第百三十四話 最強DLC
昨日偶然気付いたんですが、あの名作ゲーム「ジル〇ール」の魂を継いだと言われ、この小説にも大きく影響を与えた同人ゲーム「マッドプ〇ンセス-華麗なる闘士たち-」を出したあの「あとらそ〇と」さんが!
現在DLs〇teで半額セール+18%クーポンで非常にお買い得な「マッドプリ〇セス-華麗なる闘士たち-」を作ったあの! あの「あとら〇ふと」さんが! なんと! 驚くべきことに! 大晦日に! 新作ゲームを! 出して! いたんですよ!!
これは少しくらい更新遅れても仕方ないですね!(完璧すぎる自己弁護)
ゲーム時代、俺はなんとなく、プレイヤーが「主人公」の出自を選んだ時初めて、その人物が世界に登場するものだと思っていた。
だが、今回発見した「リンダ」という妹を持つ貴族の少年は「主人公」としての特徴こそ持たないものの、明らかに《捧げられた闇の御子》の特徴にピッタリとはまっていた。
なら、プレイヤーが選ばなかった出自の「主人公」も、〈光の勇者〉としての力を持っていないだけで、「主人公」時と同じような境遇を抱えた人物として、世界に存在していると考える方が自然だろう。
……だが、ブレブレのゲームにおいて、自分が選ばなかった出自の「主人公」と遭遇することは、俺の知る限りない。
それはおそらく、その「主人公」候補とでも言うべき人物たちが、〈光の勇者〉の力を授からなかったことで「主人公」の時とは別の未来を歩むからじゃないかと思う。
例えば《冒険者に憧れる都会の少年》であれば、ラッドの立ち位置がそのまま「主人公」のポジションだが、〈光の勇者〉の力も、俺というイレギュラー要素もなかった場合、最初の古都襲撃イベントで死んでいた可能性の方が高い。
一方で、さっきのサーク少年、《捧げられた闇の御子》については、〈光の勇者〉としての力がなければ常闇の教団にさらわれることはなく、妹のリンダと一緒に何事もなく平穏な人生を送っていたのではないか、と考えられる。
少なくとも、彼の現時点での能力値は《捧げられた闇の御子》の「主人公」として選んだ場合の能力と比べて著しく低い。
ゲーム中の独白を聞く限り、ゲーム開始直前に教団にさらわれるまで特に変わった出来事もなかったようなので、一年後に突然〈光の勇者〉の力に目覚めて……なんて展開はないだろう。
いや、まあ《捧げられた闇の御子》がどうして常闇の教団に目をつけられたのか、についてはゲーム中でも明示はされていなかったので、念のためにアインを通じて万が一にも彼がさらわれたりしないように手は打ってもらうつもりだが、とにかく重要なのは「『主人公』候補は『主人公』に選ばれなかった場合はその運命が変わる」ということ。
それはおそらく、DLCで追加された《魔の島の少年》にも同じことが言える。
彼らの運命は、プレイヤーがどの「主人公」を選択したかによって「分岐」するのだ。
具体的には、《魔の島の少年》を「主人公」に選んだ場合は妹のフィンが死んで兄のルインが生き残り、それ以外の「主人公」を選んだ場合は兄のルインが死んで妹のフィンが生き残る。
そう考えると、全ての辻褄が合うように思う。
(……今思えば、ちょっとした違和感はあったんだよな)
例えば外見。
DLCの紹介で見たルインよりも、「この世界のルイン」はわずかに華奢だった。
ルインとフィンは、全く同じ時期に全く同じように作り出されたホムンクルスとやらだそうだが、これは男であるルインと女であるフィンの性別による差異だろう。
例えば戦闘スタイル。
世界一の剣士になるとまで言って訓練していたはずの「ルイン」の剣技が思ったよりも拙く、ステータスを見ても、純粋な剣士として過ごしていたにしては若干ズレを感じる能力だった。
これは「今のルイン」が子供の頃からずっと剣の訓練をしていた剣士の兄ではなく、そのサポートをしていた弓使いの妹だからこそ生じた違和感だろう。
それから、DLCの謳い文句だって、疑ってかかってみると少しおかしい。
2.最高の能力値と素質!!
オープニングでパワーアップイベントがあるため
レベル以上に強い状態でゲームが始まります!
強くなりすぎて物足りなくなっちゃうかも!?
何度思い出しても胡散臭いキャッチコピーだが、だからこそはっきり覚えている。
兄妹が自分に命を託して死んでいくのを「パワーアップイベント」とか言っちゃう辺り製作陣の人間性が終わっているが、今考えるべきはその一つ前、「最高の能力値と素質」という部分だ。
確かにレベル三十の状態でスタートするのだから、レベル一で始まるほかの「主人公」と比べて「最高の能力値」なのは疑いようがない。
しかし、それではほかの「主人公」と比べて「最高の素質」を持っているとは言えない。
だとしたら、可能性は一つしかない。
(本来の《魔の島の少年》は「素質値が二十五を超える」んだ)
これはステータスからの推測だが、フィンの元々の素質値は二十五よりも低く、本来の「主人公」であるルインの力を取り込んだことで二十五にまで上がったのではないかと思う。
だとしたら、《魔の島の少年》を「主人公」に選べば、「主人公」として最初から持っている素質値二十五に加え、さらに「パワーアップイベント」で妹であるフィンの力を取り込んで、それ以上の素質値を手に入れられるとしてもおかしくはない。
(いや、開発の奴ら、どんだけDLC売りたかったんだよ!!)
これまでは、どんな「主人公」を選んでも初期レベルは一で、素質値の合計は二十五だった。
それがDLC主人公だけは初期レベルが三十で、オマケに素質値ももっと高いとなれば、これはもう完全に「最強の主人公」が出来上がる。
――そして、俺の推測が正しければ、このDLCで手に入れられるのは「最強の主人公」だけじゃない。
それが、出自の選択によってルインとフィンの運命が変わることの意味。
俺がフィンを「主人公」だと誤認したのは、その容姿がDLC主人公に似ていたから、だけじゃない。
素質値や技能、それから装備適性などを含めて、「スペックまでが主人公並みだった」からだ。
要するに、このDLCは「最強の主人公」である《魔の島の少年》が使用可能になるだけじゃなく、《魔の島の少年》を「主人公」に選ばなかった場合でも、既存の「主人公」と同等の素質と〈光輝の剣〉を持つ「最強の仲間」が使用可能になる、というとんでもない代物。
――新しい「主人公」を選んでも選ばなくてもパーティが超強化される、ぶっ壊れ級のDLCなのだ!
はぁぁぁ、と大きく息をつく。
(そりゃ、こんなDLCが出たらゲーム苦手なライト層も効率を求める最強厨も買っちゃうだろうけどさぁ……)
金のためにゲームをぶっ壊すのはほどほどにしてほしい。
二次創作でオリキャラばっかり活躍させるような真似を公式がやっちゃダメだろ、と思わずにはいられないし、そんなやけっぱちなDLCに自分がここまで振り回されたと考えると、切ない気持ちになる。
(しかし悲しいことに、そう仮定するとこれまでの違和感も解消出来ちまうんだよな)
俺たちの前に突然現れた剣士の「ルイン」。
その存在は、見るからにイレギュラーだった。
追加DLCの「主人公」とそっくりの顔で、本来NPCがクリア出来ないはずの遺跡をクリアして、「主人公」にしか使えないはずの〈光輝の剣〉を使う。
こいつは「主人公」に違いない、と考えた俺の判断は、おかしくはなかったと思う。
だがそれも、「既存のプレイヤーに新キャラの規格外さを見せつける」という意図で作られた演出であり、DLCを買った人に向けた「自慢の新キャラのお披露目イベント」だと考えると、妙にしっくり来てしまう。
「あの、し、師匠? なんか怒ってます、か?」
そんなことを考えていたせいか、俺は自分でも気付かない間に、フィンをにらみつけていたらしい。
「悪い、ちょっと考え事をな」
何も言わずに一日中連れまわしてしまった相手に、これは流石に失礼だろう。
俺は意識して表情を緩め、あらためて二人に礼を言う。
「それより二人とも、今日は色々ありがとう。色々助かったよ」
俺が頭を下げると、フィンが慌てて手を振った。
「こんなのぜんぜん大丈夫……でもなかったですけど、師匠に受けた恩を思えばこのくらい何でもないです! あ、でも今日は結局、何を調べてたんですか?」
素朴な疑問をぶつけてくるフィンに、俺は少し考える。
正直、俺の秘密、つまり自分が転生者だということや、ここがゲームを基にした世界だということは、どうしても隠しておかなくてはいけないことじゃない。
実際、フィンが「主人公」なら、俺の知識で散々に彼女を振り回すことになるため、一度は全部を打ち明けようとも思っていた。
(とはいえ……)
フィンが「主人公」ではないと分かった今、全部話した方がいいかは微妙なところだ。
一から全て話すとなると、まず銀河の状況を理解してもらうくらいの遠回りが必要だし、荒唐無稽すぎてかえって真実味が薄れることすらありえる。
「……そう、だな」
迷った俺は、とりあえず嘘にならない範囲で、真実を伝えることにした。
「ここだけの話、俺は〈救世の女神〉に選ばれた〈光の勇者〉を捜していたんだ」
「あ、もしかして、さっきの貴族の人が……」
フィンの言葉に、うなずく。
「ああ。〈光の勇者〉かもしれないと思っていた。……違うみたいだったけどな」
まあ、万が一があるかもしれないので、継続して調査しておいた方がいいかもしれないが、
「大丈夫です。定期的に様子を見るように頼んでおきますから」
そう思って俺がちらりとリリーに視線を向けると、リリーは先回りにするようにうなずいてみせた。
え、いや、今ので伝わるのって逆に怖くない?
「世界を救う〈光の勇者〉様かぁ。本当にいるんですかね、そんなの」
まるで他人事みたいにつぶやくフィンに、俺は苦笑する。
「一応言っておくと、フィンもその候補だったんだぞ」
「わ、わたし、ですか? あ、だからあんな変なことを?」
フィンの言葉に、俺は曖昧にうなずいておく。
「〈光の勇者〉にはほかの人間にはない特徴がある。だから今日はそれを見極めようとしていた、ということだ」
最大限にぼかした言い方だが、まあ間違ってはないだろう。
何も分からないも同然な気もするが、修行でも割と無茶振りばかりをしていた怪我の功名か、フィンは「なるほどー」という顔で普通に受け入れていた。
「それで、これからどうしますか? まだやってほしいことがあるなら、何でも言ってください」
リリーの言葉に、「え? 今何でもするって……」と言いそうになって、俺は言葉を飲み込んだ。
サービス精神が全身からにじみ出るようなリリーを見ていると、ガチで何でもやってくれそうな予感がして、ちょっと怖かったからだ。
(……しかし、これから、か)
これで「主人公」捜しは振り出し。
いや、《魔の島の少年》と《捧げられた闇の御子》の可能性が潰せただけ一歩前進、というところだろうか。
ただ、心当たりはほとんど使い果たしてしまった。
少なくとも「主人公」捜しにおいて、すぐに思いつく手がかりはない。
と、そこで俺はようやく思い出した。
「あ、そういえばフィン。アインからスカウトを受けたって……」
「ああ、あれなら断りましたよ」
「なるほ……へ?」
あまりに平然と口にされた言葉に、俺は危うく流しそうになって、慌てて聞き返す。
「まだ師匠に恩返しをしてませんし、迷惑じゃなかったら、師匠にもっと修行をつけてもらいたくて……」
「あ、ああ。別に、迷惑ってことは……」
「ほんとですか!? ありがとうございます!!」
本当に心の底から嬉しそうに、曇りのない笑顔で喜びを爆発させるフィン。
いや、うん。
そうやって喜んでくれるのは嬉しいんだが、果たして俺は今のフィンに指導なんて出来るのか?
俺は脳内で自分の今のステータスを思い返す。
――――――――――
レクス
LV 75
HP 180
MP 1290
筋力 0(F)
生命 0(F)
魔力 1200(SSS-)
精神 0(F)
敏捷 0(F)
集中 0(F)
能力合計 1200
ランク合計 22
――――――――――
俺が選んだ「純魔スタイル」は、魔力に特化する代わりにほか全てを捨てるちょっと特殊な戦闘スタイルだ。
筋力が大幅に下がるため、アクセサリで補助しないとぶっちゃけ初期装備の剣だって持てないし、仮に持ってもゴミみたいな威力しか出ないだろう。
一方で、フィンは……。
気付かれないようにこそっと、〈看破〉をかける。
――――――――――
フィン
LV 30
HP 1180
MP 135
筋力 985(SS)
生命 545(A+)
魔力 90(D+)
精神 405(A-)
敏捷 355(B+)
集中 445(A-)
能力合計 2825
ランク合計 79
――――――――――
いつのまにか、名前が「ルイン」から「フィン」になってる!
のはともかく、何度見てもとんでもないそのステータスの暴力に、顔から血の気が引いていくのを感じる。
(え、待って待って。これ、ゲーム時代に動かしてた「主人公」とか軽く超えてないか?)
正直今までは、「主人公」を鍛えるのは世界を救うために必要だというのと、自分が強くなることに夢中で、フィンの方のパワーアップにはそこまで注意を払っていなかった。
ただ、あらためて落ち着いた場面で直面してみると……。
今さらだけど、もしかして俺、勘違いからとんでもない化け物を作り出してしまったのでは?
「じゃあ師匠! 早速……」
そんな俺の焦りなんて露知らず、無自覚な怪物が口を開く。
い、いや、今までだって別に直接剣を打ち合っていた訳じゃないし、仮にフィンの剣がかすっただけで俺を百回くらい殺せる威力があったとしても、別に指導する分には関係ない。
そうは思うのだが、すっかり気おくれした俺は、反射的にこう口走っていた。
「悪い。実は俺の予定はもう、決まってるんだ」
「え? そう、なんですか?」
こうなってはもう止まれない。
本当はもう少しあとに回す予定だったが、仕方ない。
「――俺はこれから、『純魔用最強装備』を取りに行く」
別機種からの移植版とかで、明らかにほかと毛色違うキャラ追加されたりしますよね
レクスはキレてますが、ああいうのも割と好きです
あ〇らそふとさんの新作はもうクリア出来そうなので、次回更新はたぶん普通に今日の夜です!
ダン〇ョンイクサやりながらお待ちください!





