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曽祖父の背中
お久しぶりの投稿です。
よろしくお願いします。
曽祖父の背中が怖かった。
幾千もの戦場を駆け抜けた、その英雄の背中。
自分とは似てもいない、たくましい背中。
いつもなにも言ってくれない、その背中。
「頑張れ」とか、「よくやったな」とか、曽祖父はそういった気の利いたことは決して口にしない。
頑固とか雷親父とかそういう次元を超えた、ただひたすら畏怖の存在。
それでもこっそり、執務室で仕事をする曽祖父の背中を見つめることが、僕の幼い頃の習慣だった。
小さな灯りに照らされた背中は、なぜか時折小さく見える。
まるで、なにかの淋しさを堪えているみたいな……。
もう少し踏ん張ってみたら、少しは褒めてくれるのかな?
喜んで、笑顔を見せてくれるのかな?
もう少し、ほんの少しでも、僕が強かったら……おじいさまは、僕のことを好きになってくれるのかな?
僕が一覇みたいな、ヒーローだったら……。




