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パンと弾丸とダンジョンと  Ꮚ・ω・Ꮚメー(パンは銃より強くておいしい)  作者:
池袋西口地上戦

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66/81

Ꮚ・ω・Ꮚメー(66:変なフラグが)

 メー!(命中!)


 群馬ダークに建築スキルで設置して貰った狙撃用の塔の上。

 グレーターグリフォンに貰ったマスケット、グレーターグロウルにスコープを付けての長距離射撃は成功したようです。

 ターゲットであるガスマスクの怪人は狙撃に気付いたような反応をしていましたが、皆頃シオンにもらった捕縛用の粘糸弾の炸裂機能に助けられました。

 一発ずつ先込めをしないといけないのは面倒ですが、銃身に入るものならなんでも飛ばせてしまうのが、グレーターグロウルの面白いところです。

 銃声は大きく、サイレンサーなどの装着も不可能ですが、今回は銃声の大きさはプラスに働いたようです。

 ガスマスクの怪人の周囲にいるサイキョー連合の構成員たちは、ぎょっとしたように動きを止め、周囲を見回しました。

 いいタイミングです。


「発破を」


 私と一緒に塔にいる群馬ダークにそう告げます。

「了解」と応じた群馬ダークは、インカムを使い皆頃シスターズ、背脂所長に声を飛ばしました。


「咆哮仕掛けます。全員耳に気を付けて! 三、二、一、ゼロ!」


 カウント終了から少しだけ、微妙に間の抜けた空白が入り――さらなる轟音が一帯を揺るがしました。

 グレーターグロウルの銃声が穏やかに思えるほどの大音声。

 音と言うより地鳴りや衝撃波を思わせる轟音の正体は群馬ダークが良く肩に乗せているマンドラゴラの大絶叫です。

 マンドラゴラの絶叫を聞くと人が死ぬ、と言う伝説があるそうですが、群馬ダークのマンドラゴラの場合はそこまでの殺傷力は無く、ただとにかく、破壊的に音量が大きいことが特徴だそうです。

 声の発生源は、皆頃シスターズと埼京連合の構成員達が対面している広場の真ん中。

 粘糸弾で動きを止めたガスマスクの怪人の目の前で、地面から顔を出し、大絶叫を放った恰好です。

 目的は超大音量による足止めの他、もう一つ。

 衝撃波めいた大音声で地表に亀裂が走り、地面が硬さを喪います。

 構成員達の足が、砂漠の流砂に呑まれるように地面に沈みはじめました。


「な、なんだっ!」


「魔法か!」


「あのモンスターだ!」


「おい! 誰か撃て!」


 砂に足を取られた男達は、マンドラゴラ目掛けて攻撃をかけようとしますが。


 ゴゲッ!


 役目を終えたマンドラゴラは、さっと地中に消えてしまいました。


「まちやがれ!」


「クソが!」


「いいから撃て! 見えてる奴から潰せっ!」


 逃げたマンドラゴラから、目の前の皆頃シスターズに意識を戻して、再び攻撃を仕掛けようとする男達ですが。


「いくらなんでも烏合の衆すぎッスよ」


「これでチェックです」


 二人同時に片手を突き出した皆頃シスターズは、皆頃シオンの掌から白い光のような糸の弾幕を、皆頃シエルの指先から青い稲妻を生じさせ、男達へと叩き込みました。

 皆頃シオンの糸は扇状に広がって冒険者達を絡め取り、そこに撃ち込まれた稲妻は糸を伝導体として駆け回り、標的の意識と戦闘力をことごとく奪い去りました。


「おおー、コラボ技大成功っス。ナイスー」


 放電を終えた皆頃シエルが明るい調子で言いました。

 広場の地面が流砂のようになったのは、群馬ダークの建築スキルで広場の下の地盤を空気を多く含んだ砂礫に置き換え、砂の落とし穴に変えていた為です。

 カモフラージュのため薄く残しておいた地表部分をマンドラゴラの咆哮で粉砕。足をとられたところに投網のように糸を投げ、最後に電流を流すことで戦闘力を奪い去るという流れになります。


「やった?」


 群馬ダークが通信越しに呟きました。


「やったと思うッスけど、そういう台詞を吐くと変なフラグが……あ……」


 皆頃シエルが気になる声をあげました。


「どうかしましたか?」


「あのガスマスク野郎、服切り破って中身が逃げてるッス……」


「爆神暴鬼の身柄は?」


「保護できた」


 裏から回り込んでいた背脂所長の声が無線に入って来ました。

 爆神暴鬼のところには二人ほどの男が向かって行っていましたが、スラコンの攻撃を浴びてノックアウトされたようです。


「問題は逃げたひとりですね。所在を知覚できません」


「逃げてくれてるならいいんスけど。近くにスニーキングしてそうですげーイヤっス……」


 皆頃シスターズが周囲に警戒の目を向けますが、やはり発見できないようです。

 私の索敵スキルにも引っかかりません。


 メー(だめだな、ここからも何も見えない)


「どないする? このまま引き上げる感じ?」


「そうですね」


 姿を消したガスマスクの怪人の動きが気になりますが、この様子だと警戒しつつ後退するくらいしか選択肢がなさそうです。

 そう応じた時、少し、呼吸が浅くなっていることに気付きました。

 緊張状態。

 こういう感覚があるときは、大抵――。


「伏せてください!」


 群馬ダークにそう警告しながら、腰に付けていた拳銃……では無理そうなものが見えたので、アイテムボックスからシャークトゥースシャベルを出しました。

 なにが飛んできたのかというと、エンジンが掛かって高速回転するチェーンソーです。

 下手によけても今度は近くを暴れ回って大惨事になりそうな物体でした。

 通常の装備品では対応が難しいところでしたが、シャークトゥースシャベルは東京大迷宮でも数少ないエピッククラスの装備品です。長さ二メートルに達する水の刃を瞬時に形成し、恐ろしい音を立てるチェーンソーを空中で両断し、爆発させました。


 メメェ?(チェーンソーを、投擲してきた……?)

 メエェ!(また来るぞ! 十時方向!)

 

 回転鋸と言うより、それ自体がぐるぐる回る円盤のような残像を見せながら、二本目のチェーンソーが飛んできます。

 今度はシャークトゥースシャベルではなく、手早く装填したグレーターグロウルの粘糸弾で迎撃しました。

今度はうまく回転刃を止め、塔の下に落とすことができましたが……。


 どごぉん!


 お腹に響く爆音がして、黒煙が立ち上りました


 メメェ(爆薬付きだと……)

 メエェ(なんてデタラメな……)


 チェーンソーに爆薬と起爆装置を仕込んであったようです。

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