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Brave and Partners Online  作者: 岩越透香
第四章 第二の町

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新たな町へ1

 職業をようやく手に入れられたため、これで冒険も捗りそうだ。待ち合わせ場所のカルチ村に行くと、二人はすでに待っていた。


「ごめん、遅れた」

「へーきヘーき。俺らが早く着いてただけだ」

「港町からここまで遠いですからね。余裕を持ってきたんですよ」

「ワープ機能とかねえからな……。正直、めっちゃ不便」

「これから先、三つ目四つ目と町が開放されていくと両方攻略するのは大変そうです」

二人は疲れたような顔で言った。道中がレベル上げになるならともかく、中間――バース付近では弱い魔物しかいないから、わざわざ通りたいかと言われれば否である。


「まっ、そんなことより早く行こうぜ」

ナルが暗い話題を一掃する。彼の掛け声で、俺たちは次の町――山間の町アグリを目指して出発した。



 以前レベル上げに使った丘を横目に草原を進む。草原にはバースの周りに居た魔物の進化系が居た。丘の方から来た芋虫とも遭遇することもあったが、二人は徹底的に無視した。


「なあ、どうしてグリーンキャタピラーを無視するんだ?」

「なんでって、知らないのか? 常識だぞ」

「知らなくて悪かったな……」

「あなたはそうだろうなとは思っていましたよ。こいつらを倒し続けるとグリーンバタフリーが現れるんです」

呆れられてしまった。アオイには「知らないだろう」と思われてしまって、もはや諦められている。ネタバレは嫌でも、他人とプレイするなら少しは情報仕入れないと駄目だな……。


「眠りの状態異常をばら撒く上、強くて空を飛んでいるから倒すのは難しいんだ。倒しても、かなり消耗してしまうから、避けてたんだ」

「ああ、確かにあれを倒すのは折れるな。大変だった」

「大変だった、ですか?」

二人にwindさんと戦った時のことを話す。俺は神殿の武闘大会で彼が有名プレイヤーだということを知ったから実感がなかったが……。彼は最前線で攻略するような人だったらしい。


 本人も言っていた通り人付き合いは好きな方ではなく、共闘するのも稀らしい。そういった理由で、二人には驚かれ、羨ましがられた。


 彼はのんびり進める俺とは違って、最前線で戦っているのだろうから、もう共闘する機会はないと思うけどな。



 雑談しつつ草原を進んでいく。村が見えなくなった頃、周りの景色が変わり、木々も増えてきた。


「もうすぐ山ゾーンだから気を引き締めていくぞ」

「魔物の種類がガラリと変わるんだったよな」

「はい。肉食獣モチーフの魔物が増えてきます。死角が多い土地ですから、索敵を頼みます」

俺も索敵スキルは使えるが、どうせなら小夜にもやってもらおう。俺が頼むと、小夜は高く飛び上がった。どうやら、上空から索敵してくれるらしい。


 地面付近は索敵範囲外かもしれないから、俺もスキルを発動しておこう。索敵以外が出来なくなるというデメリットはあるが、戦闘に関しては俺がいなくても大丈夫そうだったからな。俺、もしかして役立たずか……?


「えっと、十時の方向に魔物だ!」

「さんきゅ。ここは俺に任せろ!」

小夜に教えてもらった方向を伝えると、ナルがそこへ行って魔物を蹴散らす。倒しきれなかった魔物はハヤテが残らず倒し切ってくれた。


「ナイス、ナル。周りにはもう敵はいないぞ」

「了解! やっぱり、索敵してくれる人がいると楽だな」

「そうですね。索敵持ちの方と組むまでに何度奇襲を受けたことか……」

当時を思い出したのか、アオイは軽くため息を吐いた。


「港町までは入り組んだ道なんだな」

「いや、多分一本道。俺らがアオイが迷いまくったせいだ」

「なんで僕のせいにするんですか。こっちで良いかあなたにも確認したでしょう?」

「お前が自信満々に言うから騙されたんだ」

「人を詐欺師みたいに言わないでください。間違っていると思ったなら言ってくれれば良かったんです!」

「二人とも落ち着いて」

「部外者は黙ってろ!」

「部外者は黙ってください!」

「……仲が良いな」

喧嘩する二人を横目に地図を見る。今のところは大丈夫そうだ。


 地図に気を取られて気が付くのが一瞬遅れる。


「二人とも、魔物だ。後ろ!」

気配を隠すのが上手い魔物だ。近づかれるまで気が付かなかった。


 気配は地面に近い。だから小夜が気がつけなかったのか。


 意識を索敵に集中させる。ナルたちの後ろにもいるが……囲まれているな。十体はいる。


「くっ」

ナルが攻撃を剣で受け止めた。今回現れた魔物は狼の魔物だ。ワイルドウルフの進化系だろうか、それよりも一回りほど大きい体を持っている。その体毛は闇に溶け込めそうなほど黒い。


「邪魔しないでください!」

アオイが放った水球に当たると狼は一撃で倒れた。耐久力はあまりないのだろう。


「そっちは任せたぞ!」

「言われなくても!」

 先ほどまで言い争いをしていた彼らだが、戦闘で足を引っ張り合うなんてことはなく、上手く連携出来ているらしい。正面は二人が居れば大丈夫だろう。問題は横から狙ってくる狼だ。


「ハヤテ、向こうの敵を牽制してくれ、倒さなくても良い! 他は俺と一緒にこっちの魔物倒すぞ!」

範囲強化を使い能力を底上げする。そのままスキルを使って狼に攻撃。するとあっさりと倒せた。職業によるマイナス補正がかかっているのにも関わらず。INT補正がかなり掛かっていたはずだから、そのおかげか。



「二人とも、お疲れ。敵が増えるといけないから早く移動しようか」

「そうですね。戦いは避けるが吉です」

その後、俺たちは出来るだけ戦いを避けながら進んだ。



 二日に分けて登っていたが、ついに山頂が見えてきた。次の町は山を超えた先にあると聞いたから後半分ほどで着くだろう。


「もうすぐ頂上……。次の町まで折り返し地点ってことか」

「何言ってんだよ、リック。山場はこれからだぜ」

「そうですよ。山頂にはエリアボスがいるんですから」

調べたところによると、エリアボスは空を飛ぶ鳥型の魔物。的は大きく動きは遅いものの、相手の土俵――空中戦を強いられるため強敵だ。


「着いた! うおっ、良い眺めだな!」

一足先に頂上に辿り着いたナルが感嘆した。前にはアグリの町並みが、振り返るとバースとその周辺が見える。


 頬を撫でる風が気持ち良い。仮想現実(VR)とはいえ、自然と触れ合うのはいいものだ。


 次の町アグリは木々に囲まれた小さな町という印象だ。ん? 町から少し離れた所にあるあれは温泉? どんな効能があるのだろうか。いや、そもそも入れるのか?


 大きな影で我に返る。俺たちはのんびり景色を見に登った訳では無い。


「強化魔法を」

「ああ!」

範囲強化魔法で全員を強化する。準備は出来た。


『ボスエリアに入りました。エリアボスとの戦闘が始まります』

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