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パンと弾丸とダンジョンと  Ꮚ・ω・Ꮚメー(パンは銃より強くておいしい)  作者:
暴神チャンネル

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55/81

Ꮚ・ω・Ꮚメー(55:相談をしよう)

 爆神チャンネルの動画を見終わると、皆頃シスターズからも連絡が入り、顔を合わせて相談をしようということになりました。

 冒険者センタービル高層のレストラン街で待ち合わせをし、まず例のメカクレ帽で変装をした皆頃シスターズと落ち合いました。

 羽が生えていたり下半身が蜘蛛だったりすると変装もなにもないのですが、普通の人間の姿に変身しています。

 私もメカクレ帽を被っていたのですが、メカクレ帽が三人で群馬ダークを待っていると不審なことこの上ないので、皆頃シオンと二人で先にお店に入って待つことになりました。

 いわゆる中華料理店の個室ですが、初めて入るタイプのお店です。

 一応総合料理スキルの御陰でどういうものかはわかりますが、実際に食べたことのない料理ばかりがずらずらと並んでいます。

 世界レベルでみても一流レベルのお店だそうで、お値段も相当です。

 他所様のことを言える立場では決してありませんが。


「なにを頼んでいいのかわかりません」


 メェ (好きなものを頼むといい)

 メメェ(代金は東京大迷宮が持つ)


 バロメッツ達が勝手なことを言いました。


「とりあえずメニューを端から全部試して見ましょう」


 皆頃シオンも慌てるどころか、甘い笑顔で同調します。


「推しの血肉になるなら惜しいものなんてなにもありません」


 なにかの冗談かと思いましたが、本気の表情でした。

 さすがに端から全部は遠慮させていただき、一度食べてみたかった小籠包や胡麻団子などを注文し、花の沈んだジャスミンの工芸茶などを飲んでいると、皆頃シエルに連れられて、見覚えのない女性が姿を見せました。

 黒髪に三つ編み、優しげな顔立ちに眼鏡をかけています。

 どこかで会ったような気がしますが、どこで会ったのか思い出せません。

 私の方を見た女性は覚えのある声と表情で「見せるの初めてやったね」と言うと、ウィンドウを開いて何か操作をしました。

 黒髪の女性の姿が、見慣れたダークエルフの群馬ダークのものに変化しました。


「変装代わりに容姿補正切っとったんよ。さっきのが素の顔。配信映えせんから全然戻さんけど」

「素でも十分通用すると思うッス」

「あれで配信映えしないということになったらアイドル系配信者は壊滅します」


 皆頃シエルと皆頃シオンが真顔で言いました。

 そんなやり取りを経て、本題に入ります。

 謝罪などについては事前のチャットなどで一通り終了しているので省略します。

 最初に私とバロメッツたちがグレーターグリフォンやアークシャークの姿をドンレミ農場の配信に乱入させてしまったことも原因のひとつではないかと思ったのですが、四人のチャットに流してみたところ『遠因過ぎるて』『ややこしくなるので黙っていてください』と流されてしまいました。


「農場の状況はどうでしょうか?」


 皆頃シオンが群馬ダークに確認します。


「ライブカメラのチャットが少し荒らされましたが、うちのサイトは全部ダンジョンネット内なので直接的な誹謗中傷などはありません。例の暴露系配信者の動画に関するほのめかしや質問のコメントが来る程度です」


 ダンジョンネットのサイトは閲覧だけならインターネット経由などでもできますが、チャットなどに書き込みをするには冒険者登録が必要で、誹謗中傷などの書き込みは厳しく制限されています。


「ショップの売り上げは『ダンジョンエクストリーム』出演の宣伝効果と重なっているから、影響が出ているのかどうかの判断はできていません。個人的には、インターネットの方が問題ですね。匿名掲示板などに誹謗中傷や個人情報の類が書き込まれているようです」


 群馬ダークの回答を受けた皆頃シスターズは改めて「ご迷惑をおかけして申し訳ありません」と頭を下げました。


「例の爆神チャンネルについてはプロバイダに通告を行い、既にアーカイブ削除、アカウント停止状態となっています。第三者による転載や、動画の一部を編集した切り抜き動画、後追いの便乗動画などの投稿は続いていますが、東京大迷宮側で監視し、随時対応を行っています。群馬ダークさんの個人情報については、ダンジョンネット上からは完全削除とNG化を完了。拡散に関与したユーザーへの警告とペナルティの付与を行っています」


 ダンジョンネットは東京大迷宮が一元管理しているので、このあたりの対応は容易だそうです。


「インターネットについては情報が拡散されたプロバイダへの削除要求やダンジョンネットからの接続遮断といった対応を進めています。複数の人間やプロバイダを相手にした手続きになりますので、ダンジョンネットに比べると時間がかかってしまっていますが、情報拡散は徹底的に封じ込めていく方針です」


「ありがとうございます。よろしくお願いします。ソルちゃんのほうは大丈夫?」


 群馬ダークは私に話を振りました。


「はい、ちょっとエザゴーチ……を?」


 何か間違ったことを言っている気がします。


「エゴサーチ?」


「それでした。エゴサーチをしてみたんですが、パンが高いとか薬でも入ってるんじゃないかって話があったくらいです。個人情報などの問題はないと思います」


「こちらでもチェックをしていますが、過去の個人情報はもちろん、現在のソル・ハドソンという冒険者名も露出していないようです」


 皆頃シオンがそう付け足しました。


 メェ (人目に付くところで活動をしていないからな)

 メメェ(パンやケーキを作って売って、あとは食材を狩る程度か)

 メエェ(交流相手もここにいる連中でほぼ全員)


 世捨て人のような日常を送っています。


「パンに薬の件については……ちょっと失礼します」


 皆頃シオンはウィンドウを開いて何かのリストをチェックします。


「先ほど広報局で確認して、誹謗中傷として削除・警告対応済みですね。バザールで販売しているアイテムに薬物入りのものがある、というのはシステム上ありえませんし、バザールそのものへの誹謗中傷になりますので、風評被害が広がる危険はないと思います」


 ここで話している間にも対応が進んでいるようです。


「他にも気になることがあれば、言っていただければすぐ対応させていただきます」


「ありがとうございます」


 今のところ私のことより、群馬ダークや『ダンジョンエクストリーム』が炎上に巻き込まれている状況のほうが心配ですが。

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