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第72話 調査結果② 



 翌朝からまた、朝一で北門前に集合して、北の森で迷いの魔樹の捜索を開始した。


 昨日と同じように親株になりそうな魔樹や、魔素が濃い場所にあるのだけは急成長を警戒して間引きながら、『マップ作成』に迷いの魔樹の位置をマーキングしていく。




 その途中で、一体の霧の魔樹に初めて出くわした。


 パーティーを結成するときにラグナードから聞いていたけど、その名の通り霧を発生させ惑わせる個体らしい。


 その霧は広範囲に広がり視界を奪うだけでなく、やはり幻術効果も含んでいるのだとか。

 ただの霧かと思っていたらいつの間にか捕らわれているって感じで気付きにくく危険性が高いので、優先的に討伐しないといけない。




 私の『索敵』スキルはまだ1Kmぐらいしか見透せないので、ラグナードに教えて貰わなければちょっと危なかったかもしれない。


 彼の『索敵』はレベル5もあるから、障害物の多い森の中でも常に広範囲をカバーできる。

 それは余裕で、一番耐性のないリノが幻術に引っ掛からずに済む距離でもあった。

 上級冒険者がこうして一緒にいてくれると、森の中奥に来るに当たって安心感が違うし、本当に彼とパーティーを組めてよかったよ。



 今回もリノには念のため、幻術の及ぶ範囲外にある樹の上で荷物と一緒に待機してもらっているけど、迷いの魔樹討伐の時より距離が倍近くあるのでちょっと心配。


 急いで討伐して帰って来なきゃね。







 近づくにつれて、微かに水音がするなぁと思っていたけど、着いてみて驚いた。


 魔樹の下に小さな水溜まりが出来ていたんだよね。


 霧のせいで視界が悪いけどよくよく見てみると、樹皮から絶え間無く水が染みだし滴り落ちている。樹液なのかな、甘くて美味しそうな匂いが辺りに充満していた。


 どうやらその甘い水の匂いで獲物を誘き寄せて溶かし、消化・吸収して栄養を補給して成長と繁殖に役立てているみたい。


「甘水が樹全体を覆っていて、火魔法にも耐性があるから効かないんだ。もちろん、他の魔樹と同じように水魔法も元気になるだけだから使えない。霧の魔樹を魔法で倒すには、土魔法か風魔法を使うしかないんだよ」


 物理攻撃だとやっぱり危険度が増すし、大剣では歯が立たないらしいから、魔法攻撃が一番効果があるらしい。


「なるほど。じゃあ、私も風魔法で援護した方がいい?」


「いや、大丈夫だ。この大きさならまだ俺の土魔法で倒せるからな」


「わかった。魔石以外にも取れる素材はあるのかな?」


「あるよ。あの樹液がそうだ」


 何でもあの霧の魔樹は、ほぼ水分で出来ているらしくて、倒して魔石を抜き取ると形を保てずにドロドロに溶けてしまうんだとか。


 そこから固形物になるまで水分だけを抜き取り、濃縮させたものが幻術耐性の素材として使われるそうだ。




 ラグナードの土魔法はレベル3とのことで、さっそく放った魔法が霧の魔樹の核に命中! 


 危なげなく一撃で討伐してくれたので、続けて生活魔法の『乾燥』を二人で使い、一気に仕上げてしまうことに。液体だと持ち運びしにくいし、ある程度まで固めておきたいんだよね。


 それに液体より固形物にしておいた方が買取価格も上がるらしいし、水分が抜けると小さくなるから嵩張らないし……。


 そうして出来上がったものは見た目が琥珀色で、消化しきれていない何かの骨みたいなのが残ったまま固まっちゃってるけど、スライムぐらいの柔らかさがあった。


 後で錬金術師が不純物を取り除いてきれいにしてから硬化するそうなので、この状態で納品したらいいみたい。


 水分が完全に抜けて硬度が増すと直接触れても大丈夫だけど、今の状態で触ると皮膚が溶けてしまうそうなので、ラグナードが専用の手袋と革袋を使って回収してくれた。


 最後に聖魔法で『浄化』してから『魔力感知』スキルを使い、聖魔水晶を探してみたんだけど、残念ながらここにはなかったんだよね。どうやら先程の樹液溜まりに全て溶け込んじゃったみたい。


 少しがっかりしてたら、その方が樹液により多くの魔力が含まれている事になるから素材としての価値が上がって、買取価格も上昇するんだと教えてもらった。

 意図したわけじゃないけど、一番いい結果になったみたい。よかった。


 回収後は魔力に惹かれて魔物が寄って来ない内にと、リノのいる樹の下まで急いで戻っていった。







 彼女と合流した後、ラグナードの『索敵』を上手く使って、魔物を避けながら移動を開始した。


 これ迄のところは昨日よりも魔樹が少なく、スモールトレント付きの個体など、大きくて緊急性の高いものにも出くわしていない。


 この辺りは思ったより森の状況はひどく無さそう。このまま見つからないといいなぁ。




 お昼休憩の後、また調査を再開し道なき道を進んでいる時……。


 前方に白くて丸い謎の物体がいくつもくっついている奇妙な樹木が見えてきた。


 何だろ、これ?


『鑑定』してみると、この白いのは「白チーズ茸」という茸らしい。美味しそうな名前! なんかもう、聞いただけで美味しいのが想像できちゃうっ。


 ワクワクしながら更に詳しく視てみると……。



 【 白チーズ茸


  効能:滋養強壮作用


  可食:生食不可

     チーズのような風味があり美味   

     乾燥させると長期保存できる


  採取:球型の茸で軸は殆どないが、樹の幹にしっかりくっついている

     25~50cm程の真っ白な茸を採る 】



 魔法的な効能はないみたいだけど栄養豊富みたいだし、わざわざ美味って『鑑定』に出てるくらいだから絶対おいしいよね。食べてみたいな!


 ラグナードによると、居酒屋でも人気の食材らしく、雨の月から夏にかけてが主な収穫時期だから、特に今の時期は品薄で買取価格もいい値が付くそう。


 薄く切って軽く両面を炙ってやると、チーズの風味がいい感じにでた美味しいおつまみになるし、一定の温度を越えるとトロトロに溶けちゃう性質があるみたいで、そうして食べるのもまた堪らなくいいんだとか。


 小鍋で溶かしチーズフォンデュのようにして食べたり、パンの実を食べやすい大きさに切った上に乗っけてグラタンのようにして食べたりと、お店によって創意工夫がされ、とっても美味しいらしい。


 なんか聞いてるだけでお腹空いてきちゃったっ。


 木の幹にポコポコと寄生していて、大きいものは両手で抱えきれないくらいになる真っ白なキノコ。見た目はオニフスベに似ているかな?


 二日で大きくなり、十日程で胞子を噴出してしぼんでしまうので、ちょうどいい収穫時期に出会うのが難しいんだとか。

 目の前には、食べ頃のがいっぱいくっついている。私達のパーティーには『幸運』スキル持ちが二人もいるからか、いい時に来れたみたいっ。嬉しいな!


 一旦、収穫さえしてしまえば萎むことはなく、乾燥させて長期保存もできると鑑定結果にも出ている。


「これは採るしかないね!」


「ですね! 私の村では沢山採れたとき、贅沢に厚く切ってステーキにして食べてましたっ」


「なにそれ美味しそう! 自分達用にも絶対欲しいっ」


「よしっ。じゃあ、魔樹の捜索も上手くいっているし、今日はこれを収穫してから帰るか!」


「「賛成!!」」



 大きな白チーズ茸から収穫しているから、沢山見つけたけど三人の背負子に背負える分だけだとそんなに採れないかなぁ。


 それに『鑑定』結果に出ているように幹にしっかりとくっついているので、一つ採るのに時間もかかる。

 美味しいって聞いちゃうともっと欲しくなるけど、仕方がないよね。


 硬いので万能ナイフのノコギリ部分を使って、一つずつ丁寧に切り取っていった。


 まだまだいっぱい残っているので、また近いうちに来ようと約束して今日はもう帰る事にした。






いつもお読みいただきありがとうございます。

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