第八十九話 分担
てなわけで、オレ達は女巨人バリューダの手助けをすることに決めた。
とりあえずやるべきは薬の確保、だがこれに関してはそこまで難しいことじゃない。
「帝都まで行って買ってくるだけだろ?」
「待ってシール君。ここからなら帝都よりも〈カルラ村〉の方が近いよ」
レイラが言うにはこの洞窟と帝都の間に小さな村があるそうだ。
ソナタがレイラの言葉を補足する。
「カルラ村にもナラフ薬は売ってるはずだよ。
巨人に使うなら、瓶で30本ぐらいの量は欲しいかな」
「りょーかい。バリューダ、薬代くれ」
バリューダは「わかった」と腰布に手を突っ込み、錆が見える金貨を取り出した。
「……おいおい」
金貨はバリューダの手には収まるサイズだがオレの手には収まらないサイズだ。デカい。間違いなくこっちの大陸で使える金じゃない。
「バリューダ、全部の大陸でその金貨が使えると思ってるのか?」
「使えないのか?」
「――はぁ、仕方ない。オレの懐から出すか」
ソナタに「大体どれくらいかかる?」と聞くと、「全部で9万ouroぐらいかなー」とのことだ。ディアの店で貰った10万ouroはすぐに尽きそうだな……。
あっちの大陸で買うなら単純計算で1800万ouroか。それは買えないわけだ。
「す、すまない……」
「気にすんな。
……なんか、お前の金貨濡れてないか?」
よく見ると、金貨だけじゃなくバリューダの体には至る所に水滴が付いている。
「海を泳いでこの大陸に来たんだ。だから濡れている」
「めちゃくちゃだな……」
行っちゃダメな大陸に向けて船を出すわけもない。
だからと言って、泳いで海を渡るのはバカだな。バリューダは少し天然っぽいところがある。
「シュラ、お前は白魔術でバリューダの傷を治してやってくれ。
ソナタは洞窟の入り口で念のため見張りを頼む。さっきの奴隷商がここを見つけるかもしれない。外敵は排除してくれ。
レイラ、お前はオレと一緒に村に行ってもらう」
「わかったわ!」
「仰せのままに」
「うん、了解!」
「よし、じゃあ動くぞ」
オレはレイラと一緒に洞窟を出て、森を越え〈カルラ村〉に足を運んだ。






