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主人公じゃない!  作者: ウスバー
第七部 偽りの仮面
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第百七十七話 闘いの日々

バ〇オRe4、ネコミミ攻略が難航してるので息抜きに早めの更新です!

(攻略動画でカンニングしてもクリアタイムの条件が想像以上にきつい……)



そしてRe4未プレイの人にものすごいネタバレをしてしまうとですね

ネコミミは、レオン専用アクセなんですよ……


 以前と大きく変わったのは、普段の生活だけじゃなかった。



「――やぁあああああ!!」



 身体が、軽い!


 僕は自分の身体とは思えないように鋭く動く身体を持て余しながらも、渾身の力で武器を振り抜く。

 それは狙い過たず、目の前の怪物を、包帯にまみれた死体の化け物の身体を切り裂いた。


(力も、強くなってる!)


 この死体の怪物は、見た目からは想像もできないくらいに強力な魔物だ。

 今までの僕だったら、攻撃が当たっても包帯に切れ目を入れることすらやっとだったかもしれない。


 でも……。


(今なら、勝てる!!)


 フェイスレス様が与えてくれた装備の力。

 そして、フェイスレス様がくれた薬のおかげか、いつも以上にキレのある肉体のおかげで、この魔物を圧倒することができている。


「これで、終わりだぁあああ!!」


 苦し紛れに振るわれた腕を回りこむように躱し、背後から首筋に刃を突き立てる。


「ギャアアアアア!!」


 包帯の怪物は、しばらく苦しむようにもがいていたが、


「……たおし、た?」


 やがて、光の粒となって、消えていった。



「――素晴らしい!」



 そこで拍手をしてくれたのは、フェイスレス様。

 隣には、僕たちをいつも見守ってくれている護衛のサファイアさんもいる。


「まさか、これほど早くにグレーターマミーを倒すことが出来るとは。正直想像以上だよ」

「そ、そんな……。全部、フェイスレス様のおかげですよ」


 本心からそう言いながらも、フェイスレス様の惜しみない賞賛の声に、僕は嬉しくなってしまう。

 しかし、フェイスレス様は「いいや」と首を振った。


「私が助力したとしても、皆が皆、ここまでやれる訳ではないよ。君にはどうやら、格上を倒すことで一気に成長できる特別な力があるようだね」

「僕に、そんな力が……」


 今までずっと、自分のことを何も持っていない人間だと思っていた。

 でも、フェイスレス様がここまで褒めてくれたのだから、少しだけ、自信を持ってもいいんだろうか。


 そんな風に考えた時、


「……これは、私もうかうかしていると君に抜かされてしまうかもしれないな」

「え?」


 気のせい、だろうか。

 そう言った一瞬だけ、フェイスレス様がいつもの優し気な雰囲気とはかけ離れた、鋭い視線を送ってきたような……。


(まさか、ね)


 フェイスレス様に限って、そんなことはあるはずがない。

 だってこの人は、僕らに無償で避難場所を提供してくれて、こうして育ててくれている、恩人なんだから。


 なんとなく怖くなってしまった僕は、無意識に別のことを口走っていた。


「それで、あの、ここは何なんですか? どうして、隠れ家の地下に魔物が……」

「墓所だよ」


 間髪をいれずに返ってきた言葉に、僕は一瞬だけ、反応が遅れた。


「墓、という意味だ。埋葬された死体が魔力を帯びて、怪物になってしまったんだろう」


 嘆かわしいことだ、とばかりに首を振るフェイスレス様。

 けれど、なんとなくだけれど、本心から嘆いているようには見えないのは、なぜだろうか。


(……っと、いけないいけない)


 前の鏡の事件。

 ルビーさんが鏡に映らなかった……ように見えた事件から、どうも僕は疑り深くなっているようだった。


「確か、レリックくんは冒険者になりたいんだったね。だとしたら、将来はこういう場所を探索することもあるだろう」

「な、なるほど……」


 そう考えると、


「ははは。目の輝きが、変わったね。やはり、冒険者には憧れが?」

「は、はいっ!」


 大恩のあるフェイスレス様に大好きな冒険者について尋ねられたのが嬉しくて、僕の声はつい大きくなった。


「えっと、冒険者って職業もそうなんですけど、今は一番、〈レクス・トーレン〉様に憧れていて――」


 けれど、



「――レクス・トーレン?」



 続くフェイスレス様の反応は、期待したものとはまるで違った。


「……ぇ?」


 僕が初めて聞く、フェイスレス様の苦々しい声。


「あ、あの……。も、もちろん憧れは憧れで、僕の一番の恩人は、フェイスレス様で……」


 何か間違いをしてしまったのかと僕が真っ青になったところで、すぐにフェイスレス様の雰囲気は戻った。

 彼は少なくとも表面上は落ち着いた所作を取り戻して、僕を安心させるようにうなずいた。


「ああ、大丈夫。大丈夫さ。実を言うと、私も彼については詳しい(・・・)んだ」


 そうしてフェイスレス様は、「ああ、そうだ」とまるで名案を思いついたかのようににんまりと唇を歪めて、こう言った。



「――なら君に、そのレクスという冒険者の得意技を……。彼が野放図に広めている〈マニュアルアーツ〉という技を、教えてあげよう」




 ※ ※ ※



 そうして、幸せな日々はあっという間に過ぎて、



「――〈冥加一心突き〉!」



 例の「作戦」の日が迫る頃には、僕は〈マニュアルアーツ〉を実用できるまでに使いこなし、二ヶ月で信じられないほどに成長した力と合わせて、あの〈グレーターマミー〉ですら一撃で葬り去れるほどの使い手に、成長していた。


「流石だね、レリックくん。もう私に、教えることはない。……文句なしの、合格だよ」

「ありがとうございます!!」


 フェイスレス様に褒めていただけるのは、何よりも嬉しい。

 それはこの人が単なる恩人だからというだけではなく、フェイスレス様本人が優れた戦士なのだと、教えを受ける中で気付いたからだ。


「……しかし、大丈夫かな? どうも、顔色があまりよくないようだが」


 フェイスレス様の言葉に、僕の肩に力が入った。



(――今、しかない!)



 実を言うと、昨日はずっと、眠れなかった。

 頭の中を、たった一つの疑問が渦巻いていたからだ。


 つまり……。



(――フェイスレス様は、一体何者なんだろう)



 ということ。


 僕はこの人のことを、ただ僕らを救いに来てくれた仮面の人、としか知らない。


 僕らを一瞬で隠れ家まで移動させられる不思議な術。

 王都の薬師すら持っていないような、病に関する知識。

 戦闘に関する深い造詣と、〈マニュアルアーツ〉の技術。


 どれ一つとっても、普通じゃない。

 いや、普通じゃないと言えば、


(住居の下にこんな魔物が徘徊するダンジョンが広がってるなんて、やっぱり、おかしい)


 見るとこの屋敷は、相当に古くから建てられたもの。

 そんな場所の地下に、偶然魔物が湧く墓所が存在した、なんてことがありえるんだろうか。


(今、思えば……)


 フェイスレス様が僕らをこの隠れ家に連れてきてくれた日。

 転移を行う時にフェイスレス様の身体から飛び出した黒い闇は、とても普通のものとは思えなかった。


 それはあたかも、呪詛や怨念。

 とにかく、日の当たる場所を歩いていたら一生縁がないような、何か黒い想いの塊のように、見えてしまったのだ。


 そして何より、一番の疑問。



(――どうしてフェイスレス様は、ずっと顔を隠されているのだろう)



 高貴な血が流れている、なんて言っても、僕は所詮学のないスラム育ちの子供。

 僕に素顔がバレたところで、その人が誰なのかなんて分かるはずない。


 いや、そもそも、おかしいのだ。


 こんないいことをしているのに、正体を隠す必要なんて、あるんだろうか。

 そこまで考えた時に、不意に王都に流れる噂を思い出してしまった。



 ――それは、王都の闇に棲むという「怪人」の噂。



 いわく、それに逆らえば、必ず殺される。

 いわく、それに狙われたら最後、逃げることができない。

 いわく、その怪物には「顔がない」。


 王都で不審死が起こる度に噂される〈顔のない悪魔〉。



(な、何を考えてるんだ、僕は!!)



 思い浮かんだ最悪な想像を、必死に打ち消す。


 僕やサナを救ってくれたのは、間違いなくフェイスレス様だ。

 なのに、その最大の恩人を疑うなんて、自分は本当に最低だと思う。


 だけど……。



(――僕はこんな思いを、疑問を抱えたまま、本当に作戦に参加していいんだろうか)



 もちろん、僕はフェイスレス様を、ルビーさんやサファイアさんを信じている。

 だからこそ、その思いを正面からぶつけてみるべきなんじゃないか。


 そう考えた瞬間に、気が楽になった。


(そうだ! そうだよ!)


 こうやって一人でうじうじと悩んでいるから、こうやって悪い想像ばかりしてしまうんだ。

 思い切って本人に尋ねてみれば、このもやもやだって綺麗に晴れるに決まってる。



(――明日。フェイスレス様に、仮面の下の顔を見せてくれるように頼もう)



 フェイスレス様は僕らを救ってくれた慈悲深い方だ。

 きっと、いや、絶対に僕の頼みを無下にはしないはずだ!




「……レリックくん?」


 いぶかし気なフェイスレス様の声に、僕の意識は現在に戻ってきた。



(――今しかない! 訊くんだ!)



 大きく息を吸う。


 緊張はしている。

 でも、この人なら絶対に僕の信頼を裏切らない。


 そんな想いに突き動かされるように、僕は口を開いて、



「フェイスレス様、お願いがあるんです! 僕に――」




























 ※ ※ ※



(――あ、ちょっと、ぼうっとしちゃってたか)


 僕は首を振って、緩んでいた頭に気合を入れ直す。


 何しろ、今日がアイン王子の暗殺、その決行の日。

 呆けている時間なんて、まったくない。


(……もうすぐ、もうすぐだ)


 僕は建物の陰に隠れながら、じっと息を殺して「その時」が来るのを待っていた。

 ただ、僕は緊張はしていても、不安に思ってはいない。


 だって……。



(――フェイスレス様にお任せすれば、絶対に大丈夫だ!)



 この計画は、フェイスレス様が立てたものだから。


 昨夜はなぜ自分が悩んでいたのか分からないほど、今は気分がすっきりしている。

 それもこれも、全部フェイスレス様と話をしたおかげだろう。


 具体的に何を話したかは、正直に言うとあまり覚えていない。

 でも、


(やっぱりフェイスレス様は、僕が信じていた通りの、いや、それ以上に素晴らしい人だったんだ!)


 フェイスレス様に対する信頼と尊敬の念だけは、はっきりとこの胸にあふれていた。


 あふれる高揚感が、作戦への意欲を高める。

 そしていよいよ、その時は来た。



「――な、何者だ!」



 誕生日のパレードで街を練り歩く王子一行に向かって、仮面の暗殺者が次々に現れ、襲いかかってきたのだ。


(あれが、アイン王子様!)


 騒ぎの中心に向かって駆け出しながら、僕は自分の兄となるはずだった人物を見た。

 そこには、ひときわ目立つ金髪の青年が、今は一人の暗殺者と切り結んでいる。


 初めて見た、人と人同士の激しい戦い。

 けれど僕に気おくれはなかった。



(――行ける!!)



 争う二人の剣撃は鋭い。

 しかし、二人ともに目の前の戦いに夢中で、こちらを全く警戒してはいない。


 人と戦うのも、人を傷つけてしまうことも、恐怖がないと言えば、ウソになる。

 でも、


(やるんだ! フェイスレス様のために!)


 僕は覚悟を決めると、握りしめたフェイスレス様からいただいたナイフに魔力を通して、



(――〈疾風剣〉!)



 何度も何度も、この日のために練習してきた。

 その成果が今、はっきりとした形になって、実を結ぶ。



「――なっ!?」



 誰も、何も反応はできなかった。

 僕の刃は吸い込まれるように目標に突き刺さり、その背を貫く。


「な、ぜ……」


 そうして、麻痺毒の塗ってある僕のナイフを背中に受けた男……真っ白な仮面をつけた暗殺者が、そう言って崩れ落ちた。


(……よかった)


 生々しく残る初陣の手応えに、震える手を必死になだめすかす僕を、見つめる視線があった。



「まさか、君、は……」



 驚きの声をあげ、素顔を晒す僕を見つめるのは、僕が助けた(・・・)アイン王子。

 そんな彼に向かって、僕はゆっくりと口を開いた。



「……僕は、レリック」



 あえて、名字は名乗らない。

 失踪した王族としてではなく、あくまで一人の人間として、僕はアイン王子の顔を正面から見つめて、




「――フェイスレス様に……いえ、〈レクス・トーレン〉様に教えを受けた、冒険者です!!」




 僕を救ってくれた恩人の名前を、声高らかに叫んだのだった。

明かされたフェイスレス()の正体!!






ということで、配役は


 フェイスレス(レクス)

 ルビー(ロゼ)

 サファイア(レシリア)


 首輪(パーティリード)

 隠れ家(薔薇の館)


でした!



次回は解決編&エピローグ!

もちろん(エタらなければ)明日更新です!

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― 新着の感想 ―
やっぱりかぁぁぁぁぁぁぁっ! 今回は騙されなかった! 何もかも猫耳猫のお陰だ!
[良い点] チックショウ!またやられたー!! 読み返してくるから更新して待ってろください!
[良い点] また、騙された! ウスバーさんの作品を読むときは、疲れてたり眠かったりして気を抜きながら読んではダメで、しっかりと気合を入れながら読む必要があるということか! [一言] しかしウスバーさ…
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