第百二十三話 陥穽
バ〇オ一周目クリアしたので遅くなりました!
細々と不満はない訳じゃなかったですが、しっかり楽しめたなと
流石に少数派だと思いますが、ほんとにバ〇オの新作ってことだけで買って情報何も入れてなかったので、エンディングムービーからのタイトルロゴで初めて諸々の意味に気付いておおーってなりました
アレはオシャレですね!
――〈弐の魔王ディブル〉。
それは、巨大な眼球に悪魔の羽がついたモンスター〈イビルアイ〉が魔王化した怪物だ。
ただでさえ強力なその呪いの力は〈魔王〉となったことによりいや増しているが、その標的は俺ではなかった。
その視線の先には、凛々しい金髪の剣士。
最愛の婚約者を背に庇って戦うその姿は、間違いなくアインのものだ。
「――光ノ王子アイン、哀レナニンゲンノ英雄ヨ! ソノ抵抗ガ徒労デアルト、ナゼ分カラヌ」
ディブルの呼びかけに呼応するように、その背後から小さな目玉の魔物〈フローティングアイ〉が無数に現れ、アインを襲う。
「くっ! 〈エアスラッシュ〉!」
アインは飛び込んでくる小さな目玉をマニュアルアーツを駆使して切り払っていくが、全てを押しとどめることは出来ない。
倒しても倒しても湧き出る魔物に、さしもの完璧王子も今はその整った顔を苦しげに歪めている。
だが、それもそのはずだ。
(――〈看破〉)
映像越しに、そのステータスを見る。
―――――――
アイン
LV 5
HP 280
MP 140
筋力 120(C-)
生命 120(C-)
魔力 120(C-)
精神 120(C-)
敏捷 120(C-)
集中 120(C-)
能力合計 720
ランク合計 42
―――――――
レベルの強制ダウンは、俺たちにだけ適用されるものじゃない。
ここに入り込んだアインとロスリットもレベルをゼロに戻された上、探索の途中で〈魔王〉に追い立てられたため、満足にレベルを上げられずに試練の最奥にまで追い込まれてしまったのだ。
いや、レベル五の時点でレベル五十のレクスの半分以上の力を持っているので決して弱いとは言えないのだが、それでも〈魔王〉を相手取るには心許ない。
それに、装備の問題もある。
アインとロスリットが身に着けているのは、〈王の試練〉のための装備。
はるか昔から〈魂の試練〉のために用意されたものが代々引き継がれているので、レベルゼロの状態からでも身に着けられるように調整されている。
不幸中の幸いとも言える部分だが、装備制限がない代わりにその性能は総じて高くはない。
これも、アインの苦戦の原因と言える。
「アイン様! 結界が完成しました!」
しかし、そこに救いの声が響く。
ロスリットの声に反応し、フローティングアイに囲まれていたアインは素早く踵を返すと、ロスリットの作った結界に走り込んだ。
その背中に向かってフローティングアイが殺到するが、見えない壁がその突撃を阻む。
「申し訳ありませんアイン様。結界を張るのに時間が……」
「ありがとう、ロスリット。君のおかげで、少し時間が稼げそうだ」
ロスリットに向かって優しい笑顔を向けたアインだったが、結界をガンガンと叩くフローティングアイたちに、ふたたび目元を険しくする。
「しかし、結界の効果も無限には続かない。何か、手を打たないと……」
つぶやくようにこぼれた言葉に反応したのは、ロスリットだった。
「……希望は、あります」
そう言ってロスリットは、俺たちの方を向いた。
「ロスリット、その魔道具は?」
王子の問いかけに、婚約者の令嬢は声を潜めて答える。
「ここの映像を、この世界の『空』に映しています。わずかな可能性かもしれませんが、もし救助隊がこの世界にやってきてくれれば、きっとこの映像を見て……」
ロスリットの答えに、アインは一瞬だけ目を見開いた。
だが、すぐにいつもの微笑みを浮かべると、
「――ロスリット、君はやっぱり最高の相棒だよ」
自然な動作でロスリットの頬に口づけて、そこで最初の映像は終わった。
※ ※ ※
映像が途切れてすぐに、ルインが俺に駆け寄ってくる。
「師匠、今のは……」
「ああ。アインたちは、〈魔王〉に追い詰められているらしい」
「そんな……」
緊迫感を強めるルインだが、俺にとってはこれも既定路線。
これは、この〈魂の試練〉で定期的に挟まれるイベントシーンだ。
そして、あれは〈魂の試練〉の残りタイムを俺たちに知らせるタイマーの役割も果たしていると言っていい。
――ゲーム的に言えば、この〈魂の試練〉のエンディングはグッドとノーマルの二種類がある。
時間内に試練を踏破して、アインと一緒に〈魔王〉を倒せればグッドエンド。
アインたちのところに辿り着く前に時間切れになった場合は、ノーマルエンドとなる。
高難易度とされているこのイベントだが、ノーマルエンドでクリアするだけなら実は簡単だ。
極端な話をすれば、〈魂の試練〉が始まっても何もせず、スタート地点で時間切れまでずっと粘ればいい。
「主人公」たちが何もしなくてもアインたちが勝手に〈魔王〉を倒してくれるため、待っているだけで試練は終わり、あの試練の入り口になっていたレリーフの上まで強制的に戻してくれる。
ただし……。
(そうなったらロスリットは死ぬし、もちろん「能力の振り直し」も出来ないんだよな)
ノーマルエンドでイベントを終えた場合は、試練達成によるボーナスは一切なし。
道中でモンスターを倒した分の経験値も無効化され、試練に入った時の状態に戻される。
だから「能力の振り直し」をするためには何が何でもアインたちに追いついて、自分の手で試練を終わらせる必要があるのだ。
「師匠、急ぎましょう!」
そんな俺の思考を読んだ訳ではないだろうが、ルインが焦った様子で俺を急かしてくる。
だが、俺はそんなルインを押し留めた。
「落ち着け。アインたちは結界があるからまだ大丈夫だ。それより、焦ってこっちが辿り着けなくなる方がまずい」
「それは……はい」
映像を空に映し出す魔道具は連続稼働が出来ないらしく、あのイベントシーンは時間を置いて全部で四回表示される。
最初、アインたちが結界を張るさっきのシーン。
二回目、結界を破壊されたアインが奮闘し、〈魔王〉が本気を出すシーン。
三回目、アインが苦戦する中で、〈魔王〉が「主人公」の存在に気付くシーン。
そして、最後。
ロスリットが自分の命を犠牲に〈魔王〉を討つ四回目のシーンだ。
早期クリアに特にメリットはないため、グッドエンドを目指す場合でも四回目のシーンさえ出現させなければいいのだが、それぞれのシーンが発生する間隔は長く、それなりの長丁場になる。
この調整がなかなか難しく、あまり探索に時間をかけすぎてしまうと救助が間に合わずにイベントが強制終了されてしまい、かといって探索をおろそかにしすぎると〈魔王〉に辿り着いた時のレベルが低くなって苦戦してしまう。
本編並みにリソース管理が重要になってくるイベントだが……。
(このイベントはゲームの時に何度もやり直した。道だってばっちり頭に入ってるし、手順も分かってる)
おまけに今回は〈魂の試練〉に突入した時期が早い。
あまりにも遅れて突入すると、試練に入った時点ですでに二回目のイベントシーンが終わった状態だったりするのだが、今回はきちんと一回目のシーンの前に間に合っている。
(失敗する要素は何もない。堅実に行こう)
俺は、ルインを落ち着かせると、ペースを乱さないように進む。
だが、なぜだろう。
全てが順調で、問題なんて何もないはずなのに……。
なぜか首筋がひりつくような嫌な予感が、いつまで経っても消えてはくれなかった。
※ ※ ※
「ルイン、〈シャドーデーモン〉だ! 厳しそうなら、俺が引きつけている間に……」
「いえ、そいつなら大丈夫です! 任せてください!」
ルインは俺にそう言葉を返すと、時間が惜しいとばかりに立ち塞がる魔物に自ら走り寄る。
そして、
「――〈オーラ斬り〉!!」
光の属性を纏った剣撃で、影の悪魔を一撃で吹き散らしてみせた。
(流石は「主人公」だな)
残念ながら、二週間と少しの修行では、ルインはマニュアルアーツを十分に使いこなせるようにはならなかった。
だが、無理にマニュアルアーツを使わなくても、ルインには強力な主人公専用スキルの〈光技〉がある。
ルインが使える〈光技〉は現在三つ。
文字通り光の剣を生み出す〈光輝の剣〉と、光の刃を飛ばす〈光刃〉。
そして、修行の間にいつの間にか覚えていたという、近距離の敵に強力な斬撃を見舞う〈オーラ斬り〉だ。
特に〈オーラ斬り〉については「魔の島の少年」用に追加されたもののようで、俺もゲームで見たことがなかったため、何だか新鮮に感じる。
とはいえ、実はよく見ると〈オーラ斬り〉の動作は光のエフェクトを除けば、同じくDLCで追加されたアーツの〈バーニング・レイブ〉の最後の一撃とほぼ同じ動きをしていたりするのだが、これはもしかしなくても手抜き……いや、詮索はするまい。
とにかく、スキルはアーツのようにマニュアル発動こそ出来ないものの、流石に「主人公」のスキルともなればその効果は絶大だ。
特に〈光技〉スキルは当然ながら全てが光属性を持っているため、闇属性の敵と〈魔王〉相手には滅法強い。
(これなら、もう少しペースを上げても大丈夫か)
まだまだ二回目のイベントシーンが始まるには時間があるが、このまま前倒しで進んでしまうのもありだろう。
そう思って、俺がルインに言葉をかけようとした瞬間だった。
「……え?」
突如として赤い空に、映像が映し出される。
それは、結界を破壊されたアインが、大量のフローティングアイと切り結ぶ光景。
「ありえ、ない……!」
このイベントは何度もやり直して、シーンの間隔も分かっている。
まだ半分も時間は経っていないはずだ。
それでも、現実は変わらない。
呆然と空を見上げる俺の目の前で、早すぎる二回目のイベントシーンが始まろうとしていた。
アクシデントに愛されすぎてる男
マーセナリーズにはまらなければ明日更新です!!
と、とま……とまるんじゃ……





