表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君の愛は、美しかった  作者: つこさん。


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

45/61

第四十四夜 『あなたの望まれる通りに』

 


 密な行き来を絶やさずに、ユリアンとオティーリエはイルクナーからシャファトに戻った。



 マインラートの弁護を正式にヨーナスへと依頼できた上、イルクナーに関する疑義は冬季休暇期間中は凍結する。

 そして父ヨーゼフと母ロスヴィータがシャファトの領地へと向かった。

 王都邸を空にしないためにも戻る必要があった。




 社交に関する物事を扱わなくていいという冬は、ユリアンにとっては成人してから初めてで、ここまで穏やかな時間を過ごせるのも初めてのことかもしれなかった。

「新婚生活を堪能しろ」と父には言われたが、どこか心ここにあらずのオティーリエの指先は温まらない。




 以前のように微笑むようにもなったし、二人きりのときは甘い時間も過ごす。

 けれどふと気付くと、どこか遠くを見るように、オティーリエは視線をさまよわせていた。

 それは、まだ泣けていないことと関係があるだろうか。

 ユリアンはその髪を撫でる。




 表面上は穏やかに時が過ぎた。




 年末に差し掛かり、宿直当番の官吏も半分ほどになって朝廷が手薄になった頃、その報せは届いた。




 朝廷内で、指名手配中の容疑者らに国境の通行を秘密裏に支援することを約束する手紙が、モーリッツ氏の署名で見つかったということだった。




 ****




 ユリアンはもうどんな些末な事柄もオティーリエの耳に入れたくない気持ちだった。


 しかし握り潰すには大きすぎる事案だ。

 リーナス直々に弁護士のヨーナスの元へと走らせる。

 一時間もせずに共に戻ってきた。




 それですぐにばれてしまう。




「また、なにかあったのですね?」




 ユリアンは答えた。




「話せる状況になったら話す」




 夕食はオティーリエと共に取ったが、その後はヨーナスと共に書斎にこもった。

 もの問う瞳のオティーリエに、気付かぬふりをして。



 互いに必要各所への手紙を飛ばす。




「手紙の真贋鑑定は休暇明けでしょうね」




 面白くなさそうにヨーナスが呟いた。



「君に負担を掛けてしまい、申し訳なく思っている」


 年末年始をシャファトで過ごすことになってしまったことを詫びると、ヨーナスはにやりとした。




「こちとら独り者ですよ。

 こちらに居た方が燃料費もかからず、美味いものが食えるってもんです」




 気遣いの言葉に、ユリアンはグラスを取って蒸留酒を注いだ。




 ****




 深夜にマインラートがやって来た。

 先触れを出して迎えに行かせたのだ。



 その瞳はとても澄んでいた。

 どこか近頃のオティーリエのようで、ユリアンは言い知れぬ危機感を抱いた。



 しかし話さねばならないことは山積している。

 淡々と三人の会合は続いた。

 明け方まで話し込んで、オティーリエに悟られぬように音もなくマインラートは帰って行った。




 何もできない、何も。

 けれど何か為さねばならない、何かを。




 あと一カ月の休暇を残して、最悪の事態を想定した、ユリアンたちの悪足掻きは続く。




 年が明ければ、宮廷舞踏会(ホーフバル)だ。


 ユリアンは黒い革鞄を見る。



 そしてホルンガッハー氏に、手紙を書いた。




『お預かりのもの、こちらの人間に見せても良いでしょうか』



 返信はすぐに来た。




『あなたの望まれる通りに』



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

別視点

わたしの素敵な王子様。

本編

いねむりひめとおにいさま

【閲覧ご注意ください・イメージを損なう恐れがあります】君の愛は、美しかった・登場人物イメージ

君の愛は、美しかった・登場人物イメージ(活動報告ページへ飛びます) script?guid=onscript?guid=on
― 新着の感想 ―
[良い点] 結婚式の所は正直泣きました。 辛い状況の中でも人の優しさにふれて、強い想いに励まされて。それでもやっぱりどこか悔しさもあって。 まるで家族の一人になったように、泣きました。 本当にこの後…
[良い点] あああああ 辛いつらいつらいつらい もうやめて!私のHPは…… うわーん! いやまだだ、まだ終わらんよ…… 頼りにしてるぞよーなすぅ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ