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【WEB版】退屈嫌いの封印術師  作者: 空松蓮司@3シリーズ書籍化
第三章 封印術師と万物を喰らう者

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第七十一話 嘘つき

 ソナタ=キャンベルの副源四色は虹色。名を“真実(うそつき)の魔力” と言う。


 “真実(うそつき)の魔力”は舌に虹魔(こうま)を込めた状態で自分が言った嘘を誰かが信じると、その嘘を真実に変えるのに必要な魔術構築式を一瞬だけ使用者に与えるという魔力(あくまで一瞬0.36秒であり、時間が過ぎると忘れる)。“真実(うそつき)の魔力”が与えるのは魔術構築式、簡単に言うと魔術発動に必要な知識のみで、魔術の発動に必要な赤魔・緑魔・青魔は別で消費される。太古の時代、この魔力を持つ人間は“英知の魔力”とも呼んでいた。

 “真実(うそつき)の魔力”によって与えられる魔術構築式は現代存在する魔術構築式より遥かに優れており、魔術を実行する際の消費魔力量の少なさ・魔術形成速度共に常軌を逸している。


 ただ万能ではなく、自分の内にある魔力で実現不可能な嘘は真実にはならない。例えば封印術や転移術は不可能。黒魔や白魔、黄魔や他の虹色の魔力を使った術などは再現不可能。実現可能なのはあくまで、ソナタ=キャンベルの内にある魔力――主源三色で成せる現象(うそ)に限る。


 ソナタは自分のこの特別な魔力を『使い勝手が悪いよ』と評している。言葉が通じない魔物が相手だったり、この魔力の性質を知っている者が相手だと使うことが不可能に等しいからだ。


 利点として、成立すれば詠唱術を超える威力の魔術をノータイムで出すことが可能。その際に消費する魔力量も少量であり、ソナタがシールに見せた雷竜の魔力消費量は正規の手段で出す初級魔術の魔力消費量と大差ないほどである。


 なんでも嘘を信じてくれる人間が側に居れば大規模魔術を間を置かず連発し、格上を圧倒することも可能である。ソナタ=キャンベルの四つ目の魔力がハマった際の制圧力は計り知れない。


 『なぜ嘘を言う必要があるのか』、『どうして誰かに信じて貰わなければいけないのか』。その詳細は不明である。まだ研究が進められておらず、ソナタ自身も自分の魔力を詳しく把握しているわけではない。一部で虹魔がハズレ魔力扱いされているのはこういった面のせいである。虹魔は総じて性質解析の歴史が浅いため、応用が難しい。特に副源四色を肉体・道具・魔術に纏わせる“色装”の難易度は他の色の魔力に比べて段違いに高い(先駆者・前例が存在しないor少ないため)。


 ソナタはこの魔力をシールたちに伝える気はない。伝えればいざという時、彼らを利用できないからだ。


 相手を拘束する《遊縛流》魔術と“真実(うそつき)の魔力”。この二つがソナタのメインウェポンである。



---シール視点---   



 負けた。

 さすがは大隊長。本気出されたらなんもできない。


「奥の手を出させただけ、君は凄いよ」


「最後の雷竜も《遊縛流》魔術なのか?」


「アレは別さ」


 ソナタは水浸しになったコートを炎で乾かしながら水面から地上へ上がった。

 オレも滝面から上がり、使い捨ててあった武器たちを地上から回収(封印)する。


「ちなみにね、《遊縛流》魔術は君の師匠、バルハ=ゼッタさんも使っていたんだよ」


「ホントか?」


「うん。僕の師匠からそう聞いた。

 《遊縛流》魔術は束縛に特化した魔術だから、色々と都合が良かったんだろうねぇ」


 なるほどな。ソナタの使ったあれらの魔術で相手を束縛し、封印術をぶち当ててたのか。


「暇な時オレに教えてくれ。《遊縛流》魔術ってやつ」

「全然構わないよ。君には強くなってもらわないといけないからね。

 でも君の場合、もっと基礎的な魔術からじゃないかな?」


 そういや、アシュに緑魔の使い方教わるって言って、結局一度も教えて貰ってない。

 赤魔と青魔と黄魔、それぞれそれなりに使えるようになってきたし、そろそろ緑魔に手を出してもいい頃合いかな。




 テント地に戻ると、オレ達よりも先に女性陣が戻っていたようで、女子テントからは笑い声が聞こえていた。レイラは上手くやってくれたようだ。


「どうやら、もう大丈夫みたいだな」


「みたいだね。

 僕らも何か語り合うかい? 恋バナでもする?」


「ふざけんな。テント入ったら一言もしゃべるなよ。

 オレはもう寝る」


「つれないなぁ……」


 オレはテントに戻って意識を休ませた。

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