはちょっと……」


 俺は本能的に止めに入った。

 年長者による自分の昔語り程、退屈率が高いものは無い。

 地元ではワルだった~、みたいな話のパターンだろう。


「ふはは、星の意思の昔話を暴露してやろうというのだ。お前らを小さき者呼ばわりした、小さき者の話をな」

「アレの事で面白い話なんてあるんですか?」


 少しだけ興味が沸いた俺は、鍛冶仕事をする手を止めず耳を傾けた。


「ああ、奴がドヴェルグだった頃の話だ──」


 妖精の国、アールヴヘイムにある一人のドヴェルグがいた。

 大変働き者で、鍛冶仕事を生業としていた。

 美しいエルフの妻をめとり、子宝にも恵まれた。


「幸せそうな感じですね」

「そうでもないぞ、昔のアールヴヘイムでの出来事だからな」


 当時、アールヴヘイムでは純血エルフ至上主義。

 ドヴェルグは元から地位が低く、それがエルフを妻に迎えて子供を作るなど──言語道断。

 それでも、そのドヴェルグは真摯に働いて、良い鍛冶仕事をすれば認めてもらえると思っていた。


 毎日、朝から晩まで働いた。

 迫害に耐え、くず鉄しか回して貰えず、魔剣が出来てもエルフの手柄にされる。

 そんな日々。


「名前はスヴァルトアールヴヘイムと似てるのに、随分と違うんですね」

「アールヴヘイムを白、光だとするならば──スヴァルト、それすなわち黒、闇だからな」


 辛くとも、幸せだと思っていた日々。

 その時間は、一瞬にして打ち砕かれた。

 アールヴヘイムの王が、ドヴェルグの妻に恋をしたのだ。


 恋愛は人を狂わせると言うが、王がそれを実践したらどうなるか。

 簡単に人の心を踏みにじり、略奪を成功させてしまう。

 残された男と、その娘。


 何の力も持たない男は、妻の無事を祈り、帰りを待っていた。

 だが、そこに届いたのは訃報。

 王の愛を受け入れぬ妻は、自らの命を絶った。


 ただ待つだけを選択してしまった男は血の涙を流し、怒り狂った。

 その烈火のような憤怒を込めた一振りの炎の魔剣を作りだし、そのまま王の下へ出向き、焼き殺した。


「悲しい、お話ですね……」

「そうだな、戦乙女よ。おとぎ話ならここで終わり。だが、これは創星記──続きがある」


 純血のエルフ、しかも王の立場にあるものが、ドヴェルグに殺された。

 大問題となったが、王としても復讐される道理があった。

 アールヴヘイムの不平不満がこの行動に触発され、純血エルフ種以外の反乱の火種がくすぶり始めた。


 そこで、エルフ達はある判断をした。

 彼らに新たな土地を与えるというものだ。


「それって……」

「そう、純血のエルフ以外が送り込まれた流刑地──スヴァルトアールヴヘイム」


 男は、ドヴェルグ、ダークエルフ、ハーフエルフ等と共に、この地へと送り込まれた。

 当時、邪龍達が支配していた地獄の地。

 異世界序列でも最下位近く。


「娘さんはどうなったんですか?」

「次代の王候補に気に入られていたらしく、スヴァルトアールヴヘイムへは送られなかったらしい。確か今もまだ生きていて、名前は……何と言ったか。まぁいい」


 こんな地、娘と離れ離れで、最愛の妻は死亡している。

 復讐を遂げた男の心は満身創痍、抜け殻だった。

 だが、弱き者達が過酷な地で生き残るため、象徴として祭り上げられた。


 虐げられる種族をまとめ上げた、鍛冶士(イシいじり)のドヴェルグ──王殺しの星。

 ──星の意思と。

 男の元々の素質もあったが、過酷な環境で生き残るためにどんな禁呪でも施された。


 段々と星のように人々の意思を乗せ、死人達の思いすら力に換える呪われし力。

 邪龍の首に手を届かせる所までになった頃には、既に男はいくつもの魂を持つ存在となっていた。

 そして、星に願いをかけた人々の魂と共に邪龍を滅ぼした。


「どうした、ランドグリーズ? 顔色が悪いぞ」

「……いえ、何でもありません。それより──ケンさんもお腹が空いたでしょうし、休憩を兼ねてご飯にしましょう」

「ああ、丁度オリハルコン製の道具を一式作った所だしな」





【オリハルコンツール】

 ハンマー、ハサミ、たがね、グラインダー等の鍛冶道具一式。

 映司以外が使うと、ミスリルよりピーキーな反応のため魔力、エーテルが暴走する。

 召喚魔法が仕込んであるため、どこでも呼び出す事が可能。

 武器としても使えるが、星の意思に怒られる。

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