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パンと弾丸とダンジョンと  Ꮚ・ω・Ꮚメー(パンは銃より強くておいしい)  作者:
多摩丘陵の群馬さん

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30/81

Ꮚ・ω・Ꮚメメメー(30:ドンレミ農場チャンネル動画アーカイブより 【新桃】群馬聖のケーキをいただきました))

「こちらです」


 カメラの死角に出しておいたケーキを見える場所へと移す。


<パイ? ケーキ?>

<やべぇ、うまそう>

<急な飯テロやめろ>

<鬼畜!>


「飯テロもなにもさっきまで美味しい桃のシャーベットの動画を配信していたんですが……」


 カメラにじとっとした目を向けると、


<圧来た>

<ごめんなさい>

<最初から飯テロでした>

<猛省いたします>


 とコメントが戻って来た。

 いつものやり取りなので、そのまま話を進めていく。


「とりあえず説明させてもらうと、実は、昨日の大雨でわさび田のマンドラゴラが流されとって、たまたま通りすがった冒険者が助けてくれたんです。それで、お礼のつもりで群馬聖を渡したら……こんな姿で戻ってきました」


<群馬聖を焼いたのか>

<チャレンジャーだな>

<無茶しやがって>

<でも大成功してるっぽい>

<ガチのパティシエ?>

<すげぇ美味そう>

<鑑定データはどんな感じ?>


「生産者さんの個人情報とか鑑定データとかはNGなんやけど……色んな意味でやべーブツであるのは間違いないと思います。もう匂いとかヤバい。飯テロ的な意味で死にそう」


<企業案件だったりする?>

<仕込みの匂いがするぜ>


 そんなコメントも飛んできたが、相手にせずにフォークを手に取った。


「では早速、実食してみようと思います」


<目がガンギマってやがる>

<後世にいう飯テロ大虐殺の始まりであった>


「ではいただきます、ほんとに飯テロになりそうな気がするから、皆さんも気をしっかり持っておいてください……行きます!」


 ケーキには小さなケースに入った生クリームが添えられていたが、まずは使わずにフォークを押しつける。

 表面のカラメルが心地よい音を立て、ソテーされた群馬聖の果肉とスポンジの間を、フォークをすっと通り抜ける。


<あかん……>

<やべぇ、これ……>

<見た目と音だけでダメージが来る>

<飯テロに屈するわけには!>

<なんか断面変だぞ、果肉も生地も全然潰れてなかった。どんな刃物でカットしたらこんなことに>

<そういうスキルなんだろうけど、マジでやべぇやつの仕事じゃね?>

<飯テロには勝てなかったよ……>

<あれ、これ、ASMRじゃあないはずなのに……?>

<うわあああああーーー……>

<やめてくれ>

<脳を破壊されるぅっ!>


 飛んでくるコメントに目を通す余裕はもうなかった。

 カラメルでコートされた群馬聖とその下のスポンジをまとめてフォークでとり、口へと運んだ群馬ダークは、そのまま息を止め、目を見開いた。


<大丈夫か?>

<もぐもぐ助かる>

<どうした?>

<食レポはよ>

<美味いぞビームそう?>


「……かん」


 スポンジやカラメルは口の中でほどけてなくなり、美しく焼き上げられた群馬聖の果肉を呑み込んだ群馬ダークは、どうにかそれだけ口にした。


「あかん……人は本当にあかんやつを喰わされるとあかんとしか言えなくなる……」


<語彙力の問題では>

<美味いか不味いかで言うと?>


「魂抜けて頭から宇宙ネコ生えてきた感じ」


<スイーツの食レポで宇宙ネコを生やすな>

<草生えるwww>


「いや、ほんと、語彙力追いつかないんやってこれ」


 苦笑してそう応じた群馬ダークの頬を、涙が一筋伝い落ちた。


「あれ?」


<どうした?>

<言い過ぎた>

<慰謝料:50,000PP>


「あ、ううん、そうじゃなくて、ごめんなさい……慰謝料ありがとうございます。慰謝料高!」


<香典:3,000PP>


「香典ありがとうございます。死んでません。いや、そういうのじゃなくて、なんか、美味しすぎて壊れる、情緒……うぅ……にゃー」


 そのまま二口目を口に入れ、あむあむと咀嚼した群馬ダークは、今度は「ふへへ」と笑い声を漏らしたり「むぇ」と唸って十秒以上動きを止めたりしながらケーキを崩して行き、


「……ないなった」


 そんな悲痛な声をあげた。

 二ピースあったケーキが両方、いつの間にか消滅している。


<こんな絶望的な目してる農場長はじめて見た>

<病み顔かわいい>

<配信普通に忘れてたな>

<情緒破壊ケーキ>

<結構サイズあったのにあっと言う間だったな>

<食べてみたい>


「失礼しました。あかん、また情緒壊れとった……本当にあかんやつやった……なにこれ」


 ケーキが姿を消した皿を見下ろして呟き、容器に少し残っていた生クリームを舐める。


「あかん、止まらん」


<容器舐めそう>


「舐めへん……おいしい」


<食べたい>


「私もまた食べたい。もっと大きいの焼いてもらえんか相談してみる」


 どこまで商売気があるのかはわからないが、バザールへの出品などは普通にやっているようなことを言っていた。

 交渉の余地はあるはずだ。

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