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Brave and Partners Online  作者: 岩越透香
第三章 時の神殿

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神官を目指して3

 何度目かも分からない挑戦。相変わらず、ルカさんは基本的に自分から攻めてこない。反撃をするだけだから自分から積極的に攻めなければならない。


 全身を使って突きを放つ。受け流されてしまったが、それくらいは想定内。どんどん攻めて隙を作る。だから、一歩引くのではなく一歩踏み出す。棒を持ち替え、ルカさんの足元を狙う。予想通り防がれた。


「強化STR」

「なるほど」

強化魔法を使って防御を強引に突破しようとしたが、それを察知した彼は後ろに飛び退いて回避した。そう簡単にはいかない、か……。


「強化魔法を使われることは想定していませんでしたが、禁止にしなかった私の落ち度でしょう。ですので、私も使わせてもらいます。強化STR」

彼の目つきが変わった。彼はINTもきっと高いだろうから、眠れる獅子を起こしてしまったのかもしれないな。だけど、もう引くわけにもいかない。


「強化AGI」

強化されたスピードでまずは上段打ち。彼は俺の攻撃を受けるのではなく、攻撃を合わせてきた。


 重い。手が痺れて棒を手放したくなる。今までとは桁違いの力だ。INTが高いとここまで強化されるのか……! が、ここで諦めたら腹に強烈な一撃を貰ってゲームセットしてしまう。


 彼はAGIは強化していなかったため、スピードは据え置きだ。スピードを活かして連続して攻撃する。反撃の余裕がないのか、彼は受けに回っている。だが、有利ということはない。何か隙を見つけなければ。



 途切れた強化魔法をかけ直す。狙いは彼の強化魔法が切れる瞬間。俺自身も強化魔法を使っているからか、そのタイミングはなんとなく分かる。


 今だっ! 棒を弾くために力一杯振り抜く。


「切れ目を狙って……! 強化STR!」

彼はすかさず強化魔法をかけ直し、俺の攻撃を弾き返そうとする。彼は強化魔法を使うと使用前と比べると動きが大雑把になった。だから、この動きは想定済みだ。


 彼の強化魔法のかけ直しと共に棒を持ち替え体勢を低くし突きを放つ。攻撃動作に移っていた彼には回避することができない。


 受け身を取りつつ、立ちあがろうとした彼の首元にピタリと棒を突きつける。


「頑張りましたね。参りました」

「ありがとうございます!」

彼はふっと笑うと握手を求めた。俺はその手を取る。


「うおっ」

彼は俺の手を引っ張った。予想外の行動に驚いて、回避できなかった。そのまま床に倒れ込む。


「ちょっとした仕返し、ですよ」

彼はイタズラが成功した子供のように笑った。



「既に他の方の儀式を見て、どのようなものかは理解しているとは思いますが、念の為説明しましょう。まずは着いて来て下さい」

ルカさんの後ろを静かについて行き、礼拝堂の奥へ行く。彼はやはり像の前で止まった。


「この儀式はこの世界の神に修練の成果を報告し、その結果に応じた祝福を賜るものです。神を模ったこの像の前に立ってください」

言われた通り、像の前に立つ。彼は何かを唱えている。その言葉に呼応したのか、俺の足元に魔法陣が浮かび上がった。


 彼が祈ると同時に俺を暖かいものが包み込んだ。まるで光のシャワーだ。光なのに眩しくない。なんだか不思議な感じだ。


「無事、あなたは職業を得ることができました。確認してみてください」

「おお!」

職業の欄が新たに追加されている。ステータスも色々変わっているみたいだ。


リック

種族:人間ヒューマン Lv.36

職業:神官Lv.1 【加護】

HP:20/20

MP:50/50〈+8〉

STR:20(+6)〈−2〉

VIT:12(+5)

INT:50(+1)〈+8〉

AGI:10(+5)

【スキル】

使役 槍術Lv.13 棒術Lv.1 索敵Lv.5 回復魔法Lv.2  強化魔法Lv.7 妨害魔法Lv.2 付与魔法Lv.1 毒術Lv.10  麻痺術Lv.10 料理Lv.1 鑑定Lv.4

【装備】

普通の槍 STR:+6 耐久:295

普通のシャツ VIT:+2 耐久:87

普通のズボン VIT:+2 耐久:87

残りポイント:15


【加護】

神官が持つ職業スキル。スキルレベルは神官の職業レベルに依存する。レベルの数だけVITとINTが上昇する。


 職業スキルはその職業についている時に使えるスキルらしい。レベル二十を超えると何か能力が覚醒するらしい。


 気になる点としては、槍術のレベルが上がっているのと、残りポイントが増えているってところだ。槍術は模擬戦で槍っぽい武器を使っていたからか? 残りポイントが増えている原因として心当たりがあるのは職業だな。これもレベル上昇で貰えるのかも。


「回復魔法や強化魔法を使ったり、魔物と戦闘することであなたの力は増すでしょう。あなたの良き冒険を祈ります」

別れる雰囲気にされているが、いくつか聞きたいことがある。嫌がられるかもしれないが、どんどん聞こう。


「能力の上昇幅ですか? 私たちはステータスを見る力を授かっておらず、よく分かりませんが……。感覚的に、MP(魔力量)INT(知力)は大体十五パーセント上がり、STRは十パーセント下がっていますね」

「最初に聞くべき質問なんですけど、職業が神官ということによるデメリットってあるんですか?」

「STRが下がるくらいですね。他の職業から転職された方はその職業のスキルを使えなくなったり補正が変わってしまったりするためそれもデメリットと捉えて良さそうです」

転職はもちろんできる、と。他の職業だとスキルと補正が失われるのは妥当ではあるな。


「ありがとうございました!」

ルカさんに頭を下げる。


「どういたしまして。リックさん、ご武運を」

礼拝場には用がないため、訓練の邪魔にならないように、サッと退出した。


「『神官になれたから、そっちの都合が良くなったら一緒に冒険したい』っと。これで良いかな」

ナルにメッセージを送ると、すぐに返信が来た。


「了解。俺らは反対側の町を散策しているところだ。ログインできる時間を教えてくれ」

いつでも良いと打ち込もうとしてやめた。もうすぐ九月……。学校が本格的に始まると、夕方くらいしか空いていない。学校が近いから朝も出来なくはないが、朝から待ち合わせして冒険とかヘビーすぎる。


 その旨を返信して、メッセージ待ちの時間でバースに戻り、パートナーたちと遊ぶ。冒険の時間は夜ということに決まった。明日からは冒険だ!

これで第三章は終了です。番外編を一つ挟んだあと、第四章が始まります。



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