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たぶん改稿します……。
申し訳ない。
「それで……アンタはどうやって、ここに帰ってきたんだ?」
喉が渇いてきたが、この部屋には水を汲むものどころか、湧きでる水そのものがない。
風が入る窓はないはずなのに、一覇の動揺に呼応したかのように揺らめく蝋燭の光。
それに照らされて、新鮮な生き血のようにぬらぬら輝く、巨大な賢者の石の壁面。
それらの一連の光景をぼんやり眺めたあと、カグヤは何事もなかったかのようにふたたび口を開いた。
「妾の悪運がよっぽど強かったのかの……偶然通った旅人がいて、妾は命からがらここに舞い戻った」
旅人と出くわしたとき、とうに持ち合わせていた食糧と水が尽きてカグヤは倒れていた。
旅人に水と食糧を分けてもらって介抱され、《神酒の海》でも最南部の街まで送ってもらった。
幸いにしてカグヤの身分はすぐに割れて、労することなくクリスタルパレスに送り返された。
「あらあらカグヤちゃん。大変だったわね、大丈夫?」
玉座の上でしらじらしくも労いの言葉を述べる鷹乃を、カグヤは自分の視線で彼女に穴が開けばいいと思いながら睨みつける。
「…………お主の悪事は、いずれ妾が暴露してやる」
「あら……わたくし、なにかした?」
全力でとぼけた、その声すら憎たらしい。
あくまで知らぬ存ぜぬを貫くつもりなのだろう。
そもそも明らかに証拠らしきものは持って帰れなかったわけだし、この場でカグヤが有利になる材料はこれっぽっちもない。
それでもカグヤは強気の瞳で、鷹乃を見据える。鷹乃も、カグヤの視線を余裕で受け止めた。
「とぼけるのも今のうちだ。妾が必ず……その玉座から引きずり下ろしてやるぞ、魔女め」
「……待っているわよ、お姫サマ。いえ、どうやらあなたが勇者のようね」
鷹乃はくすくすと嗤い、艶やかに脚を組みかえる。美しく艶やかな着物の隙間から、白いふくらはぎが覗いている。
その鋭い目つきは、カグヤがいままで見たことがないものだった。
ぞくりと、背筋に悪寒が走る。
「果たしてカグヤちゃんは、囚われのお姫サマを助けてあげられるかしら、ねぇ?」
「……?」
そのときはまだ、鷹乃が言っている意味がわからなかった。




