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戦場の匂い
懐かしい、そんな感覚がしたんだ。
戦いなんて、そんな非日常的なもの。まともにやったことないのに。おかしいよね。
敵意で、殺意で空気が肌が、ピリピリする感覚。
敵に刃を向ける、傷つける傷つけられる緊張感。
刃と刃がぶつかり合って、散らした火花の臭い。
クラクラするほどの、不明瞭な死への恐怖。
遠くから聴こえる、ライフルの意外と軽い射撃音。
向けられた刃の、その痛み。
ぜんぶ、ぜんぶ、知っていた気がするんだ。
あぁ、戻ってきたんだと。嬉しさすら感じられる。
僕はいつも通りの平和も愛しているけど、同時にこの戦場の空気が大好きなんだと。
戦うことで自分の生を確かめているんだと。
誰かに、ほんの少しだけ、話したことがあったっけ。




