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Brave and Partners Online  作者: 岩越透香
番外編 ユキ

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進化

「向こうに二匹いるよ〜」

サヨが翼を使って敵の方角をリックに報告する。


「強化STR。ユキ、奇襲してくれ!」

静かに駆け出してゴブリンに先制攻撃を仕掛ける。良いところに入ったと思ったんだけどな。ワイルドウルフよりもVITが高いのか、攻撃を耐えられてしまった。敵は近くに落ちていた錆びた剣を構える。無理に攻撃すると、残った方から攻撃されてしまう。


 かけてもらった強化魔法を活かし、早い動きで敵を撹乱するように戦う。けれど、決定打になり得るスキルは予備動作を見てからでも簡単に避けられてしまうため、大きなダメージはないものの、こちらも勝負を決める一撃を入れられていない。


 早く、倒さないと。そんな時、リックの後ろからゴブリンの声が聞こえた。三体目! 庇うを使ってリックの代わりに攻撃を受ける。


 視界がぐるりと回る。ごろごろと地面を転がり、なんとか起き上がる。多分、HPはギリギリ。強化魔法にまた助けられちゃった。


 リックはゴブリンにアッパーを喰らわせていて、ユキが加勢しようとすると、サヨに加勢するように指示を出した。


「助けてよお。急に居なくならないで……」

届きそうで届かない距離を維持して飛ぶサヨ。リックは「俺のことはいい」と言っていた、ユキはリックを信じよう。


 ゴブリンの知能はそこまで高くない。視界外へ消えたものの存在が頭から抜けるくらいには。


「ありがとう〜」

「別に」

一体は倒せた。こちらの方が数が多いなら、勝てる。


「あと一回突進すれば勝てるね〜」

「無理。予備動作が大きいから避けられる。地道に攻撃するしかないわ」

「そんなあ……」

がっかりするサヨを横目にゴブリンをすれ違いざまに蹴る。サヨはユキの攻撃が成功しやすいように上空から攻撃して敵の意識を逸らしてくれている。


「痛ったあ。掠っただけなのにい」

「回復! もう少しだ、頑張れ!」

「あ、ありがとう〜リック。がんばるぞ〜」

「後ろの言葉はユキに向かってのものなんだけど」

「僕たちに向かってだよお」

リックはこちらを気にしつつ戦っている。彼に見られているならより一層頑張らないとね。



「倒せたあ」

「当然……」

リックに注目しながら相槌を打つ。――ゴブリンの動きが急に良くなった。リックが速くなった動きについて行けず、殴られる。二発目は危ない。ユキは飛び出して、ゴブリンに向かって突進した。助走距離が長めなのもあり、倒すまではいかないものの、吹き飛ばすことができた。


「助かった、ユキ!」

褒められたのが嬉しくってリックに飛びつく。


 ユキの様子を少し呆れた目で見ていたサヨは「ゴブリンは倒しておくね〜」とその場から離れた。



 これ以上進むのは危険ということで、ユキたちは町に戻った。次に森に向かったのは次の日のこと。リックの自信がある様子を見ると、ゴブリン相手に確実に勝つ方法を考えてきてくれたのだろう。


「また二匹だったよ〜」

サヨの報告を受け、リックの指示の元、昨日と同じように奇襲する。


「強化INT(インテリジェンス)拘束(バインド)。拘束されていない方へ集中攻撃だ!」

リックは彼自身に強化魔法をかけ、妨害魔法の一つ、拘束を使った。なるほど、一体ずつ集中攻撃して倒そうって魂胆か。


「動かないなら安心だね〜。これなら僕でも倒せそう〜」

サヨが調子に乗ったのがフラグになってしまったのか、拘束が一体目を倒す前に解けた。まあ危なげなく勝つことができたけど。次からはリックがINTを増やしてくれたから安心かな。



 それh三度目に森に入った時のことだった。


「一匹だね〜。うーん、ちょっといつもと違うかなあ」

サヨによるとゴブリンが少し変らしいけど、倒せばきっと変わらない。いつものように先制攻撃を仕掛ける。


 リックは拘束を使ってくれているし、問題はないと思っていた。動かない今なら確実に当たる。この一発で倒すなんてこともあるかもとさえ思っていた。


 ユキの能力が足りなかったのか、拘束されたことで気がついたのか、ゴブリンは攻撃前にこちらに気がつき、カウンターを仕掛けようとした。拘束のおかげで動けないはずなのに。……まさか、別種!?


「っ拘束!」

リックが慌てて拘束をかける。そのおかげでカウンターされることなく攻撃を当てられたけれど、やはり、拘束はすぐに解かれてしまった。


「ユキ、サヨ、敵を動かすな! 連続攻撃だ!」

リックはユキたちに強化AGIと付与麻痺術をかけた。麻痺状態も利用して、攻撃を受けないようにしながら戦う。


「怖かったね〜。一匹は危険って覚えたよお」

「それは良かっ……。これはまさか」

「進化だねえ」

ユキが白い光の膜に包まれた。目を閉じてシステムに身を任せる。体が変わっていくのが分かる。けれど違和感はない。不思議な感覚だ。


 しばらく時間がかかりそうだから、進化が終わった時にどんな表情をするか決めておこうかな。ユキは通常進化のポーンラビットになるから……。歩兵(ポーン)だから、勇ましい表情で良いかな。


 ユキを包んでいた光が崩れ去り、進化が終わった。ユキはリックに駆け寄り飛びついた。


 リックは喜んでいるけど、ちょっとだけ悲しそう? まさかVITが高くなって体毛が硬めになってしまったから――。



 新しいスキル「強攻撃」を覚え、能力も上がったから、その力を披露することになった。レベル上げの時のように、二匹のゴブリンを見つけてスキルを使って攻撃をする。


 強攻撃を使うと赤いエフェクトが体から出てきた。なんとなく、自分が強くなったと感じる。ゴブリンに突進すると一撃で倒すことができた。


「すごいぞ、ユキ! もう一匹も倒すぞ!」

ユキが強くなったおかげでゴブリン二体なら安定して倒すことができるようになった。そのおかげでサヨのレベル上げも捗り、彼も無事進化した。


「これなら――」

リックが口にしたのは以前敗れたボスの名前。もうすぐ、挑むのだろう。


「その『えりあぼす』はよく分かんないけど、きっと勝てるよお」

「ふふ、確かに。弱気になんてユキには似合わない」

その日は町に帰るとリックは杖を買ったりアイテムを買い揃えた。


 今度こそ負けない。今度こそリックを殺させないから、覚悟しなさい。

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