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【WEB版】退屈嫌いの封印術師  作者: 空松蓮司@3シリーズ書籍化
第三章 封印術師と万物を喰らう者

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第八十一話 マグライ

 


――放たれた拳サイズの漆黒の球は、泥帝に当たると同時に空を黒に染めた。



 空に浮かんでいた全ての塊が弾け飛び、暗雲が晴れた。

 泥帝は魔力を使い果たし、ボロボロの状態で地面に落ちて来る。気を失った再生者(泥帝)をアドルフォスに貰った鉱石に封印し、戦いは終わった。



「ほらよ」



 泥帝が封じられた鉱石をアドルフォスに投げる。

 アドルフォスは右手でキャッチし、懐にしまった。


「信じられねぇな……湿地が無くなっちまった」


 流れていた川、生い茂っていた草木、その全てが消え失せ、多少の泥と火の池のみが土の上に残っている。


「……再生者の全力、まさかこれほどとはな」

「アレでも弱っていた方だ」


 再生者も凄いが、その再生者をほとんど一人でぶっ飛ばしたアドルフォスも凄まじい。あれだけの大技を放っておきながらまだ余裕がある顔だ。爺さんもアドルフォスと同じかそれ以上に強かったんだろうな。二人が組んだらどんだけ強かったんだろう?

 爺さんとアドルフォスのコンビネーション、一度でいいから見てみたかったな。

 

「――単純な疑問なんだが、

 なんでアイツらは不死身なんだ?」


 根本的な問いを投げる。

 再生……といえば副源四色の白魔を思い浮かべる。だが泥帝は黒魔を使っていた。副源四色は一つしか持てないのだから、矛盾する。いや、いくら白魔と言えど体が粉々になってから再生するなんてそもそもあり得ない。


「奴らの特性を考えれば当然だ」

「特性?」

「お前は〈終楽戦争(しゅうがくせんそう)〉を知っているか?」

「人間と神様が争ったって話か?」


 ディアの部屋で見た本に書いてあったな。

 女神ロンドが戦争ばっかする人間に怒って戦争を吹っ掛けたって話だったはず。戦争に勝った女神は七つの呪いを世界に放ち、その代わり七つの祝福――魔力を人間に与えた。


「あの話は真実だ。バル翁はそう語っていた」

「真実だとして、それが今の質問となんの関係がある?」

「――女神が世に放った七つの呪い、女神の呪いが受肉した存在こそが……再生者だ」


 呪いが、受肉――?

 呪いが形となって、現れたのが再生者だとでも言うのか。


「俺が知ってるのはこれぐらいだ」

「待てよ! 呪いが受肉したってのは百歩譲って信じる。

 でもだからって再生者が不死な理由には――」


 頭にとある姉妹の顔が過った。


――思い出せ。


 シュラとアシュ。


 あの姉妹がなぜ呪いを解くのに苦労しているかを。


「呪いは――絶対に解けない」


「……呪いは器が消えない限り不滅だ。

 だから、呪いが形を成した奴らもまた不滅。

 人にかかった呪いは、呪いのかかった人間が死ねば消えてなくなる。世界にかかった呪いである奴らは世界が滅びるまでその存在を残し続ける」


……理屈は一応通る。けど、モヤッとした感覚は拭えない。


「問答は以上だ。続きは帰ってからだな」


 気づくと、空はオレンジ色に染まりかけていた。

 もう夕方か。


「ん?」


 なんだ? 右手が熱い。


 視線を落とすと、オレの右手に光が宿っていた。

 その光はシーダスト島で、銃帝を止めた鎖と同じ()()の光だった。


「――なんだこりゃ」


 金色の光は次第に輝きを増していく。


「どうした?」

「いや、なんか右手に金色の光が……」


 視線を再び落とすと、光は消え、右手は通常状態に戻っていた。


「悪い、気のせいだったみたいだ……」


 謎だな、今の光。

 なにか出現する条件でもあるのか?


「……無いな」


 アドルフォスは焼けた大地に視線を配る。 

 なにかを探している様子だ。


「封印術師。お前、どこかで錆びた剣を見なかったか?」


「アンタが火山で使ってたやつか?」


「そうだ」


「見てないな」


「――そうか」


 アドルフォスはほんのり落ち込んだ。お気に入りの剣を無くしたようだ。


「少しだけ、掃除してから帰るか」


 地形を整えた後、オレはアドルフォスに抱えられ、“雲竜万塔(ヴォルケトゥルム)”に帰った。

赤魔、青魔、緑魔、黒魔、白魔、黄魔、虹魔。という七種の祝福(魔力)が存在します。

それぞれの祝福に対して、呪いも当然存在します。

緑魔に対応した呪いが泥帝です。なので、彼女は形成の魔力が他の再生者よりも滅茶苦茶に多いです。しかも形成の魔力で出来ることも広いです。

黄魔に対応した呪いが屍帝です。彼は支配の魔力が多く、性能も頭おかしいです。


残り五体もどの祝福に対応しているかで性能が尖っています。以上、特にためにならない封印術師豆知識でした。

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