戦場を廻る殺意
硝煙のなかを、ひと息に駆け抜ける。
もう実弾は尽きていて、霊子も枯渇していた。
体力には自信があったが、それもだいぶ消耗して、一挙手一投足が鉛を抱えているような感覚だ。
残されている武器は己が身と、大振りのサバイバルナイフが一本、自決用の手榴弾が一個だけ。
ナイフなんて効くような相手ではない。ましてや拳でまともに突き合わせるような、まともな神経を持ち合わせちゃいない。
戦うしか道はない。
こいつらを殺さなくては、ワタシは生きられない。
こいつらを殺さなくては、ワタシは前に進めない。
殺戮の血に染まった手のひらが、嬲れ殺せと叫んでいる。
八瀬童子の言葉が、脳裏で繰り返された。
「生きよ、童女。儂をその手で殺しにくるがよい……憎悪に濡れたその手で、な」
そう嗤って、八瀬童子は煙のように消えた。
いくら探しても、あいつが見つかることはなかった。
だから。
「一匹残らずっ……この手で殺してやる!!!!!!」
雄叫びをあげて、ナイフ一本に残り滓の霊子をすべてかき集める。ナイフの刀身が、百々子の持つ水色に輝く霊子に包まれた。
鬼魔の群れに特攻し、夜叉のごとくナイフを振るう。鮮やかな青い軌跡を描いて、ナイフが赤黒い化け物たちを斬りあげた。
血の乱舞に紛れて、ワタシの汗も飛び散る。
————今日もワタシは自らの手を穢れた血で染めて、足掻き生き抜くんだ。
ワタシの大切なものを奪ったあの女を、この手で殺すその日まで。




