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Brave and Partners Online  作者: 岩越透香
第五章 王都セントル

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四つ目の神殿

 現時点ではセア港の先のエリアがないため、進めるのはアグリシティ方面のみ。いつもの二人とはタイミングが合わなかったため、海の神殿で戦って仲良くなった人と攻略することにした。


 情報屋で先行したプレイヤーからの情報を貰う。パーティーメンバーに次の町で職業に就きたいという生産系プレイヤーが居たため、速度を重視してのことだった。


 情報によると、次の町は山を降りて、平野を進んだ先にあるとのこと。山を降りたところにエリアボスとしてシャドウウルフ・リーダーが待ち構えているとのこと。初期エリアのボス狼を強くし、影爪シャドウクロウというスキルを使えるようになった魔物らしい。影爪は自分の影から爪が伸びる攻撃らしく、タイミングは掴みやすく隙ができるものの、攻撃を避けることはほぼ不可能というハイリスク・ハイリターンなスキルのようだ。


 職業にも就いているプレイヤーたちということで、俺は索敵係と化していて、考え事をする余裕すらあったが、その時間はどうやら終わりらしい。


 俺たちはボスエリアの前で作戦を再度確認したのち、エリア内に足を踏み入れた。


『ボスエリアに入りました。エリアボスとの戦闘が始まります』

パーティーメンバーが一斉に武器を構えた。


「俺ら二人がボス本体を担当する! テイルとうぃーくすは呼び出されたシャドウウルフの相手を、リックはサポートを頼む」

「了解!」

パーティーリーダーの決定に従って動く。まず、頼まれていた通りにボス担当の二人に強化AGIをかける。


 最初の強化を済ませた後は、強化AGIを切らさないように効果時間を考えながら、体力が減ってきた仲間に回復をしていく。


 大地が震えるような咆哮が聞こえる。これはHPが半分以下になり影爪を使うようになったというサインだ。前もって強化INTを自分にかけておき、作戦実行の時がいつ来てもいいように準備する。


「やれっ」

早速ボスが影を伸ばし、影爪の攻撃モーションに入ったところでリーダーが声をあげる。


「拘束!」

ボスが前足を振り下ろしきる前に魔法は発動し、ボスは無防備な状態で捕えられた。


「最大火力で叩き込め! ここで倒すつもりでな!」

リーダーの合図で全員が攻撃を叩き込んでいく。途中で拘束こそ切れてしまったが、ボスは同時攻撃になす術なく倒れた。


『エリアボスの討伐を確認しました』

アナウンスを聞いて、思わず近くにいたテイルさんとハイタッチをした。やっぱり作戦が完璧に決まると気持ち良い。


 平野にいた魔物は今までに出てきた魔物の強化版だったから、特に苦労することもなく、第三の町に辿り着くことができた。


 城壁が見えてきたところで、俺たちはパーティーを解散し、フレンド登録をした。


 城壁は俺の高さ十メートルを超えていて、近くで見ると凄い圧だった。圧倒されつつも、門へ行きギルドカードを見せる。


「おう、通っていいぞ」

バースに入る時もこういうやりとりがあったなと思い出しつつ、新たな町――王都セントルに心躍らせた。


 町に入って最初に目に入るのはなんといっても大きな城だ。イベント予告は騎士団長がやっていることが多かったが、ここから放送していたのだろうか。


 城みたいな侵入不可っぽいエリアのことは一旦置いておいて、王都散策の開始だ!



 王都というだけのことはあって、今まで訪れたどの町よりも広く、多くの店が並んでいる。装備が売っている店を覗いてみると、最新の町ということもあってか、かなり充実した品揃えになっている。


 店が多く並んでいるのは門の近くだからだと思っていたが、城の方へ進んでみても店の数はあまり減らなかった。むしろ、店ではなく工房が並ぶようになっていった。工房は材料を運び込む必要があるから門の近くの方が利便性は良いと思うのだが……。


 このまま城の近くまで行ってみるかと思い、歩いていると怪しげな道を見つけた。店と店の間にはギリギリすれ違えるくらいの幅の道があった。その先には森が広がっていたのだが、踏みしめられた後があった。


 秘密の通路を見つけてしまったかもしれない。俺はドキドキしながら道の先へと進んだ。


 ある程度進むと道らしい所に出た。今までは横道のようなところを歩いていたらしい。


 隠されるようにある道だが、人が居ないわけではなく、職人や聖職者、プレイヤーなどバラバラな人がちらほらと歩いていた。この先は何があるのだろう。異なる人々が目指すこの道の終着点が気になった。


 五分ほど歩くと、道幅が広くなってきて、徐々に明るくなってきた。俺は視界に飛び込んできたものを見て、思わず声に出して驚いてしまった。


「神殿だ……」

目の前には森と調和した神殿がそびえ立っていた。


 辺りを見回すと、俺が通ってきた道以外にも道があった。その道は城の方向から伸びている道だった。俺は邪道な方法で来てしまったのかもしれない。


 何も知らずに来てしまったから、この神殿について知っていそうなNPCに話しかける。彼は「当たり前のことをなぜ聞いてくるのか」とでも言いたげに怪訝そうな顔をしていたが、異界から来ていることを告げると納得し、快く話してくれた。


「ここは山の神殿。ここでは職人としての加護が受けられるんだ。そのおかげでこの町には職人が多くいて、中には上位職に就かれている職人もいるほどだ。とても良い品がこの町には揃っているんだ。この後でも良いから見に行ってみてくれ」

町の中心に近い場所は材料を運ぶのに不便な代わりに、神殿が近いということか。少し疑問が解けた。


「上位職って何ですか?」

「その名の通りさ。職人系は特定のスキルのレベルが条件らしい。戦闘系も同じだと聞いた。あ、二つの職業をマスターすることで就ける職業もあると聞いたぞ」

「神官と戦士、とか?」

「詳しくは知らねえな。その組み合わせなら、神官の中にマスター済みの奴がいるかもな。知り合いがいたら聞いてみるといい」

もし、神官と戦士の先があるなら、パラディンとか聖騎士といった名前になるのだろうか。魔法使いと神官で魔法特化の上位職もありそうだ。戦士のレベルを二十にするのが楽しみだ。


「ありがとうございました!」

「おう、どういたしまして。職業についてあんまり知らなくて悪かったな!」

「いえ、とても助かりました」

親切なNPCと別れた後は、神殿内を見て回った。図書室に向かってみたところ、鏡の神殿で読んだ本の続きが二冊読めるようになっていた。海の神殿のイベントが終わり、新しい町にたどり着いたからだろうか。


 俺はまず「創世神話2 〜現代の神々〜」を手に取った。



 四柱の神々は五柱の神を産みなさった。かつて自らたちが世界を作り出した時のように、協力し合えるように、と。


 彼ら五柱の神はそれぞれ、「時の神」「海の神」「山の神」「鏡の神」「和の神」となった。五柱の神は多少の考えの違いはあれど、この世界のより良い未来のために協力した。



 五柱の神と神殿の名前が一致しているらしい。最後の神殿は和の神殿ということになるのかな? 続いて「創世神話3 〜神々の裁き〜」を開く。



 やがて人が豊かになると欲を抱くようになった。その欲は戦へと発展し、多くの人々が死に絶え、悲しんだ。


 裁きとして時の神は寿命を与えた。海の神と山の神は災害から彼らを守ることをやめた。鏡の神は真実の鏡を用い、彼ら自身に自らの過ちを反省させた。そして和の神はただ平和に過ごせるよう願った。



 真実の鏡は鏡の神殿攻略の時に名前が出ていたアイテムだ。神話に出てくるってことはかなり重要な物だったらしい。現実世界で例えるなら三種の神器レベルの。草薙の剣が誰でも触れるような所に置いてあると考えるとヤバいな。


 ストーリーが進むと本が解禁されていくならこまめに確認するようにしよう。町を一周してみたら今日はログアウトしよう。

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