Ꮚ・ω・Ꮚメー(19:マカロンを焼く)
東京大迷宮にやってきて七日目。
午後からは例のアンデッド因子感染症研究施設を訪ねる予定ですが、午前中はやることがないので、マカロンを焼いてみることにしました。
砂糖とアーモンドの粉、メレンゲを混ぜた生地を小さなドーム状に焼き上げたものを二枚作り、その間にクリームをはさんだお菓子です。
奨学兵時代に警護した武装企業の重役夫人に配られて、一度だけ食べたことがあります。
抹茶、レモン、イチゴなどバリエーションがあるようですが今回はチョコレートとココアパウダーを使ったマカロンショコラ。
場所は今回もレンタルキッチン。
ホームエリアに調理器具を用意するよりこちらのほうが楽ですし、窓があるので開放感があります。
時々近くをドラゴンが飛んでいったりもしますが。
まず生地の下準備として粉砂糖とアーモンド粉、ココアパウダー、卵白を混ぜ合わせます。
次は粉を固めるためのメレンゲ作り。グラニュー糖と水を鍋に入れて煮詰めます。
普通はコンロを使いますが、熱量制御スキルがあるので直接加熱しました。
メェ (百十八度)
メエェ(随分高熱になる)
メメェ(水溶液だからな)
泡立てた卵白を入れ、さらに泡立てて続けると、メレンゲのできあがりです。
ボウルに移して粗熱を取り、下準備で作った卵白入りの粉と少しずつ混ぜ合わせて行きます。このときヘラで生地をすり潰すようにして空気量を調整することをマカロナージュといいうそうです。
このあたりが名前の由来のようです。
出来上がった生地を絞り袋に入れ、クッキングシートを敷いた天板の上に直径三センチの大きさで絞り出します。
次は三十分から一時間程度置いて表面を乾かします。
軽く触れても指につかない程度が目安ですが、今回も発酵・熟成用アイテムボックスの機能を使ってショートカットしました。
続いて焼成。
予熱をしたオーブンに十分から十五分ほど入れて焼き上げます。
これもショートカットが可能ですが、今回は普通に焼いて、その間にマカロンの間にはさむフィリングを作ります。
生クリームを沸騰しない程度に加熱、チョコレートと混ぜ合わせてガナッシュクリームを作ります。
このあたりも熱量制御スキルがあるので簡単でした。
マカロンの生地の下の方が少し膨らみ、上に伸びた状態を足が立つと言って、ちょうどいい焼き上がりになります。
オーブンから出した生地から粗熱を取り、冷ましたガナッシュクリームを挟んで完成です。
数は全部で三十個。
クリームを挟む作業はバロメッツたちに手伝ってもらいました。
完成と同時に、例の白い発光現象が起こっています。
鑑定してみると、
歯触りのよいマカロンショコラ
レアリティ :レア
品質 :最高
食事効果 :メンタル1段階回復
メンタルガード(中・2時間)
ジュル (メンタルガードは精神攻撃を防ぐ)
ジュルル(恐怖や睡眠、混乱の大半を無効化できる)
ジュルリ(見ているだけで精神攻撃を受けている気分だが)
「食べてみましょうか」
この状態が続くとバロメッツたちのメンタルのほうが削られてしまいそうです。
メェ! (その言葉を待っていた)
メエェ!(準備は万端だ)
メメェ!(ティータイムをはじめよう!)
おかしなテンションで叫んだバロメッツ達は、どこからかティーセットを用意すると、完成したマカロンを並べ、私を席に着かせました。
メェ (今日の茶葉はキャンディだ)
メエェ(スリランカの茶葉だ)
「いつの間にそんなものを?」
メメェ(英国紳士として当然のたしなみさ)
バロメッツと英国紳士にどういう関わりがあるのかよくわかりません。
シャーロック・ホームズから名前をつけたくらいの接点しかないはずなのですが。
ともかく紅茶を淹れてもらい、マカロンを口に運びます。
口にするのはこれで二回目、前回は奨学兵団での任務中に湿気ったものを食べたので、『?』という感想で終わってしまいましたが、 今回は焼きたてですので、歯触りが良く香ばしさを感じます。
ザクザクメー!(絶妙な歯触り!)
モチモチメー!(メレンゲとアーモンドプードルの織りなす魅惑の食感!)
アマアマメー!(口の中で繊細にほどけてとろける!)
一緒にマカロンをかじったバロメッツたちが今回も食レポをしてくれています。
ゴクゴクメー!(紅茶がいくらでも進む!)
モグモグメー!(まさに英国紳士の本懐!)
ウマウマメー!(大英帝国万歳!)
マカロンはフランスのお菓子ですが、指摘出来る勢いではありませんでした。
今回焼き上げたマカロンショコラは三十個、うち十二個は今回のティータイムで食べてしまいました。
バラ売りで八個をバザールに出し、残り十個はアイテムボックスにストックしておきました。
「そろそろ行きましょうか」
午後からは外出です。
レンタルキッチンを片付け、冒険者センタービル内にある転移ゲートへと向かいました。




