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パンと弾丸とダンジョンと  Ꮚ・ω・Ꮚメー(パンは銃より強くておいしい)  作者:
暴神チャンネル

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62/81

Ꮚ・ω・Ꮚメー(62:内藤レン)

 外で待っていた群馬ダークたちと合流し、池袋駅のゲート前に足を運ぶと、想像通りの人影がベンチで待っていました。


「私が声をかけてきます」


 今居るメンバーの中で、一番関係が深いのは私でしょう。従魔石から出したバロメッツたちと一緒に近づいて「背脂先生」と声をかけました。


「待ち合わせですか?」


「嗅ぎつけられたか。IRKか」


 テケー。


 誤魔化すつもりもないようです。背脂所長はいつも通りの調子で言い、傍らのスラコンがのどかな調子で鳴きました。

 IRKと接点があることも把握されていたようです。


「はい」


「何か喰うものは?」


「これでどうでしょうか」


 さっき配ったショートブレッドがまた残っています。


「もらおう」


 ザクザク。


 ホロホロ。


 テケテケ。


 背脂所長とスラコンはキラキラと発光しながらショートブレッドの残りを平らげて行きました。

『10,000PPが振り込まれました』とのメッセージが前置きもなく表示されます。


「やはり旨い。炭水化物の妖精だな」


「変な呼称を増やさないでいただけると助かります」


「爆神暴鬼の正体は、どこまで把握している?」


 苦情は流されてしまいました。


「本名と経歴、埼京連合が動いているというあたりまでは」


「そうか」


 自分のアイテムボックスから出したマカロンをひとつ口に放り込み、ざくざくと噛み砕いた背脂所長は、面白くもなさそうな調子で続けました。


「私の本名は内藤ないとうレンという。シュバリエの創業者である内藤本家の一人でな。爆神暴鬼、本名千堂若子とはシュバリエ主催のパーティーなどで多少接点があった。親しいというわけでもないが、千堂若子が爆神暴鬼になったきっかけのひとつは、本家の勢力争いが招いたテロ事件だ。内藤本家の人間として、ただのバカとして見殺しにするべきではないと判断した」


 メー(更生の機会を?)


「生きる権利を奪われるほどの罪は犯していない」


「そうですね」


 群馬ダークや『ダンジョンエクストリーム』の被害を考えると謝って欲しいとは思いますが、死んで償え、というレベルの話でもないでしょう。

 離れて待っていた群馬ダークと皆頃シスターズを呼び寄せ、改めて状況を説明すると、背脂所長はスラコンの背中から大きな機械の塊を取り出しました。

 テレビの撮影に使うカメラのようです。

 黎明放送、という社名ロゴのステッカーが貼られています。


「黎明放送のカメラ?」


 群馬ダークの言葉に、背脂所長は「そうだ」と応じます。


「怪しげな連中が研究所の敷地近くでなにか探し回っていてな。追い払って調べてみたら見つかった。例の『勇者様vs聖女様vs追放者』の収録に使われていたもののようだが、興味深い場面が映っていてな。再生を」


 テケー。


 スラコンの体の上に動画再生用のウィンドウが現れ、若い冒険者達の姿が映し出されました。

 多摩丘陵の山中、背脂研究所近くに設置された野営地のようです。

 四人ずつ三グループに分かれた一二人の冒険者と、司会者らしい男女の姿が映っています。


「それでは、今回のクエストを発表します!」


 司会者二人が高らかに宣言しました。


「勇者様、聖女様、追放者の三パーティー合同でのレイド級モンスター、グレーターグリフォン、アークシャークの捜索と討伐クエストです! 先日多摩丘陵エリアで目撃されたレイド級モンスター、グレーターグリフォン、アークシャークを捜索し、討伐していただきます」


「さすがに三パーティーばらばらでの攻略は困難ですので、今回は三パーティー合同での共同クエストとさせていただきます。グレーターグリフォン、アークシャークを最初に発見したパーティーにはそれぞれ2ポイント、グレーターグリフォン、アークシャークのいずれかに止めを刺したパーティーには3ポイント。さらにグレーターグリフォン、アークシャーク戦での活躍に応じて、合計10ポイントが各パーティーに割り振られます」


「なお、今回は共同クエストとなりますので、クエスト失敗時にはマイナス10ポイントの戦犯ポイントを割り振らせていただきます。他のパーティーの足を引っぱる行為は自分の首を絞めることになりますのでご注意ください!」


「更に今回は、当番組の名物プロデューサーにしてエピック級カタフラクトの石動プロデューサーが戦闘に参加し、火力支援を行います。伝説のS級冒険者として知られる石動プロデューサーの力をどう生かして立ち回るかが攻略の鍵となるでしょう!」


 重厚な鎧に盾、長大な槍を携えた中年冒険者が映し出されました。

『勇者様vs聖女様vs追放者』のプロデューサー、石動新がそこにいました。

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