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主人公じゃない!  作者: ウスバー
第六部 全てを知るモノ
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第百六十一話 秘密の告白

皆様あけましておめでとうございます!

また新しい年がやってきましたね!


今年は出来るだけ長く毎日更新を続けること、それからクッキーク〇ッカーのD〇KIDOKI文芸部スキンMODを全国民に布教することを抱負として頑張っていこうと思います!


「え、あれ? えぇ……?」

「……?」


 プラナと二人、混乱したまま見つめ合う。


「え、ほんとに転生者じゃ、ない、のか?」

「テンセイシャって何?」


 不思議そうに聞き返すプラナの様子に嘘の気配はなく、素で答えているのは明らかだった。


(どういう、ことだ?)


 俺はついに真実を解き明かして、答えを見つけたはずだった。

 なのに、これは……。



「――兄さん!」



 そこで、広場に置いてきたレシリアが追いついてきた。

 だが、あいさつを交わす余裕もなく、


「これ、どういう状況ですか?」


 すぐにムッとした顔で俺たちの間に割り込むと、冷たい声でそう問いかけてくる。


「い、いや、レシリアには話してただろ。本当の『勇者』のこと。俺は、プラナがそうだと思ったんだが……」


 言い訳のようにそう口にするが、これは本心だ。


 どう考えても「主人公」はプラナだとしか思えない。

 だって、もし違うと言うのなら……。


「転生者じゃないなら、あの時の台詞! あの思わせぶりな台詞はなんだったんだよ!」


 俺がプラナが「主人公」なのではないかと疑う原因となったあの台詞。



《――私を、命を懸けて助けてくれた人だから》



 この言葉が出てくるのは、どう考えたっておかしい。


 この時点では、俺が命を懸けてプラナを助けたという場面はなかった。

 つまりそれは、プラナが元の世界で俺に命を助けられた転生者であるという証明に……。


「……やっぱり、忘れてる」


 しかしそんな俺の予測は、愁いを帯びた彼女のため息に覆された。

 プラナは悲しそうにつぶやくと、意を決したように口を開く。


「レクスは昔、魔物の襲撃から里を守った。私も、命を救われた」

「え……」


 口にされた内容に、俺の頭が一瞬動きを止めた。

 だってそれは、俺も一度は検討したものの、ありえないと一蹴した可能性。


「そ、それこそおかしいだろ! 〈エルフの里〉は排他主義。他国の王族でさえ入ることが出来ないと言われてるんだぞ。それを、一介の冒険者なんかが……」


 思わず声を張り上げて問う俺に対して、


「それは……」

「それは、トーレン家にはエルフの一族と深いつながりがあるからです」


 言いかけたプラナの台詞に被せるように答えたのは、レシリアだった。

 思わぬ角度からの援護射撃に、俺は反射的にレシリアを振り返る。


「トーレン家? 俺とレシリアの家が、エルフとつながりを?」


 確か、「王家の剣」と呼ばれるほど有名な剣士の家系で、それ以外の設定はゲーム中には出てきていなかったはず。


(いや、だが……)


 トーレン家の生き残りはレクスとレシリアだけで、レシリアも本来のゲームの流れなら死んでしまっていたはずだ。

 だからこそ、そうした細かい設定がされていてもプレイヤーに明かされることがなかった、というのも可能性としてはありえる、のか?


 自分だけじゃ判断がつかない。

 俺は問いかけるようにプラナに視線を移すと、


「……嘘では、ない」


 プラナは突然口を挟んできたレシリアをどこか呆れた様子で見てはいたが、内容自体を否定はしなかった。

 その同意に力を得たかのように、レシリアがまくし立てる。


「普通の人間ならありえないことですが、ほかならぬ兄さんであれば、エルフも里に入れることを拒みはしなかったでしょう。その時に魔物が襲ってきたと考えれば、辻褄は合います」

「そんな……」


 俺はずっと、ゲーム的に言えばモブキャラ、ランダムに生成されただけのキャラクターであるプラナに、レクスとの間に特別なつながりがあるのはおかしいと思ってきたし、それがいわゆる「プラナ主人公説」を推す大きな理由となっていた。


 だが、この事情を知ってしまえば、話は逆転する。


 レクスがエルフの里を救った以上、ほとんど全てのエルフは「レクスに助けられた経験を持っている」ことになる。

 つまり、「レクスに恩がある」というのは特別でも何でもなく、もはやエルフのスタンダードなのだ。


「……私が冒険者になった一番の理由は、その恩返しのため」


 ぼそり、となんてことのないように付け足されたプラナの言葉に、俺は少なからず衝撃を受けた。


(お前は一体どんだけすげえ奴なんだよ、レクス)


 レクスのことを「序盤の救済キャラ」としか思ってなかった時の俺は、能力も技も不遇で、序盤に確定で死んでしまう彼のことを正直軽く見ていた。

 だが、その限られた能力で世界各地を回って人々を助けてきた本来のレクスこそが、本当に英雄と呼べるような存在じゃないかと今なら思う。


 だからこそ……。



「――なら、プラナに話さなきゃならないことがある」



 そんな彼に命を救われたプラナには、真実を伝えなければいけないと、素直に思えた。


「兄さん! それは……」


 レシリアが止めに入るが、俺は首を横に振った。

 赤の他人にまで説明の義務があるとは思わないが、レクスの肉親だったレシリア同様、本当のレクスのために行動を起こしたプラナには、知る権利がある。


「転生者、って言っただろ。俺はレクスではあるけど、中身は別の世界の人間なんだ」

「え……」


 普段の飄々とした態度を崩し、驚きをあらわにするプラナに対して、俺は事情を打ち明けた。

 ゲームや転生については簡略化して説明したが、俺が本来のレクスとは全く違う人間だったこと、それからこの世界の知識を持っていることについてはちゃんと伝わったはずだ。


「……すまないな」


 おそらくこの世界自体が転生に合わせて作られた受け皿。

 だとすると、レクスという人間は最初から人々の記憶の中にしかいない存在ということになるが、プラナにとっては恩人を「俺」のせいで殺されたようなものだろう。


 恨みに思われても仕方ない、そう思って俺は目を伏せていたが、


「謝らなくて、いい」


 帰ってきた言葉は、思いがけず優しいもの。


「『彼』は今でも私の憧れで、恩人。だから、恩返しできないのは、残念」


 でも、と彼女は言葉を切る。

 そうしてプラナは俯く俺のほおにそっと、自分の細く長い指を添わせて、



「――『あなた』には、それ以上のものを、もらったから」



 そう静かに、微笑んだ。


「プラナ……」


 俺は思わず、言葉に詰まった。


 なぜなら、そのプラナの言葉は、「レクス」ではない「俺」を肯定してくれるものだったから。


 今まで「レクス」として褒められても、どこか、無意識のどこかできっと他人事という気持ちが抜けていなかった。

 だけどプラナのこのたった一言で、これまでの俺の頑張りが、進んできた道のりが、本当の意味で報われたような気がして、こみ上げるものがあったのだ。


 プラナと俺の視線が絡み合い、胸の奥から湧き上がる感情を形にしようと、俺が口を開きかけた時、



「……で」



 横から伸びた手がペシンとプラナの手を俺の顔からはたき落とし、レシリアの冷たい声が俺とプラナの間に割って入った。


「兄さんたちのなれ合いに興味はありませんが、結局のところ、『勇者』捜しはまた振り出しに戻ったということでいいんですか?」


 同時に送られた、絶対零度の視線に俺は思わず凍りつくが、同じように視線を送られたはずのプラナは挑発的に肩をすくめた。


「レシリアは余裕なさすぎ。嫉妬剥き出しの女はモテない」

「わ、私は兄さんを守る義務があるだけです!」


 そのまま何やら険悪な雰囲気にもつれ込んでいきかけたが、流石にそんな場合じゃない。

 俺は慌てて仲裁に入った。


「ま、待った! もめごとの前に、はっきりさせてくれ」


 レシリアが嫉妬丸出しかはともかく、その指摘は重要だ。


 確かにプラナが「転生者」じゃないことは分かった。

 だが、「転生者」じゃないからといって、「主人公」じゃないかは分からない。


(俺の推理が全部が全部的外れだった、とも思えないんだよな)


 プラナが「主人公」だと考えたのは、何もあの台詞だけが根拠だった訳じゃない。

 今までのイベントの発生したタイミングを考えると、ラッドたち新人パーティの中に「主人公」がいると考えるのが一番しっくりくるし、ラッドたち男性陣二人は扉に触れても何も起こらなかったから「主人公」の可能性は低い。


 それに……そうだ。

 プラナが「特別」だったことは、もう一つあった。


「ニルヴァ、だ。あの時、剣聖ニルヴァに目を付けられていたのはどうしてなんだ?」

「……ニルヴァ?」


 俺の問いかけに、プラナはちょっと考えるように首を傾げ、やがて「あぁ」と息を漏らして、こともなげに言った。


「それは、勘違い。ニルヴァが声をかけたのは、私じゃ、ない」

「へ……?」

「私が庇って前に出たから、そう見えただけ。ニルヴァが本当に興味を持ったのは……」


 その名前を聞こうと俺が身を乗り出した瞬間、「バン!」と音を立てて、背後の扉が開け放たれた。



「――マ、マナ!?」



 息を切らしてそこに立っていたのは、ラッドたちのパーティの仲間の一人。

 黒髪のヒーラー、マナだった。


 よっぽど急いできたのだろう。

 呼吸は荒く、いつもはきちっと着込んでいる服にも、若干の乱れが見える。


「マナ、一体どうし……」

「レクスさん!!」


 まさかラッドたちに何かあったのかと思わず口にしかけた問いは、しかしマナの声にかき消された。


「今までずっと、言い出せなくて、ごめんなさい!」

「え……」


 まるで先制攻撃のように、彼女は大きく頭を下げる。

 そして、



「わたしは、あなたと同じ転生者で……この世界の『主人公』なんです!!」



 過熱するマナの言葉が、俺の鼓膜と脳を貫いて……。




「――え、なにそれ」




 あまりにも想定外すぎる事態に俺は、思わずそうつぶやいていたのだった。

真打登場!





宣伝です!!

漫画版「主人公じゃない!」コミックス4巻がなんと、昨年12月26日だかに発売されてました!


い、いえ、決して忘れていた訳じゃないんですが、こう、昨日は宣伝の隙がなくてですね

まあ発売後一週間以内に宣伝したのできっとセーフです!


今回は遺跡攻略と剣聖ニルヴァ戦!

みんな書店か電子でポチッとやって、涙目の女神様の雄姿をご覧になってください!


あ、もちろんこの作品自体も評価とか感想とか原作千冊爆買いとかなんやかんやして応援してくれると嬉しいです!!

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ちょっとした記入ミスで、登場人物も、世界観も、ゲームシステムも、それどころかジャンルすら分からないゲームのキャラに転生してしまったら……?
ミリしら転生ゲーマー」始まります!!




書籍三巻発売中!
三巻
メイジさん作画のコミックス四巻も発売されています!


「主人公じゃない!」漫画版は今ならここでちょっと読めます
ニコニコ静画」「コミックウォーカー
(※外部サイトへのリンクです)
― 新着の感想 ―
急にぶっこむこの勢いといい意味でテンプレ外すとこほんと好き惚れた
えっ? ここでぶっちゃけるの!? まあ、ラッド経由で教えられるより、と思ったのかも知れないけど。
[良い点] プラナのヒロイン力が……! やっぱ預かり知らないことで感謝されているより、自分がやってきたことを認められると嬉しいよね。 きっかけは恩を感じたことかもしれないけど、出会ってからでも実際…
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