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パンと弾丸とダンジョンと  Ꮚ・ω・Ꮚメー(パンは銃より強くておいしい)  作者:
ダンジョンエクストリーム

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32/81

Ꮚ・ω・Ꮚメー(32:背脂所長のオーダー)

 東京大迷宮にやってきて約二十日。

 三度目の検査のために背脂研究所を訪れた私は、手土産に群馬聖のホールケーキを持って行きました。

 群馬ダークからドンレミ農場の顧客に群馬聖のケーキを販売したいという相談を受けて焼きあげたものです。

 食事効果の関係でひどい高額ケーキになっていたのですが、売れ行きは好調で二次生産分までほぼ完売、三次生産の要望も来ているそうです。

 残念ながら材料の群馬聖がもうないので、今年度分は生産終了ということになりましたが。


「やはり君の仕事か」


 群馬聖のケーキを四分の一に切り分けて半分をアイテムボックスに収納、ひとつをスラコンに、のこりひとつを手元に置いてフォークを突き立てた背脂先生は妙に重々しい調子でそんな台詞を口にしました。

 スラコンが発光を始めたのは食事効果でしょう。


「どういう意味でしょう?」

「スイーツ界隈で話題になっている。東京大迷宮に天才パティシエが現れたとな」

「パティシエですか」


 クラスでいうとベーカーなのですが。

 そんなやり取りをしてから再び採血、CTなどの検査を受けました。


 結果は、


「見事な健康体だな。資料価値が全く見いだせん」


 とのことでした。

 食事効果でアンデッド病が完治してしまうというのは、医学的に異常過ぎて参考にできないようです。

 私の体よりパンを分析した方が得るものがありそうですが、最初のプチフランス以降、エピッククラスのパンやお菓子は焼けていません。


「そろそろ用済みでいいと思うが、念の為もう一週血液検査をしておこう。来週の同じ時間にもう一度来てくれ」

「はい」

「それと、ひとつ作って欲しいものがある」


 背脂所長は、スラコンを使って一枚のウィンドウを空中に浮かべます。

 コックパッドの画面のようです。

 見慣れない料理の写真とレシピが表示されていました。


「チミチャンガ、ですか」


 トルティーヤで具材を巻き、油で揚げた、春巻きに似たメキシコ系料理。

 ベーカークラス取得時に手に入れた知識があるのでどういうものかはわかりますが、本物に接したことはありません。


「そうだ。子供の頃に屋敷の料理人が作ってくれていたが、東京大迷宮に来てからは口にする機会が無くてな。君ならば、私の舌を唸らせるものを作ることができると思ってな」


 そんな感じはしていましたが、背脂先生はどこかのご令嬢のようです。


「作ること自体はできると思います。期限はありますか?」

「来週の検査の時に持ってくることは?」

「大丈夫だと思います」

「ではそれで頼もう。前金と材料費として十万PP入れておく、成功の暁にはもう十万PP支払おう」

「さすがに高額すぎませんか?」

「天井額を決めるための設定だ。レア料理やエピック料理を作られた日には十万二十万では収まらんことになりかねん」


 確かに現状では、最低取り引き価格の高いものを作るより最低取り引き価格の低いものを作る方が難しい状態が続いています。


「わかりました、レシピはこちらを使えば?」

「君に任せる。当時のレシピがあればそれがベストだったが、資料が残っていない」

「わかりました。こちらでも考えて見ます」


 そう請け負った私は、帰りがけに背脂研究所の近くにいたアークシャークとグレーターグリフォンに魚を沢山いれたスターゲイジーパイとワイルドボアのミートパイを渡し、


 シャーク!


 グリー!


 青い珊瑚の枝らしいものと、金色に光る木の枝を一本ずつもらいました。

 星石などと違い、鑑定しないと詳細はわからないようですが、私の鑑定スキルは食材用です。


「なんに使うんでしょうか」


 どちらも高く売れそうですが、なにも考えずに手放していいものではないような気もします。


 メェ (我々ではわからないな)

 メエェ(プロフェッサー背脂ならわかるかも知れないが)

 メメェ(鑑定だけのために戻るのもな)


「来週来たとき相談してみましょう」


 青い珊瑚の枝と木の枝をアイテムボックスに入れ、アークシャークとグレーターグリフォンに別れを告げると、今日も山道を歩いて生産村の方向に向かいました。

 今回は遭難したマンドラゴラに遭遇するようなこともなく、群馬ダークのドンレミ農場までやってきました。

 群馬ダーク本人にアポイントは取っていませんが、ログハウス風の建物の中に、マンドラゴラが店番をする野菜の販売所があります。


「こんにちは」


 ゴゲー。


 背脂所長に頼まれたチミチャンガの材料としてタマネギなどの野菜を買い入れていると、マンドラゴラから連絡が行ったのか、群馬ダークが顔を見せました。


「お、ほんとに来とった。いらっしゃい。どうしたん?」

「ちょっと作りたいものがありまして」


 背脂所長に渡されたチミチャンガのレシピを見せて相談をしてみると、具に使うトマトやタマネギ、大豆などを用立ててもらえました。

 大豆などはドンレミ農場では栽培していないのですが、提携している農場との間で作物を融通し合って販売所で売っているようです。交通の便が良いとはいえない立地ですが、バザールとも連動しているそうで、ピコピコという決済音が時折鳴って、販売所の野菜が消えていったりしています。

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