第八十三話 アドルフォスの独白
雲を上から眺めながら、アドルフォスは去っていった旅人たちを頭に浮かべる。
封印術師シール=ゼッタ。
太陽神の呪い子シュラ=サリバンとアシュ=サリバン。
バルハ=ゼッタの孫娘レイラ=フライハイト。
騎士団の大隊長にして天敵の一人ソナタ=キャンベル。
(面白い面子が集まってやがる。
引き合わせたのはアンタの存在なんだろうな、バル翁……)
特にアドルフォスの頭に残るのは恩人の弟子の顔だった。
「シール=ゼッタか……まさか、アンタが弟子を取るなんてな」
アドルフォスはバルハより聞かされていた。弟子を取る気はない、と。封印術は継がない、その代わりに自分の代で再生者を全て封じると――
結局、バルハ=ゼッタは七体の再生者の内、四体を封じるのが限界だった。
残り三体はどうする気なのか……それを聞きに、アドルフォスはバルハに『来るな』と言われていたのにも関わらず、ディストールの牢屋を訪れた。いや、本音は違う。アドルフォスはバルハを牢から解放するためにディストールを訪れた。
なのにバルハはアドルフォスの誘いを断った。
つい最近までアドルフォスはバルハの真意をわからずにいたが、シールを見て、アドルフォスはようやくバルハの真意を理解した。
『私は役目を果たせない』
ディストールの牢屋で、バルハはそう言った。
『ならその役目、誰が引き継ぐ?』
そんなアドルフォスの質問に対し、バルハはこう返した。
『誰も引き継ぐ必要はない』
アドルフォスは牢屋での会話を思い出し、天を見上げて微笑んだ。
「アンタは継がせる気無かったみたいだが……」
――『だけどまぁ……目に付いたら片付けておいてやるよ。――暇つぶしにな』
軽い口調で、そう言い放ったシールの目には強い覚悟が秘められていた。
「アイツは継ぐ気満々みたいだぞ……バル翁」
バルハ=ゼッタがアドルフォスの誘いを断り、最後の時間を使って育成した弟子。
彼がこの先なにを想い、なにを成すのか。
アドルフォスは期待せずにはいられなかった。
第三章 完
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