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【WEB版】退屈嫌いの封印術師  作者: 空松蓮司@3シリーズ書籍化
第四章 封印術師と巨人の戦士

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第八十九話 分担

 てなわけで、オレ達は女巨人バリューダの手助けをすることに決めた。

 とりあえずやるべきは薬の確保、だがこれに関してはそこまで難しいことじゃない。


「帝都まで行って買ってくるだけだろ?」

「待ってシール君。ここからなら帝都よりも〈カルラ村〉の方が近いよ」


 レイラが言うにはこの洞窟と帝都の間に小さな村があるそうだ。

 ソナタがレイラの言葉を補足する。


「カルラ村にもナラフ薬は売ってるはずだよ。

 巨人に使うなら、瓶で30本ぐらいの量は欲しいかな」


「りょーかい。バリューダ、薬代くれ」


 バリューダは「わかった」と腰布に手を突っ込み、錆が見える金貨を取り出した。


「……おいおい」


 金貨はバリューダの手には収まるサイズだがオレの手には収まらないサイズだ。デカい。間違いなくこっちの大陸で使える金じゃない。


「バリューダ、全部の大陸でその金貨が使えると思ってるのか?」

「使えないのか?」

「――はぁ、仕方ない。オレの(ふところ)から出すか」


 ソナタに「大体どれくらいかかる?」と聞くと、「全部で9万ouroぐらいかなー」とのことだ。ディアの店で貰った10万ouroはすぐに尽きそうだな……。


 あっちの大陸で買うなら単純計算で1800万ouroか。それは買えないわけだ。


「す、すまない……」

「気にすんな。

……なんか、お前の金貨濡れてないか?」


 よく見ると、金貨だけじゃなくバリューダの体には至る所に水滴が付いている。


「海を泳いでこの大陸に来たんだ。だから濡れている」


「めちゃくちゃだな……」


 行っちゃダメな大陸に向けて船を出すわけもない。

 だからと言って、泳いで海を渡るのはバカだな。バリューダは少し天然っぽいところがある。


「シュラ、お前は白魔術でバリューダの傷を治してやってくれ。

 ソナタは洞窟の入り口で念のため見張りを頼む。さっきの奴隷商がここを見つけるかもしれない。外敵は排除してくれ。

 レイラ、お前はオレと一緒に村に行ってもらう」


「わかったわ!」

「仰せのままに」

「うん、了解!」


「よし、じゃあ動くぞ」


 オレはレイラと一緒に洞窟を出て、森を越え〈カルラ村〉に足を運んだ。

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