第九十六話 シールコンボ・序の巻
死神の指輪を右手人差し指に装備し、痣を右手から頭まで立ち昇らせる。
目に見えるほどの赤き魔力を身に纏い、空気を唸らせ全速で突っ込む。
「この速度は――!?
ちいいいいぃぃぃぃ!!」
壁のように設置された高密度の煙の壁。
壁を殴って壊し、速度を落とさず前に進む。
「色装“橙”、《カプノス・ドミナートル》!」
奴は煙に黄魔を纏わせ、自分で吸い込んだ。
自分に対する色装……オレが以前にやっていたのとそう変わらないな。
――もう遅い。お前が地を蹴るより前に、オレの拳が届く。
「名付けて、“シールコンボ・序の巻”だ……!」
右拳を奴隷商の腹へ叩きつける。
「ぐはっ!」
殴り飛ばされ、地面を転がる奴隷商。地面を蹴って追いかける。
「――“ルッタ”」
短剣を解封し、右手に装備。
奴隷商はオレの短剣を見て、腰に付けたナイフを取り出す。
「ざっけんなぁ!!!」
キン。と金属が弾き合う音、
二度打ち合って奴の剣筋を見切り、斬り上げて奴の剣を上に逸らす。二振り、脇腹と頬の皮を刻んだ後、左手に“獅”の札を掴んだ。
「“獅鉄”」
槍を解封し、石突を奴の腹に向ける。
魔力を込め、勢いよく槍を伸ばし奴隷商の腹を穿つ。
「――くっ!?」
20メートルほど槍を伸ばしてオレは両手の武器を手放し、跳躍する。
手に握るは“雷”と書き込まれた札だ。
「“雷印”!」
黄色の長弓を解封。手に取り、構えて三発の雷矢を放つ。
雷矢は奴が出した煙に防がれるが、雷光によって奴の注意を逸らした。
雷光に惑わされている内に、黄魔の鎖を奴隷商の背後に伸ばす。
戦いの序盤で奴の背後に投げ込んだ偃月を黄魔の鎖で捉え、地に足を付け右手を引く。
「“偃月”ッ!!」
偃月は飛び上がり、奴隷商の背を打ち付ける。
「なっ!!?
後ろから……!」
奴隷商は赤魔を纏って偃月に対抗しようとする。が、
「させるかよ!!」
オレは黄魔の鎖を増量し、12本偃月に繋げ、全身で引く。引いて引いて引き続け、ブーメランごと奴を引きずり戻す。
「あぁ……うわあああああああっ!!!?」
偃月に引っ張られ奴の体が宙に浮いた。
間合いが十分に詰まったところでオレは右拳を握り、渾身の赤魔を込める。
「ままま、待て! 金ならいくらでも――」
とことん――
「……つまらん奴だな」
右拳が奴隷商の鼻に突き刺さる。メキ、と鼻の折れた音が聞こえた。
ゴォン!!
奴隷商は体を空中で二回転させたあと、白目剥いて地面に落ちた。
――決着。
無様に倒れた奴隷商を見下ろし、全身の力を抜いた。
体をググッと伸ばし、首を鳴らす。
「あー、すっきりした。満足満足……」
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