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Brave and Partners Online  作者: 岩越透香
第四章 第二の町

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戦力増強2

「どうされましたか」

柵の中を眺めていると男性に声をかけられた。彼はNPCのようだ。ここを管理しているのだろうか。


「眺めてました。可愛いなと」

「大したものはないと思いますがね」

彼は興味なさそうな声色で言った。


「ふむ、都会育ちですか?」

「はい」

「では、あなたが住んでいる所にはこんな場所はないでしょう。ただ珍しいだけです。可愛いだなんてとんでもない。何度憎たらしいと思ったことか」

彼は軽快に笑った。口では憎たらしいとは言っていたが本当に憎んでいるわけではなく、羊たちに愛情を持って接しているというのが雰囲気から分かった。


「ここから町の中心部までは遠い。案内しましょうか」

「気にしないでください。急いでいる訳ではないので」

「そうですか。では、羊の世話をしてみるというのはどうです?」

「良いんですか?」

「はい。アルバイト代は出せませんけどね」

男性の後を追って柵の中に入る。


 俺は毛を刈る時の固定係をすることになった。羊たちはこれから毛を刈られることを知らずに呑気に草を食べている。


「こうやって持つと嫌がられないですよ」

俺にやり方を見せながら手際よく毛を刈っていく。彼のやり方が上手いのか羊は嫌がる素振りを見せない。


「やってみてください」

彼に促されるまま、真似をする。同じようにやっているはずなのに、羊たちは嫌がってしまい、暴れてしまう。


「難しいですね……」

「すぐに出来たら苦労はしませんよ。魔法じゃありませんから」

「魔法……。これなら攻撃ではないから傷つけずに出来るな」

「何をする気です?」

「拘束」

魔法の縄が羊を絡めとる。初めは出ようともがいていた羊だが、しばらくすると脱出を諦め、力を抜いていた。


「これはこれは。贅沢な魔法の使い方ですね」

「どんな使い方をしようと俺の勝手ですから」

「そうですね。では手伝ってもらいましょうか。……この拘束の場所を変えることは出来ませんか? 魔法が邪魔で毛を刈れません」

「魔法の位置をずらす……? やってみます」

拘束を使って、毛刈りの手伝いをすること数十分。仕事に慣れてきた頃に「今日はこれで終わりだ」と言われた。


「まだ一匹残っていますが……」

「あれは気にしないでください。あの場から動きませんので」

「どういうことですか? 毛刈りの手伝いなら出来ると思いますが……」

彼が言うには、この羊は寝ることが人一倍好きな羊らしい。それだけなら良いが、動くことも嫌いなようで、食事以外ではまるで動かない。動かされることも嫌うようだ。


 厄介なことに、羊は協調性が高い生物で、他の羊の行動に合わせてしまうらしい。つまり、この怠惰な羊がいると他の羊も引きづられてしまうのだとか。


「あいつは雄で旨みも少ないので、近いうちに殺処分する予定ですよ」

「殺処分、ですか……。動くようになったら、死ななくて済むんですよね?」

「何か策があるんですか?」

「いえ、ありません。でも、やれるだけのことはやりたいんです」

「好きにしてください。私は仕事をしますので、満足したら小屋に来てください。大したものではありませんが謝礼を渡したいのです」

「ありがとうございます!」

羊の死を防ぐため、俺は役に立ちそうなアイテムを探すことから始めた。


「ほら、美味しそうだぞー。……食べ物類は厳しいか。お腹が空くまで食べないとか言ってたもんな」

ため息を吐く俺の横で、イブキが必要ではなくなった果物を飛ばして遊んでいる。ユキはそれを奪おうと必死になっている。この遊びは毎回やっている。今回も勝利したユキは果物を美味しそうに食べている。小夜とハヤテも周辺を飛び回って、訓練兼遊びをしているようだ。


 動きたくなるように仕向けるのが無理ならば、動かなければ死ぬ状況を作れば良い。そう思って、禍々しい力を帯びている???を近づけてみるが反応はなし。


「今回も駄目かあ……」

俺が肩を落とすことがイブキたちが遊び始める合図になっているらしい。イブキが???を空に浮かす。


「イブキ! やめろ!」

???は鑑定不可で、何の効果があるかは分からない。だから、???でキャッチボールをすると世界が滅びるぐらいの効果があるかもしれない。そう思っての判断だった。


 風がピタリと止まった。急停止させたせいか、???は重力に従って、下へ下へと落ちていく。


 落ちた先には件の羊がいた。


 羊の周りが黒い膜に覆われる。進化とは色が反転していて、異様な雰囲気がある。


 しばらくして出てきた羊には小さな蝙蝠のような羽が生えていた。


 ……取り返しのつかないことをしてしまった。とりあえず、男性を呼んでこよう。


「な、なんでこんなところに魔物が!?」

「怪しいアイテムをさっきの子の上に落としてしまいまして……」

「動物が魔物に変わるなんて話は聞いたことがない! 他に被害が出る前になんとかしてくれ!」

俺の手違いで魔物にしてしまった訳だから、倒したくはない。だから使役しよう。


「使役!」

抵抗する様子はなく、一回で使役することができた。


「異界から来た人間だったんですね」

「この子を使役しました。名前はありますか?」

「ないです。好きに付けてください」

白いモフモフだから、雲にちなんだ名前はどうだろうか。


雲母キララ

種族:悪魔 Lv.1

位階:1

HP:10/10

MP:10/10

STR:10

VIT:15

INT:10

AGI:3(+5)

特性:怠惰、魔なるもの

【スキル】

HP自動回復


【怠惰】

怠惰。


【魔なるもの】

強い魔の力を帯びた存在。


 雲母は鉱石の名前で、雲には関係ないけどね。


 特性の二つの説明が足りなさすぎて何も分からない。怠惰は動きたがらないことで魔なるものは???を使ってしまった影響か?


「よろしくな、キララ」

キララは悪魔になろうがお構いなしに寝ている。マイペースだなあ。


 本当に動こうとしない。持とうとしてみたが、持ち上がらない。


「仕方がない。収魔リターン

キララが魔石になる。これで持ち歩くことは出来るが、出来れば外に出して一緒に冒険したいな……。

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なるほどベルフェゴールか
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