神官を目指して2
投稿遅れました。すみません。
「かかってきなさい」
ルカさんは地面に置かれていた木の棒を手に取り、微笑んでいる。彼も棒術で戦うということだろうか。
俺が攻めてもいいのか悩んでいると、彼は「怖いですか?」と挑発してきた。そんなに余裕なら、と俺は棒を握り締める。まずは軽く突き出してみて、様子を見てみよう。
「え?」
瞬間、俺の体は地面に投げ出されていた。
鈍い痛みが背中に走るが、そんなことも気にせず、ただ天井をぼうっと眺めていた。
「リックさんは受け身の練習もした方がいいですね」
ルカさんは俺の顔を覗き込み言う。息を一つも乱さず、淡々と言われたから、少しムッとなって愚痴を溢す。
「力が弱いなんて嘘だ……」
「本当ですよ。STRが弱くてもスキルがあれば戦えますから。強化魔法で底上げもできますし」
「今は使っていたんですか?」
「使ってませんよ。強化魔法が必要なのは、魔物と戦う時くらいです」
結局、力は弱いじゃないか……。俺がこぼした言葉は聞こえていなかったようで、彼は他の人との模擬戦をするために戻っていった。
「はあ。一瞬で……」
俺は非戦闘職であるはずのルカさんにあっさりとやられてしまったことが悔しかった。
「回復しまーす」
回復魔法をかけてくれたプレイヤーは回復魔法の練習をしているということだろうか? だがもう扱えているから……ボランティア?
「ありがとうございます」
「これがウチの修行なんで。あ、回復魔法と強化魔法はレベル五になるまでなんですよー」
彼女は軽く挨拶をすると、他の人の回復に向かった。気がつくと、俺の後に戦っていた人もやられていた。
他の人たちが戦っているのを見ると、ルカさんは防御と受け流すのが得意なようだ。俺も多分、サクッと受け流されて負けてしまったんだ。なら、慎重に立ち回ろう。
「よろしくお願いします!」
「うん。良い心掛けですね。よろしくお願いします」
俺はすぐに攻撃はせず、彼の隙をうかがってみる。が、彼の構えは美しいと思ってしまうほど完璧で、それは一向に崩れる気配はない。こちらが動かないと隙も造られない、か……。
「来ないならこちらからいきますよ」
彼は棒を構えて上段の構えを取り、そのまま棒を振る。俺はなんとか躱し、ガラ空きになった胴体を狙って突く。しかし、彼は棒を素早く引き戻し、俺の攻撃を弾いてしまった。
「くっ」
逆に隙だらけになってしまった俺は鋭い一撃を食らってしまった。力はあまり籠もっていなさそうだったのに……。彼の棒が攻撃の時に伸びたように感じた。まさか、本当に伸びているわけではないだろうから、何か突く時のコツがあるのだろう。
「はい次」
彼は俺の方を見向きもせず、他のプレイヤーに向けて言った。動き方は見て覚えろ、体で感じろってことか……。
回復をしてもらいながら、他のプレイヤーとの模擬戦を観戦する。次の人も棒術をやるらしい。小柄なその少女はどこかで見たことがある。
「あれはpercussionさんですよー」
「ああ、武闘大会にも出ていた……」
「そうそう」
彼女は巧みに棒を扱い善戦するも、扱い方はルカさんの方が一枚上手だった。彼はなんてことないように、攻撃を受け流し、的確に反撃していく。
彼女が攻勢に転じたのは、ルカさんが受け流しきれず、防御した時。彼女はルカさんをガードの上から吹っ飛ばす。
彼は棒も上手く使って被害を最小限に抑え、追撃に備えるため、再び構えた。が、彼の動きは遅く――いや、彼女の動きが速かったと言うべきだろう――彼は攻撃を受け、地面に倒れ込んだ。
「参りました」
彼の言葉で周りのプレイヤー達が沸いた。どうやら、彼女が初めて一本を取ったプレイヤーらしく、長いこの戦いのゴールが見えてきた、ということらしい。
「percussionさん。こちらへ来てください」
ルカさんは彼女を礼拝所の奥の方、像の前まで連れて行った。遠くて声は聞こえないが、像の前で何かを唱えているらしかった。それが唱え終わったのか、彼らを光のベールが包む。
彼女は神官になれたらしく、大きくガッツポーズを作った。彼女はルカさんに軽く挨拶をした後、早々と礼拝所を出ていった。
「ついにあなた方の中から神官になった者が現れましたね。この調子で頑張っていきましょう」
ルカさんの言葉で俺たちは勇気づけられた。しかし、地獄の特訓はまだ始まったばかりだった。
「構え方が違います」
「重心を意識してください」
「足の動きが違います。これでは避けきれません」
「動きが遅い」
彼の特訓は終わりが見えない。模擬戦でボコボコにされ、一言アドバイスを貰い、回復してもらう。このサイクルが果てしなく続いた。
何日か続くと回復魔法や強化魔法を習得しようとしていた人は既定のレベルに達し、神官になった。
そういった魔法を覚えたかった人たちが全員神官になり、居なくなったその時、ルカさんが「良かったですね。ついでに回復魔法も鍛えられますよ」と言った時の恐怖は忘れない。さらりと大したことでもないように言うからタチが悪い。
それでも、俺は諦めるつもりはない。
そろそろ、ここで模擬戦をし続けて一週間になるが、ナルたちとの差が広がらないためにも合格したい。
「よろしくお願いします!」
何度目かも分からない挨拶をして、構える。俺の特訓はまだ続く。
第一章の終わりに運営サイドのお話を一話追加しました。読んでいただけると嬉しいです。




