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亡霊×少年少女  作者: 雨霧パレット
亡霊×少年少女
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亡霊×少年少女

第1話完結です!次回から第2話ですよ〜!

大幅改稿中ですので、色々おかしい点があります。

 年が明けて二〇〇七年一月八日、児童養護施設ひなぎく園。

 病院から用意されたタクシーに乗り込んで三十分。門扉で降りて義母の明日香とともに礼を述べ、その広い玄関までたどり着くと、義妹と施設の子どもたちが待っていた。

「一覇、退院おめでとーっ!」

 すぱーんすぱぱーん、と小気味のいいクラッカーの音とともに、一覇は明るい顔と声で出迎えられた。

「……おう」

 一覇はその集まりように驚きつつも、なんとか彼らに応えることができた。

「よかったわ、一覇くんが無事に帰ってきて」

「一覇っあとで宿題うつさせてね!」

「もう始業式終わってるでしょ!りょうちゃんは自分でやりなさいっ」

 それぞれに会話を繰り広げて去っていく面々の背中に、一覇は思いきって問いかけた。

「なぁっ……なんで、ここまでしてくれるの?オレたち……つまり他人じゃん!?」

 たとえばここで「家族なんだから」とか、テンプレートな答えが返ってきたら、一覇はいつも通りでいられたのかもしれない。

 だけど一覇の曖昧な問いに、残っていた義妹がきょとんとしたあと、当然のような笑顔で答えた。

「おにいちゃんは淋しがりだから」

『“……一覇”』

 菜奈の声があの優しい笑顔と一緒に、脳裏で鮮やかによみがえる。

 一覇の内包された悲しみと淋しさは、みんな気づいてくれていたのだ。

『「傷つくこと、傷つけられることを恐れないで。それがきっと、君の力になる」』

 ひとは傷つくもの。

 どんなに傷つき、折れて、泥だらけになり、汚れてしまっても。

 たとえこの脚が折れて砕けてしまっても、それでもオレたちは進むのだ。

 いつだって、世界はそういう風にできている。

 だから大丈夫、オレはこの世界で“生きて”いける。歩いていけるよ。

 できるよ、菜奈。

 もし神様がいるのだとしたら、きっとオレのもとに彼女を遣わせてくれたのだろう。

 なんて、柄にもないことを考えた。

 一覇は一歩ずつ踏み出して、すべての傷を背負って光のなかを進んだ。


 ————そしてオレたちは、もう一度出会うんだ。


 これは、少年少女のはじまりの物語。

 彼らがせかいの真実を知るのは、それからおよそ四年後のことだった。



 《ボックスガーデン・プロジェクト》の発動まで、35,064時間。

 下弦の月はまだ遠く、國はひどく荒れている。

 太陽は深く沈み、ひとびとは怒り狂っている。

 それでも彼女は、いつまでも彼を待ち続ける。

 すべてはあの日の約束のために、あの気高く揺れるキンモクセイのしたで待っている。




 亡霊×少年少女

 第一話 了

第1話完結!!

改稿と最新話と新作、がんばります!!

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