表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Brave and Partners Online  作者: 岩越透香
第四章 第二の町

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

60/94

新たな町へ2

 エリアボスの影で太陽が完全に隠れて暗くなる。上空にいるから正確には分からないが、その体長は俺の三倍はあるだろう。


 だがあいつは細かい動きが出来ない。いや、だからこそか。動きを鈍らせ、地面に落とし、俺たちのフィールドで戦おうというのが俺たちの作戦だ。


「いきます!」

アオイが放ったのは水を出すだけの魔法。威力はほとんどなく、せいぜいが水鉄砲だ。ボスもそう思ったのか、攻撃と言えない攻撃をただ受けている。


 ボスが攻撃モーションに入る。ハヤテと似た構えだから、突進スキルなのだろう。動きは読みやすい。狙いはナルか。


「はっや!」

ナルが紙一重でかわす。小回りが効かないと聞いていた割に早い。大きい分、筋力もあるということだろうか。


「でも、分かりやすいから避けやすいぜっと」

二度目の突進ではナルが避けつつ攻撃を加えた。


「突進した時に反撃する方が簡単じゃね?」

「それは言わないでくださいよ! 水浸しにしている意味が分からなくなるじゃないですか!」

「動きが遅くなっているから効果はある。ほら、反撃できるのも動きが遅くて当てやすいからだ。そうだよ、うん」

「微妙なフォローありがとうございます」

「水浸しにしたくらいで飛べなくなる訳ねえよな。雨の日に全く飛べないってなると困るし」

「うるさいですね! 水衝撃アクアインパクト!」

彼女が出した魔法の水が爆発する。先ほどと同じ無害な水だと思ったボスはそれを避けなかったため、まともに食らう。衝撃でボスは体勢を崩し、空に浮かべなくなる。体が重いのも影響していただろうか。


「作戦は成功ってことで良いですね! サンドバックタイムです!」

全員に強化魔法をかけ、俺自身も攻撃に参加する。上空に敵がいたせいで攻撃できなかったユキは特に張り切って攻撃している。イブキはMP吸収を混ぜることで高火力の魔法を連発している。ボスということもあって鳥のMPは多いらしい。


『エリアボスの討伐を確認しました』

三人とそのパートナー達で攻撃するとあっという間に体力を削り切ることが出来た。陸上の魔物とは勝手が違うこともあってHPは低めに設定されていたのかもしれないな。


「この先もさっきまでと同じような敵が出てくるらしぞ」

「違いは登るか下るかだけでしたよね」

「ってことで競争するぞ! ゴールはアグリだ!」

ナルはそう言うと、クラウチングスタートの構えを取った。


「よーい、どん! 良いのか? 走らなくて!」

ナルは負けるはずがない、というように余裕そうな顔をしている。関係していそうなステータス――AGIが一番高いのは彼だろうからな。


『パーティーから抜けますか?』

システムを操作し、パーティーから抜ける。そっちが煽ってくるのなら、こちらも本気を出そうじゃないか。


「拘束」

「え、ちょっと! それは反則じゃねえの!?」

「お前が勝手に始めたんだからこれくらい許せ! 強化AGI」

「では僕も頑張りましょうかね」

「俺にもダメージ入っているんだが!? 水衝撃で移動とかマジかよ!」

ナルの声を聞いて、振り返ってみる。するとアオイが飛んでいた。爆発を利用して飛んでいるのか、なるほどな。


「イブキ! 俺にもあれをやってくれ!」

風を受けてさらに加速する。アオイには妨害魔法は使わない。ちょっとずるいし、魔法の効果中に襲われたら危ないし。ナルに対しては……抜け駆けしようとした罰ということで。


 イブキの起こした風で移動するメリットは早い他に、足元の地形を無視出来るということもある。行きは普通に歩いたから足元を見なければいけなくて大変だった。


 魔力消費が多いことと、すぐに戦闘に移れないことがデメリットだが……。って、そんなことを言っている時に敵が出てきた!?


「風を弱めてくれ。ハヤテと小夜は倒しきれなかったらとどめを頼む」

勢いを利用して速突きを放つ。魔物は一発で倒れてくれた。スピードが乗った一撃だったからだろう。この移動方法は慣れればむしろ早く敵を倒せそうだ。


 俺たちは敵を倒しつつアオイと小競り合いをしながらどんどん山を降りていった。



「ゴール!」

宣言して、門の中に入ろうと思ったら、勢いが強すぎて盛大にコケた。後ろを見ると、アオイは他の魔法で威力を殺していた。競争には勝てたが何か負けている気がする。


「魔法はずるいって……」

走ってきたため息が上がっているナルが文句を言ってきたが、「ナルが始めたんでしょう」「魔法禁止は俺たちが絶対勝てないだろ」と二人で反論しておく。


「そういえばパーティーにはまた入った方が良い?」

「いや、要らねえだろ。この後って町を探索するくらいだろ?」

「ではパーティーを抜けておきます。ここからは別行動ですね。何かイベントが起きたら、またパーティーを組みましょう」

二人と別れて、町を散策する。自然に囲まれた落ち着ける町だ。規模はバースよりも小さいが、別荘地のようになっているのか、大小様々な屋敷が立ち並んでいる。


 不動産屋があった。屋敷はプレイヤーも買えるらしい。小さい屋敷でも高くて手を出せないが。この屋敷は最近追加された機能、本拠地機能――冒険に連れて行かないパートナーを置いたり、生産工房にしたり、仲間との秘密の会話をしたりできる。クラン単位でも個人単位でも良い――に使うみたいだ。家かあ。あっても面白いよな……。



 別荘だけでなく、食事処や宿屋もたくさんある。宿屋はバースに多くある安宿といった風ではなく、どちらかといえば高級な宿だ。


 食事処は手軽に入れそうな店から高そうな店まで揃っている。二足歩行のウサギが働いている店もある。……ウサギ? ってよく見たらリンじゃないか。じゃあ、あのウサギはしらたまか。


 リンはこちらに気がついたのか、軽く手を振ってくれた。それにしても、戦闘は得意じゃないはずのリンがどうして最前線であるこの町に居るんだろうか? ログアウトしたら聞いてみるか。



 町の奥の方、外周まで行くと、大きな建物が見えてきた。あれが職業が発見されたと話題になっていた薬師ギルドか。


 所属していなくても買い物のために入ることが出来るから入ってみる。大きいギルドということもあってか、ギルド所属のNPCが二人ほど居た。


 置かれている商品は大体が回復薬だが、毒消しや痺れ取りも置かれている。毒も薬も表裏一体ということなのか、毒も何種類か売られていた。眠り薬なんかはNPCも買うのかもしれない。


 回復薬は回復魔法があるから要らないし、状態異常にする薬は投げつけても効果があるなら、選択肢を増やすためにいくつか持っていても良いかもしれない。触っただけでダメージ、みたいな薬はここには無さそうだな。危ないから店頭には置いていないのだろう。口に放り込めば普通の薬でも効果がありそうだから、瓶に入った毒薬を少し買おう。


 鑑定すると、アイテム名と簡単な効果、製作者が見れた。鑑定を使わないと、効果が分かりやすい代わりに製作者が分からなかった。製作者名に記号が使われていたし、おそらくプレイヤーメイドだ。比較対象がないから凄いのかは分からないが……このレベルなら結構使えるんじゃないか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ