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Brave and Partners Online  作者: 岩越透香
第四章 第二の町

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クリスマス3

 咄嗟に逃亡してしまったが、アイテムを探すイベントということで、バラバラの方が効率が良いとパーティーを解散することになったため、そのまま破片探しに移行した。


 依頼で破片を十個集めたところで、悪魔石"怠惰"に似たものへと変化した。もう一つ拾ってみたがくっつく事はなかったため、これでこの依頼は終わりだろう。


 そう思いながら悪魔石らしきものを眺めていると、ユキも気になるようで、肩の上から覗き込んできた。


 ユキは真剣に見ているようで、前のめりになっている。肩から落ちると危ないので悪魔石を一度しまって、ユキを肩から下ろす。


 レイドボス戦もあって疲れていたため、今日はこれでログアウトすることにした。


 その日の夜、凛に「お兄ちゃんとフレンドさん達に渡したい装備があるんだ」と言われ、二人に予定を聞き、セア港に集まることとなった。



 数日後、約束の場所に向かった。周りを見渡しても知り合いの姿はない。早く着きすぎたと思い、掲示板を見る。


 今回のイベントで集めていたのはやはり悪魔石らしい。今回は"怠惰"ではなく"嫉妬"なのだとか。クリスマスイベントで"嫉妬"の悪魔石か……。


 取り出してじっくり見てみようと思ったところでリンがやってきた。


「リック、お待たせ。えっと、あの二人は?」

「アオイと、……ナルのことだな。少し遅れるってさ」

ナルの正式なプレイヤーネームを言おうとして止めた。長いし、混乱しそうだからだ。


 少し話していると、こちらに向かって走ってくる人が見えた。アオイとナルだ。


「すみません、遅れました。そちらの方は?」

「リンです。よろしくお願いします」

リンに「言ってなかったの?」と言うような非難の目で見られる。……もう一人いると二人に言い忘れていたな。


「この前、アドバイスを貰ったので、大した物ではありませんがお礼をしたくて」

リンはそう言ってサンタ帽を取り出した。そういえばあと一週間でクリスマスだ。復魂祭と時期が被るから今度の復魂祭はクリスマス仕様なのだろう。


 リンは二人にサンタ帽を渡し、ナルのパートナーにポンチョを着せるついでにモフっていた。他の人の目を騙せても俺の目は騙せないぞ。


「もう少し触るか?」

リンがモフモフが好きということはナルにも分かったらしい。リンはその返事を聞くや否や「良いんですか!?」と目を輝かせ、まるで極楽にいるような顔で抱き続けた。


 彼女の肩に乗っているしらたまにぺちぺち叩かれてようやく我に返ったようで手遅れになる前にと思ったのか、急いで人をダメにする魔物を返却していた。



 話の流れで俺とリンが兄妹だということが二人に知られた。それを知ったナルは「確かに、こいつを触った時のリアクションが似ているな」と言った。……俺はそんなに緩み切った顔をしていたのか。


 俺は人前であんな顔になるのは不味いと、口を一文字に結んで真顔になろうとした。そんな俺を見て、リンは「浮気?」と俺を揶揄う。


 あーだこーだ言い合う俺らを見て「仲が良いようで何よりです」とアオイが小さく笑った。


 去り際にリンから「クリスマスは一緒にゲームしよ」と言われた。その時、悪寒が走ったのはなぜだろうか……。



 みんなと別れた後、悪魔石を手に持ちじっくりと見てみる。悪魔石"怠惰"よりも緑がかっている……気がする。緑は嫉妬を表す色だからだろう。


 今のレベル的にはもう一体テイム出来ると言ってもなあ。今は使わなくても良いか。悪魔石をしまおうとした時、ユキが横から悪魔石を奪った。


「ユキ! 早く返してくれ」

俺の説得も虚しく、ユキは悪魔石を噛み砕いた。と同時にユキが黒い膜に包まれる。一度見たものだが、これが体に良いはずがない。助けようと手を伸ばすが、もやに阻まれて届かない。


 もやが晴れて出てきたのは体毛が黒っぽくなったユキ。新たに黒い爪が生えていて、角は真っ黒で鋭利になっている。目の色は血のような赤色に変わり、白目が黒く変色している。


「ユキ、その目は……。大丈夫か!?」

触れるようになったユキを抱き上げ、異変がないか見る。


「!?」

俺はユキを抱え上げて固まった。なんだこのモフモフは!? 今までに触った何よりも気持ち良い。固めのモフモフが悪いわけではないが、これは一生触っていられそうだ。


 ……はっ! とりあえずステータスを確認しよう!


ユキ

種族:悪魔 Lv.1

位階:1

HP:165/165

MP:0/0

STR:29

VIT:36(+3)

INT:12

AGI:22(+5)

特性:嫉妬、魔なるもの

【スキル】

突進 庇う 嫉妬の一撃

【装備】

制帽 VIT:+2 耐久:89

ネクタイ VIT:+1 耐久:125


【嫉妬】

嫉妬。


【嫉妬の一撃】

相手への感情によって威力が増加する。

強攻撃が進化したスキル。


 悪魔石を使うと種族名が固定でレベルも一に戻るらしい。ステータスは据え置きだからこれが強くなるために使えるのも納得だ。


 スキルの進化については初めて聞くな。軽く掲示板を漁った感じ、誰も触れている人が居ない。見つけていても秘蔵しているということだろう。 


 さて、新しいスキルについて色々と確認しなければ。


 意気込んで森に繰り出したは良いものの、ユキは今までと変わった様子ほとんどなかった。色と触り心地が変わったくらいだ。普通の動物が変化した時とは違うらしい。



 クリスマス当日。嫌な予感は感じつつも待ち合わせ場所の広場に向かう。リンは広場でぽっかりと空いた噴水前の空間に立っていた。周りはいつもと同じ服装、あっても赤い物を装備するくらいだったのに、リンはがっつりクリスマス衣装を着ていて浮いてしまっているようだった。


 ハイネック、ロングスカート、オフショルダー、アシンメトリー。俺たちの意見を取り込みつつ、クリスマスらしさも残る可愛いコーディネートになっている。


「リン。ごめん、少し遅れた。……似合ってるな」

「ありがとう。私が早すぎただけだから気にしないで。はい、これを着て」

リンに有無を言わさず装備を渡される。スーツ(赤)、ネクタイ(緑)……。予想はしていたけどクリスマスだな。


「着なきゃだめ?」

「妹を晒し者にする気?」

「……せっかく作ってくれたし着るけどさあ。……目立つから嫌なんだよ」

「クリスマスくらい目立って良いでしょ。さあ楽しもう!」


リック

種族:人間ヒューマン Lv.50

職業:神官Lv.20max 【加護】

HP:50/50

MP:70/70〈+8〉

STR:20(+8)〈−2〉

VIT:12(+40)

INT:50(+26)〈+8〉

AGI:16(+4)

【スキル】

使役 槍術Lv.17 棒術Lv.5 索敵Lv.5 回復魔法Lv.5  強化魔法Lv.9 妨害魔法Lv.4 付与魔法Lv.1 毒術Lv.14  麻痺術Lv.14 料理Lv.1 解体Lv.7 鑑定Lv.4

【装備】

普通の槍 STR:+8 耐久:324

サンタ帽 VIT:+1 耐久:500

六花のチョーカー VIT:+1 耐久:300

スーツ(赤)VIT:+4 INT:+2 耐久:700

ファー付きケープ(赤) VIT:+5 耐久:700

シルクのシャツ VIT:+3 INT:+1 耐久:800

シルクのネクタイ(緑) VIT:+1 INT:+1 耐久:500

黒グローブ VIT:+1 INT:+1 耐久:600

黒革ベルト VIT:+1 耐久:500

シルクのズボン(赤) VIT:+2 INT:+1 耐久:600

革靴 VIT:+1 耐久:200

残りポイント:27


「真っ赤なスーツって現実だと着ないよな」

「テレビの中の芸人さんくらいだよね。でもここはVRだよ?」

「そうだな」

同意の言葉を返しつつサンタ帽を外す。リンは露骨に嫌そうな顔をしたが、そっちだってサンタ帽では無いからこれくらいは譲ってほしい。重ね着のし過ぎでAGIが下がってしまっているし。


 鏡の代わりに噴水を覗く。スーツに着られているかもと思ったが、予想に反して想像よりは似合っていた。服のサイズは装備する人に合うように変わるらしいからそれが良い方向に働いているのかもしれない。


「似合うか不安だったけど、意外と良いね」

「製作者がそれを!? 気持ちは分かるけど」

露店を見て回ったり、おしゃれなカフェでお茶をしてみたり、港の夜景を一望したり。俺たちは周囲の注目を浴びつつもクリスマスの町を楽しんだ。

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