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【WEB版】退屈嫌いの封印術師  作者: 空松蓮司@3シリーズ書籍化
第四章 封印術師と巨人の戦士

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第九十六話 シールコンボ・序の巻

 死神の指輪を右手人差し指に装備し、痣を右手から頭まで立ち昇らせる。

 目に見えるほどの赤き魔力を身に纏い、空気を唸らせ全速で突っ込む。


「この速度は――!?

 ちいいいいぃぃぃぃ!!」


 壁のように設置された高密度の煙の壁。

 壁を殴って壊し、速度を落とさず前に進む。


色装(しきそう)(とう)”、《カプノス・ドミナートル》!」


 奴は煙に黄魔を纏わせ、自分で吸い込んだ。

 自分に対する色装……オレが以前にやっていたのとそう変わらないな。



――もう遅い。お前が地を蹴るより前に、オレの拳が届く。


「名付けて、“シールコンボ・(じょ)(まき)”だ……!」


 右拳を奴隷商の腹へ叩きつける。

 

「ぐはっ!」


 殴り飛ばされ、地面を転がる奴隷商。地面を蹴って追いかける。


「――“ルッタ”」


 短剣を解封し、右手に装備。

 奴隷商はオレの短剣を見て、腰に付けたナイフを取り出す。


「ざっけんなぁ!!!」


 キン。と金属が弾き合う音、

 二度打ち合って奴の剣筋を見切り、斬り上げて奴の剣を上に逸らす。二振り、脇腹と頬の皮を刻んだ後、左手に“獅”の札を掴んだ。


「“獅鉄(してつ)”」


 槍を解封し、石突を奴の腹に向ける。


 魔力を込め、勢いよく槍を伸ばし奴隷商の腹を穿つ。


「――くっ!?」 


 20メートルほど槍を伸ばしてオレは両手の武器を手放し、跳躍する。

 手に握るは“雷”と書き込まれた札だ。


「“雷印(らいいん)”!」


 黄色の長弓を解封。手に取り、構えて三発の雷矢を放つ。

 雷矢は奴が出した煙に防がれるが、雷光によって奴の注意を逸らした。


 雷光に惑わされている内に、黄魔の鎖を奴隷商の背後に伸ばす。

 戦いの序盤で奴の背後に投げ込んだ偃月を黄魔の鎖で捉え、地に足を付け右手を引く。


「“偃月(えんげつ)”ッ!!」

 

 偃月は飛び上がり、奴隷商の背を打ち付ける。


「なっ!!?

 後ろから……!」


 奴隷商は赤魔を纏って偃月に対抗しようとする。が、


「させるかよ!!」


 オレは黄魔の鎖を増量し、12本偃月に繋げ、全身で引く。引いて引いて引き続け、ブーメランごと奴を引きずり戻す。


「あぁ……うわあああああああっ!!!?」


 偃月に引っ張られ奴の体が宙に浮いた。


 間合いが十分に詰まったところでオレは右拳を握り、渾身の赤魔を込める。


「ままま、待て! 金ならいくらでも――」


 とことん――



「……つまらん奴だな」



 右拳が奴隷商の鼻に突き刺さる。メキ、と鼻の折れた音が聞こえた。

 

 ゴォン!!


 奴隷商は体を空中で二回転させたあと、白目剥いて地面に落ちた。



――決着。



 無様に倒れた奴隷商を見下ろし、全身の力を抜いた。

 体をググッと伸ばし、首を鳴らす。


「あー、すっきりした。満足満足……」

皆様の応援のおかげで60000ポイント突破しました。この結果におごることなく、精進していきますので引き続きよろしくお願い致します。

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