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Brave and Partners Online  作者: 岩越透香
第五章 王都セントル

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再来2

 時の神殿に行くためにバースに行く。バースの人々は不安そうな顔をしていた。当然だろう。取り戻したと思った神殿が再び魔物に侵攻されたのだから。


「時の神殿に向かうのか?」

南門を通ろうとしたら声をかけられた。俺は頷く。


「そうか、ありがとう。あの時、時の神殿で何が起こったのかを話させてくれ」

彼は一度大きく息を吐いてから話し始めた。


 視界が暗転した後、俺が見たのは人で賑わう時の神殿の様子だった。が、やはりその光景は長く続かない。黒い卵のようなものが降ってきた。


「なんだ?」

誰かがそれに触る。すると、それは弾け飛んだ。触ってしまった人は大きく後ずさって、触った手を痛そうに抱え込んだ。


 もし、一つだけなら誰かの悪戯だとスルーされていただろう。しかし、現実ではいくつもの黒い卵のようなものが降り注いだ。混乱する人々の中、神官たちが避難誘導を行う。


 映像の視点である男もまた誘導に従って逃げていたのだが、何を思ったのか振り返ってしまった。


 男の後ろでは現れた魔物と神官が戦っていて、神官が優勢だったのだが、魔物が黒い卵のようなものに触れ、黒いもやが魔物を包み込んだかと思うと、魔物が神官に善戦し始めた。


 あれはヤバい。彼もそう思ったのか、駆け足でその場を離れた。


「大した情報じゃないが、役立てて欲しい。頼む、俺たちの代わりに神殿を守ってくれ……!」

俺は大きく頷いて答えた。


 道中は少々魔物が強いくらいで大した異常はなく、無事に神殿まで辿り着けた。


 時の神殿の敷地内は荒れていた。屋台は壊され、見るも無惨な姿になっている。魔物が神殿内を我が物顔で歩いており、楽しかった復魂祭は見る影もない。


 一匹のゴブリンがこちらを向いた。敵がどれほど強いのか分からないため、みんなにできる限りの強化魔法をかける。


「強い……!」

全員でスキルを使って攻撃しているのに、相手は倒れる様子がない。……かなり強化されている。俺と俺のパートナーたちは全体的に紙装甲だから、敵の攻撃は致命傷になりかねない。


 ゴブリンはこちらに向かってきた。敵とは距離もあったため、かする程度で済んだのだが、HPは半分以上持っていかれた。急いで回復魔法をかける。やはり速攻で倒すのが正解だったな。


「拘束! 畳み掛けてくれ!」

能力差があるのか、抵抗されているのが分かる。二秒持てば良い方か……?


 強化されていても二度目の一斉攻撃には耐えられなかったようで、無事にゴブリンを撃破できた。


 安心したのも束の間。茂みからホーンラビットが飛び出してきた。


「CTも開けてないのに……!」

文句を口にしつつ、拘束を使う。しかし、拘束は不発に終わった。対象が倒されたからだ。


 一撃で倒して自慢げなユキ。このホーンラビットに与えたダメージがゴブリンへのダメージよりも大きかったとしても流石におかしい。敵によって強さにばらつきがありそうだ。


 強い魔物は黒い卵に触れた個体、弱い魔物は黒い卵に触れておらず野生のままの個体ということだろう。魔物の強さを事前に判断できる方法はないか?


 より詳しそうな人――ここで戦い続けている神官(NPC)たちに聞いてみよう。



 魔物を倒しながら礼拝所の方へ行く。俺の予想が正しければ、数人はそこにいると思うんだが。


 予想的中。ちょうど何人かNPCがいた。ルカさんはいないか。彼は戦えるから魔物退治をしているのだろう。座って休んでいる人に話を聞きに行く。


「私たちは魔の卵と呼んでいるのですが、魔の卵を多く獲得した魔物はより強い闇のオーラを放っていますから、それで見分けています」

闇のオーラ、つまり黒いもやを多く纏っている個体が強い個体か。


「ですが、私たちは見分けていませんね」

「違いが小さくて見えないということですか?」

「敵を選り好みできる状況ではないという意味です。もちろん、勝てない相手からは逃げるというのも大切なのですが」

それもそうか。敵がいつ襲いかかってくるか分からない以上、MPの節約より、安全確保を優先して強化魔法はバンバン使うことにしよう。


「今、一番大切なことはこれ以上強い魔物を作り出さないことです。ですので、魔の卵を見つけ次第壊していただけませんか?」

「どうすれば壊せるんですか?」

「触るだけですよ。ただ、魔物に――パートナーであっても――やらせるのはお勧めしません」

「一石二鳥じゃないんですか?」

「ええ。絆があったとしても、魔の卵に影響されて暴走し、命令を聞かなくなってしまうんです。特に、妖精は魔力そのものですから影響されやすいです。絶対に触らせないようにしてください」

純粋な妖精は少しでも不純物が混ざるとはっきりと効果が出るのか。妖精はパートナーになる時もそうだが、少し特殊な立ち位置にいるみたいだ。


「人には影響はないんですか?」

「痛いくらいですね。死ぬことも、精神に影響することもありませんよ」

そこら辺は町で見せてもらった通りだろう。注意点は聞き終えたため、卵探しと魔物退治に向かうことにした。


 魔の卵によるダメージは十だった。神殿を回って適度に回復魔法を使いつつ魔の卵を壊していく。卵を見つける時には小夜の索敵能力の高さが光った。


 卵の破壊を優先するものの、魔物も卵を得ようとするため、交戦が自然と多くなる。そうして戦っているうちに、魔物の大体の強さが見て分かるようになった。体感では三割五分が無強化、四割が一回強化、二割が二回強化、残りが三回強化という割合だった。最初に戦ったのはおそらく二回強化のホブゴブリン。最初に強い方の魔物と当たってしまったのは運がなかった。


 強化数に応じて手強くなるものの、元の魔物が弱いと三回強化でも二回強化の他の種類より弱いということも多々あった。そのため、最初の二回強化のホブゴブリンは上から数えた方が良いくらい強かった。


 ここにいるのが初期エリアの弱い魔物だからなんとかなっているものの、王都付近の魔物が三回強化なんてされてしまったら手に追えなさそうだ。ホーンラビットでも四回以上強化されると俺たちだけでは厳しくなるかもしれない。そういうこともあり、「一番大切なことはこれ以上強い魔物を作り出さないこと」という言葉は相当正しいものだった。


 何体も倒したおかげか、魔物の数が減ってきたような気がする。もうすぐこのイベントも終わりかとしみじみとしていると、焦ったようなルカさんに声をかけられた。


「リックさん! 広場の方まで来ていただけませんか!?」

「何かあったんですか?」

「ええ。とても強い魔物が現れたのです。おそらく、七回は魔の卵に触れているかと」

三回でも強いのに、その二倍以上……?


「不安になるのも分かります。ですから、こうして人を集めて回っているのです。魔物は巨大化しており、パーティー単位ではとても太刀打ちできるものではありません」

「分かりました。向かいます」

サポートよりのビルドにしてから初めてのレイド戦。期待と不安を胸にボスの場所へ向かった。

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