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主人公じゃない!  作者: ウスバー
インタールード 神の力
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第百六十九話 真の財宝

自作ゲームを作るようになってから、有料無料問わずにゲーム素材を漁るのが趣味の一つみたいになってきてるんですよね

特にエフェクト素材が大好きで、最近だと『エフェクト素材集:EVFXチャームフォージ』が謎に琴線に触れました


……まあ、どうあがいても120%使う機会がないので流石に買いはしませんでしたが、ツクールとかでおえっちなRPGを作る予定があるならオススメです!!


「ラッド、たのむー!」


 俺が叫ぶと、ラッドは半信半疑な様子ながら、


「――〈虚報の呼子〉!」


 と傍の地面に指を向けながら叫んでくれた。

 これで、あとは簡単だ。


「助かるー! んじゃ〈瞬身〉、っとね」


 口にした瞬間に俺の目の前の景色は切り替わり、俺は塔の上から地表まで、一瞬にして帰還していた。


「う、うわ!」


 こいつほんとにワープしてきやがった、みたいな表情をラッドが浮かべるが、別に大したことをしている訳じゃない。


 俺が塔の上と地表を行き来するのに使ったのはもはやおなじみのスキル。

 最強の近接職である〈剣聖〉のクラス技能であり、攻撃を受けたらその攻撃相手の場所まで瞬間移動が出来るというぶっ壊れ技〈瞬身〉。

 それから、前にラッドと一緒に試練を突破して習得したユニーク職〈トレジャーハンター〉で覚えられるクラス技能〈虚報の呼子〉だ。


〈虚報の呼子〉はスキルと同名のデコイを設置して敵をそこに集めるという技能だが、このデコイが集敵のために放つ衝撃波にはダメージなどはないものの攻撃に分類されているため、〈瞬身〉の対象になる。

 だから移動したい場所に呼子をセットすれば、あとは〈瞬身〉で呼子の場所まで一息にワープ出来るというカラクリだ。


 俺がそう説明をすると、なぜかラッドは引いた目で俺を見た。


「おっさん、なんかどんどん人間離れしてないか」

「失礼な。……ま、実際のとこ、これはそんなに使い勝手がいいもんじゃないんだよ」


〈虚報の呼子〉は特殊能力を持つデコイを生み出す技。

 その性質はデコイガンと非常に似ていて、同じ弱点を抱えているのだ。


「弱点? あ、敵との戦闘中に使えない?」

「正解だ」


 戦闘状態で使えないから、「とっさの時に後ろに呼子を設置してワープ」とかは無理だし、仮に戦闘前に設置チャンスがあったとしても、「敵の背後にワープして強襲」なんてのも無理。

 いや、だってもともと敵を集めるための呼子なので、そんな場所にワープするなんてわざわざ敵に見つかりに行くようなものだ。


「スキルの射程も限られてるからあんまり遠くには行けないし、あとは、なんと言ってもラグがなぁ」


〈瞬身〉の移動自体は一瞬だが、それまでにまず呼子を目的の場所に出現させ、それから呼子が衝撃波を放って、それが自分のところに届くのを待つ、とやらなきゃならないので、割と時間がかかる。

 自力で到達が難しいような場所に行くならともかく、平地の移動や戦闘で使うなら素直に全力ダッシュした方が早かったりもするのだ。


「あー、意外と使い道が限られるんだな」

「まあ、何事もあまりうまい話はないってことだ」


 あとこれはラッドには言えないが、警備が厳しい場所にこっそり忍び込む時なんかに使うと衝撃波で衛兵が敵対状態になって終わる(一敗)。


「ともあれ、だ」


 戦闘では使い勝手が悪いとしても、この状況では最適解。

 デコイガン同様、デコイを壁や天井にも設置出来るようになって、ゲームの時よりさらに利便性は増している。


 それから……。


「おっ英雄様! 今日は街の散策かい?」

「ちょっと街の遺跡の探索をな。この近くでそれっぽい場所を知らないか?」

「ああ、それなら……」


 今はハアトこそいないものの、俺はすでに街の有名人だ。

 街の人はみんな協力的で、これはいい意味で予想外だった。


 また、街の人の反応でもう一つ意外だったのはマナのこと。

〈聖女〉であるマナも俺ほどではないが人目を引いていて、たくさんの街の人たちに声をかけられていたのだ。


(……よかったな、マナ。お前が積み上げてきたもんは全部、無駄じゃなかった)


 ブレブレでは「主人公」が街で活躍をすると街の人からの知名度が上がり、行動に見合った称号をもらうことがある。

 もちろん「主人公」補正ではあるが、これも全て、マナが頑張ってきたからこその結果だ。


「あ、あなたはもしかして〈風呂好きの小聖女〉様!?」

「うおー! ホンモノの〈風呂好きの小聖女〉さまだ! すげー!」

「〈風呂好きの小聖女〉様、この牛乳を持っておいきよ!」


 街の人々に親しげに話しかけられ、ハイライトのない目で笑顔を浮かべるマナを、俺はほっこりとした気持ちで見守ったのだった。



 ※ ※ ※



 街の人々の協力もあって、翠柱都市のお宝探索は、想像よりもずっと順調に進んだ。


「……これで最後、かな」


 ラストに向かったのは、この街で一番高い塔の上。


 実は水没後の探索スポットの中で唯一、ここだけは昔の遺跡ではなかったりする。

 当然怪しい入口などはなく、一見すると何もないように思えるが……。


「……あった」


 ここに眠る「お宝」こそが、探索のメインディッシュだ。

 目的の「お宝」を手に入れると、ラッドに合図をして、地表に戻る。


 地表に戻ってホクホク顔の俺に、ラッドは近付いてくるが、すぐにその顔が曇った。


「おっさん。それが最後のお宝……って、鳥の巣じゃねえか!」


 ……そう。

 俺が最後に見つけた「宝」とは、鳥の巣。


 詳しく言えば、この塔の天辺に居着いていたミズツバメの巣だ。


「いくら何も見つからなかったからって、鳥の巣はねえだろ。ほら、いいからちゃんと戻して来いって」


 呆れたような声を漏らすラッドだったが、そこにニュークのフォローが入る。


「こ、こら! 不勉強だよ、ラッド。ミズツバメの巣は、こう見えて高級食材なんだよ」


 ですよね、とばかりに眼鏡をくいっとやりながら尋ねてくるニューク。

 確かにそれは事実だが、俺の目当てはそれだけじゃない。


「正解……だが、それだけじゃ五十点だな。ほら」


 それを証明するために、俺は手に抱えたミズツバメの巣をさかさまにひっくり返した。


「おっさん、何やって……え?」


 絶句するラッド。

 逆さになった巣から零れ落ちてきたのは、無数の金銀財宝だった。



 ※ ※ ※



「――ミズツバメは、自分の巣に光り物を貯め込む習性があるんだよ」


 それってツバメというよりカラスなんじゃ、みたいなことは思うが、ゲーム世界の不思議生物の生態に文句を言ってはいけない。


 そして、ここは財宝が眠る遺跡の街だ。

 当然、そこで手に入る「光り物」も普通のものじゃなかった。


 ぶちまけられた財宝の中で、まず目を引いたのは、無数の硬貨だ。

 この世界で流通している通貨にはこの世界の偉人の顔が掘られているのだが、中には「子供銀行」と書かれたものや、可愛い猫の模様が描かれたもの、迫真の表情で喘ぐ角刈りの男が描かれたものに、中身がチョコになっているもののように、明らかにお金としては使えないと分かるものもある。


 そして、そんな様々な硬貨に紛れて光っているのは……。


「ほ、宝石?」


 色とりどりの、宝石だった。


 こっちの世界でも宝石の価値は折り紙付き。

 いや、特別な宝石は魔法との親和性が高かったりするので、あるいは向こうの世界以上かもしれない。


「な、なぁ、おっさん! これとこれなんて、めっちゃくちゃ高いんじゃないか?」


 興奮した様子でラッドが大きな二つの宝石を手にしたが、俺は首を横に振った。


「……残念。その二つは、この中じゃ下から数えた方がいいくらいの安物だぞ」

「マ、マジかよ!?」

「それは、宝石じゃなくて消費アイテムだからな。しかも、どっちもあんまり価値がない」


 大きさだけで選んだんだろうが、ピンポイントに安物を引く辺り、ラッドの目利き力と運の低さが窺える。


 どちらも青くて大きな宝石に見えるが、片方が〈ウォーターホース〉という、大した威力もない水が噴き出るだけの魔法が込められた石だ。

 その分〈ウォーターホース〉は持続時間だけはやけに長いが、だからどうしたという話。


 もう一方は〈水守りの宝石〉で、五分間だけ使用した相手の水耐性を「半減」にまで引き上げるというもの。

 まあ有用ではあるが、ただそれだけと言えばそれだけのアイテムだ。


「それよりも、値段で言うならこっちだな」


 俺が摘まみ上げたのは、黒い色をした宝石。

 一見すると地味にも見えるが、


「〈ブライトクリスタル〉。精神が五十上がる高額装備だ。これだけで二千万ウェンくらいの値段になったはずだ」

「お、おおー!」


 控えめな驚きの声を漏らすラッドに俺は笑みを浮かべ、


「それじゃ、これ。全部売りに行くか」

「……へ?」


 財宝を抱えて道具屋に向かったのだった。



 ※ ※ ※



「まいどありっしたぁー!」


 威勢のいい声を背中に、俺はアイテムショップをあとにする。


「……かなりの臨時収入になったな」


 ミズツバメの巣からの拾得物は、今後使う機会のありそうな消耗品二種だけを残してあとは全部売り払った。

 カジノの景品で荒稼ぎした時に比べると流石に少ないが、それでもそれなりの金額になった。


 あ、あとちょっと欠けてしまったがツバメの巣はちゃんと戻した。

 家がなくなっちゃうと可哀そうだしな。


「な、なぁおっさん! ほんとにあれ売っちゃってよかったのか? せめて〈ブライトクリスタル〉ってのだけでも残しておけば……」

「ま、悪い装備じゃなかったけどな。あの程度の装備なんかに驚いてるようじゃ、これから大変だぞ」


 今から入手する予定の装備と比べたら、ただ五十ぽっちステータスが上がるだけの装飾品なんて、たちまち霞んでしまう。


「これから? え、でも、これで宝捜しは終わり、なんじゃないのか?」


 不思議そうなラッドの言葉に、俺はこらえきれずにくっくと笑いをこぼした。


「なぁに言ってんだよ。むしろ、本番はこれからだぞ」


 これで、準備は整った。


 俺はきたるべき未来をなぞるように、手にした剣をブンと振りあげ……。

 その切っ先を街の中心、決して途切れることのない水の柱へと突きつける。


「せっかくご招待されたんだ。今から〈神の座〉にお邪魔して、水神様とちょおっとばかし『交渉』をして、ついでにかるーく戦って――」


 ゲーム時代の俺には手に入れられなかった「究極」。

 ネット掲示板に貼られたスクリーンショットを見た時から、俺がずっとずっと焦がれ続けた――



「――『神の力を宿した装備』を、手に入れようぜ!」


雨雲の腕輪、疾風の靴、火神防御輪、アイスソード、ガラハゲ……うっあたまが




次回たぶんインタールードクライマックス!

まあ皆さん色々予想もあるでしょうが、あと一日だけお口チャックしてお待ちください!

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ちょっとした記入ミスで、登場人物も、世界観も、ゲームシステムも、それどころかジャンルすら分からないゲームのキャラに転生してしまったら……?
ミリしら転生ゲーマー」始まります!!




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ニコニコ静画」「コミックウォーカー
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― 新着の感想 ―
水無効の相手を溺れさせることが出来るのか………。
[良い点] >〈風呂好きの小聖女〉 清潔感があっていいじゃない! [一言] > そう言って、俺は銃の照準をつけるように人差し指を立てて片目をつぶり、塔の上へと指の先を滑らせる。 > > そして、バン…
[一言] 水守りの宝石を使って水無効の敵を倒すんでしょうか
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