第百四十七話 女神の報酬
毎日更新を連打するとスパム扱いされるかと思ったのであえて一日開けて投稿!
もちろん嘘ですごめんなさい!
このブレブレの世界には、六柱の神がいる。
火と筋力を司る神〈アーヴァ〉
地と生命を司る神〈ダイアン〉
風と敏捷を司る神〈ミュリア〉
水と精神を司る神〈ウィーナ〉
そして……。
光と魔力を司る神〈フィーナレス〉
闇と集中を司る神〈ラースルフィ〉
そのうち、火、地、風、水を司るいわゆる四属性神は現在力を失っているが、その所在と名前を特定することで、彼らを蘇らせることが出来る。
しかし、その方法は二つあり、どちらも神が蘇るのは同じだが、ゲーム的な成果は全く異なり、それが女神の依頼をことわ……持ち帰って検討することにした理由だ。
一つ目の方法は言うまでもない。
さきほど目の前の女性、〈光の女神フィーナレス〉が語った通りのことだ。
四属性神の所在と名前を女神に告げれば、以前の四属性神に関する記憶を持っている彼女が彼らの再構築を手伝い、四属性神は「復活」する。
かつての記憶と力を取り戻した四属性神は、当然〈悪神ラースルフィ〉を倒すことにも協力してくれる。
だが……。
剥奪の呪いによって、俺たちは「ほかの人」に神の名を告げることは出来ないが、名前を告げられる「ほかの神」ならもう一人、いや、一柱いる。
それはもちろん、この世界に残ったもう一柱の神。
フィーナレスと対を為す闇の神、封印されし悪神ラースルフィだ!
……なんてことは、当然ない。
いくらなんでも悪神に神の名前を教えるとか自殺行為が過ぎるし、そもそも悪神は復活するなり襲いかかってくるので、会話自体が成立しない。
ではその相手は誰なんだ、と言えば……。
――その答えは、「四属性神本人」である。
四属性神、いや、正確には四属性神の残滓とも言うべき存在は、かつて神であった記憶を失って、世界の各地で「大精霊」や「大妖怪」などと呼ばれて土地に根付いている。
彼らを見つけ、彼らに向かってその名を教えることで、彼らはふたたび「神」としての自己を取り戻す。
しかし、それは完全な「復活」ではない。
名前だけを与えた場合は「以前神だった時の記憶」は戻らないため、かつての四属性神と同じ性質を持つ、けれど全く新しい神として「新生」するのだ。
「新生」した場合は以前の記憶がなく、悪神に対する危機感を共有出来ないため、神に戻してあげても「ふーん。まあでも俺は俺で勝手にやるわ」とばかりに自分の住処に神域を作ってそこに引きこもってしまい、最終決戦での助力は期待出来ない。
だが、このやり方を取った場合、それぞれの属性の「巫女」が覚醒し、大幅パワーアップする。
覚醒は元の能力が高いほど爆発的に能力が上がるので、特に元のステータスが優秀な水の巫女、水の神に仕える〈白の女王ハアト〉が覚醒するとチート級とも言えるステータスになったりする。
残念ながらハアトはパーティメンバーにこそならないものの、スポット参戦した時などはその強さに助けられることも多かった。
そのほか、「新生」したのちに神域を訪れることでご褒美をもらえたり、重要な情報をもらえたり、あえて敵対することで神殺しに挑戦することだって出来る。
……まあ、四属性神のレベルは五百超。
当然勝てる訳もなく、試しに挑んだら挑んだ瞬間に蒸発したが、とにかく色々お得だ。
だから……。
《――むぅぅぅ》
女神様に恨めしげな目で見られても、安請け合いする訳にはいかないのだ。
《……どうしても、引き受けてはくれないのですか?》
俺が乗り気じゃないのが不満なのか、女神はそう言って追撃を仕掛けてきた。
女神は内面はともかく、外見は絶世の美女と言っても差し支えない。
そんな相手に悲し気に語りかけられたら、心が動かされるのは確かだ。
ただ……。
(正直「復活」より「新生」を選びたいんだよな)
なんといっても「復活」のメリットは、最終決戦で四属性神が参戦してくれること。
最終決戦ではまず光の女神を含んだ神々が悪神の力を抑え込み、その状態でプレイヤーたち人間組が戦闘、という流れになるため、一緒に戦うというよりは悪神の弱体化度合いが変わるというだけだが、その恩恵は当然バカにならない。
……ただ、このメリットはゲーム的には実は微妙だ。
なぜなら、このゲームのラスボスは〈闇深き十二の遺跡〉をしっかりと攻略してさえいれば苦労はしないから。
遺跡に眠る闇の像は、〈悪神ラースルフィ〉が封印を破るための道具であると共に、〈光の女神フィーナレス〉を弱らせている原因でもある。
悪神は遺跡の攻略数に応じて如実に弱体化し、反面開幕の女神の一撃が強力になるため、十二ある遺跡のうち八個を攻略出来れば四属性神の補助がなくても余裕を持って悪神は討てるのだ。
どう言い逃れしたものかしばらく考えて、俺は神妙な顔を作ってから口を開いた。
「女神様。俺たちは冒険者です。そして冒険者とは、依頼を受けてその報酬で動く者。……女神様は、俺たちにどんな報酬をくれますか?」
《え……?》
その質問は、女神の虚を突いたようだった。
《ほ、ほかの神の力を借りられれば、闇の神との戦いが楽に……》
「それは『俺』への報酬ではないですよね。それとも悪神を倒したら何かくれるんですか?」
《そ、れは……》
言い淀む女神の姿に、俺はひそかに留飲を下げる。
……もちろん、ずいぶんとめちゃくちゃで、図々しいことを言っているのは分かっている。
女神は善意で、俺たち人間のためを思って悪神と戦ってくれているのだ。
いや、紙芝居を見る限りこのポンコツ女神は悪神とずいぶん仲が悪そうなので若干私怨も混ざってそうな気もするが、一応は人のために無償で戦ってくれている訳で、むしろ人間側が女神に報酬を払ってもいいような場面ではある。
(ただ、なぁ……)
ゲーム時代、めちゃくちゃ苦労して悪神を倒しても、女神からは感謝の言葉を一言言われるだけで、それ以上の労いも報酬も何もなし。
いや、それはおそらくノーマルエンドだったから尺が短かったのだろうというのもあるし、物語の勇者としては「世界が救われたならヨシ!」でいいのだが、現実基準で考えると「命懸けで神を倒したのにちょっと冷たくないか?」とも思ってしまうのだ。
《そ、の……》
まさか、守るべき相手にそんなことを言われるとは思わなかったのか、女神は何も言えないまま、顔を伏せてしまった。
流石にこんな態度を取られると、俺もわずかに罪悪感を刺激される。
「兄さん……」
同じことを思ったのだろうか。
心配そうなレシリアが、おずおずと声をかけてくる。
(……ま、この辺が潮時か)
俺が女神を冷たいと感じたのは確かだが、それは「ゲームでの女神」であって、目の前の「泣きそうな顔をした女性」ではない。
俺の八つ当たりのせいで女神との関係が本当に悪化しても困るし、このくらいで引き下がろうと口を開きかけた時、
《……分かり、ました。確かに、報酬もなしに頼みごとをしようなどと、虫の良い話でしたね》
「えっ!?」
つらそうな表情を浮かべて俯いていた女神が、決然と顔を上げる。
これで焦ったのは俺の方だ。
「い、いや、すみません。今のはじょうだ……」
慌てて否定しようとしたが、女神は止まらない。
《世界を守護する光の女神として、約束します。もしも、あなたがその手で闇の神を討った暁には、わたしが――》
彼女はその瞳に悲痛と言えるほどの決意の色をたたえ、叫ぶように言った。
《――どんなエッチな願いでも一つだけ、叶えてあげましょう!!》
頭桃色女神様!
ちょっと気になって「いいね」の数確かめてみたら、前話だけ4倍以上に跳ね上がってて笑いました
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と言いたいとこですが、ぶっちゃけ今回長すぎて分割したので応援されてもされなくても次回更新は明日です!





