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主人公じゃない!  作者: ウスバー
第三部 革命
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第四十八話 インフィニット プラス

レクス

「一週間後にまたここに来てください。本物の無限稼ぎを見せてあげますよ」


「……時は、来た」


 ほろ苦い思い出となった〈別れの谷〉の攻略から、一週間が過ぎた。

 俺は今度こそ無限稼ぎを完遂するべく、満を持してラッドたちを召集した。


 今回は長期戦を見据え、HPMPポーションやリジェネポーション、それにアンデッドを一瞬だけひるませる聖灰など、アイテムも大量に用意した。

 さらには今回のために特別に装備品を準備して、意気揚々とダンジョンへ向かう。


「な、なあおっさん! ここって……」


 あえて行き先を告げずに移動を始めたが、ダンジョンの手前でラッドたちも流石に気付いたようだ。


「ああ。〈別れの谷〉だよ」


 その疑問を肯定するようにうなずいて、驚くラッドたちを置いてぐんぐんと前に進む。


 目的地はもちろん、〈哀惜の騎士〉の待つ隠し部屋。

 十字架を回し、階段を下りて、一心不乱に奥へ。


「待ってくれよ! ここの稼ぎって奴は、無理だって前に……え?」


 抗議めいたことを言っていたラッドの口が、騎士の部屋を覗いた瞬間に止まる。


「な、なんだ、こりゃ……!」


 なぜなら、だだっ広い空間にぽつんと騎士が立っていた部屋は、完全に様変わり。

 今や百五十を超える従騎士たちが所せましとうごめく、地獄のアトラクションと化していたのだから。



 ※ ※ ※



「い、一体、何が起こってるんだよ」


 戸惑うラッドに、俺は「ほら」と言ってうごめく従騎士たちの頭上を指さした。


「あれは……レクス?」


 ぼそりと漏らしたプラナの言葉の通り、隠し部屋の天井から、俺の姿をかたどった白い人影がにょっきりとさかさまになって生えている。


「も、もしかして……」


 ハッと何かに気付いた様子のニュークに、俺は手にしたデコイガンを持ち上げてみせた。


「ああ。あれは俺が一週間前に仕掛けた『デコイ』だよ」


 まあ、仕掛けとしては簡単だ。


 騎士は「戦闘状態を一時間」続けることで召喚を行う。

 そして、騎士が戦闘状態になる条件は「部屋の中に攻撃対象がいる」ことだから、デコイでもその条件を満たせる。


 ただ、ゲームではデコイを出しても大した意味はなかった。

 デコイが出せる場所はキャラクターが移動出来る場所に限られていたため、騎士にすぐに倒されて終わりになってしまう。

 だが、この世界では壁や天井にだってデコイを発射出来る。


「騎士たちは、完全な近接特化型で、遠距離攻撃手段がない。つまり……」

「天井に出来たデコイに、攻撃できない?」


 呆然とつぶやくラッドに、俺はうなずいた。

 そこで部屋に目を戻すと、部屋にひしめく従騎士たちは天井のデコイに向かって届かない剣を振っているのが分かる。


「ま、天井が部屋の中に含まれてるかは自信がなかったんだが」


 結果として、天井のデコイも攻撃対象と判定された。


 デコイは誰かの攻撃で破壊されるまで永続的に存在し続けるため、あの騎士は俺たちが帰ったあとも、食事をしている時も、寝ている時も、ずっと戦闘状態を続けて休まずに召喚をし続けることになる。


 従騎士に埋もれて見えないが、あの輪の中心にいるであろう、もはや無限召喚機と化した〈哀惜の騎士〉にご苦労様、と手を合わせる。


「ま、待って下さい! だったら、兄さんが部屋の中に入らずに最初からデコイだけを撃っていたらよかったのでは?」

「デコイガンは敵に見つかってない状況でしか使えないからな。あの騎士が召喚モーションに入って感知能力が下がってる時にしか撃てない」


 レシリアの疑問をそうやって押しのけると、


「そ、そうだったんですか。すみません、兄さんがそこまで考えていたのに……」


 意外に素直な俺の妹は、しゅん、とうつむいてしまった。

 ……まあ、デコイガンが効かなかったらあのまま騎士から逃げ回り続けようと考えていたことは、レシリアには黙っておくことにしよう。


「それより、これからが本番だぞ」


 俺が言うと、いまだにぽかんと部屋の中を眺めていたラッドたちが、一斉に俺を見た。


「今回の目的は、レベル上げだぜ。集めただけで終わり、な訳ないだろ」

「ま、まさか……」


 慄くラッドに、俺はにやりと笑って告げる。



「――あそこにいる騎士、推定百六十体。今日中に全部片づけるぞ!!」



 ※ ※ ※



 それからの戦いは、ラッドたちにとっては過酷なものになった。


 そもそも格上のモンスター百六十体など普通に考えれば勝てる相手ではないが、幸いデコイに気を取られている騎士たちは攻撃を受けなければ攻撃目標を変えることはない。

 だから、無数にいる騎士たちを一体ずつ釣り、引き寄せてから全員でボコる。


 それを、ひたすら百六十回繰り返す。


 慣れないフォーメーションに苦戦したり、戦っている途中に召喚で騎士が増えて戦線が崩れかけたり、いつ終わるとも知れない戦いに気持ちが折れかける場面もあったが、ラッドたちは結局最後まで走り切った。




 そして、ついに最後の従騎士が倒れ、部屋から従騎士が消えた時。

 ラッドたちのレベルは二十八に到達していたのだった。

またステータスまとめなきゃ(作者死亡フラグ)

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― 新着の感想 ―
[一言] 週1、160体増殖! 無限増殖とはいかないが、その1週間を別に活用できるんだし、アリかもな。
[気になる点] これもうステータスは抜かれてそう……
[一言] これ、やってる最中デコイガンでまた増えてたんでは?
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