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第69話 戦闘中



 逃げてきた道筋で私達と鉢合わせし、びっくりしたのか一瞬動きが止まってしまったスモールトレント達。


 焦ったように、すぐ根っ子を使ってピョンピョンと飛び跳ねながら、短い枝をバタバタ振り回して攻撃してきたっ。


 うん、頑張って攻撃しているんだけど……届いてない。振り下ろした枝はリーチもスピードもなく、私達に当たることなく空振りしてしまい、ヨロけちゃってるね。

 短い根っ子で踏ん張ろうとしてバランスを取り、なんとか転げないようにと必死でジタバタしているから隙だらけだし……う~ん。


 ――な、なんかその姿が魔物なのに可愛く見えてきて、困るんですけどっ。


 ドジっ子みたいな戦い方に気が抜けそうになるけど、あんなでも魔樹の幼体なんだし油断しちゃ駄目だ。しっかり気合いを入れ直さなきゃ!




 本来は物理攻撃じゃなく幻術攻撃が得意なはずなので、よっぽど相手に近づかないと命中しない短い枝での攻撃をしてくる内はあんまり脅威じゃない。スピードもないし。


 当たっても根っ子と違って溶解液を出さないから、当たり所が悪くなければちょっと痛いだけで済むし。


 それにラグナードに本体を倒されて慌てて逃げ出してきた個体達だからか、集団で連携して幻術を使うという、私達にとっては厄介な選択肢をとってこないんだよね。


 むしろ、一体でも生き残ることに賭けているみたいで、他の個体が私達と戦い出したのに協力せず、その隙を突いて戦線から離れようと動き出すものもいる。


 でも、こうしてバラバラに動くのならチャンスだ。


 個別だと弱いし、本格的に逃げられる前に倒してしまおう。


 スモールトレントも迷いの魔樹と同様に、魔鉄製の武器による物理攻撃と火魔法が有効だということなので、リノは新調した短剣で接近戦を、私は火魔法の『火弾』で逃げ出そうとする個体から先に遠距離攻撃をしかけながら、一体ずつ着実に数を減らしていった。

 



 私達と彼とで、逃がさないように挟み撃ちにして討伐していき、やがて周りに動く小さな魔樹が居なくなり合流する。


 動きは遅いのに、数が多かったので何体かは逃がしてしまった。それでもほぼ全て、討伐出来たと思う。よかった。


「よしっ、終わったな」


「まだ後始末が残っているけどね」


「ですね……倒した魔樹と魔素溜まりの処理の方が大変そうです」


「この数だからな。手分けしてさっさとやるか」


 あちこちに散らばったスモールトレントを迷いの魔樹の近くに集め魔石だけ抜き取ると、火魔法の『火炎噴射』と『消火』で苗床にならないように消し炭にしてしまう。

 迷いの魔樹が居座っていた魔素溜まりごと聖魔法で『浄化』し、土の中から聖魔水晶を取り出す。


 ここまでしっかりした後始末をするには、どうしても留まる時間が長くなってくる。


 必要なことなんだけど魔法もバンバン使っているし……やっぱりこうなっちゃうよね。


 ――まだ作業中なのに、他の魔物にロックオンされちゃいましたっ。







 ラグナードに注意を促され、私の『索敵』にも一つ表示されたと思ったら、あっという間に塗り潰されていってる。動きが早い。


「……囲まれたな。上位個体がいるゴブリンの群れだ。連携してくるから厄介だがこの数なら三人でいける。ここで迎え撃つぞ!」


「はいっ」


「分かった」



 今からでは逃げられないと判断して、襲撃に備える事にした。


 大きな迷いの魔樹を倒した跡地は、鬱蒼とした森の奥地にしては少し広めの空間が出来ており視界が確保しやすい。

 『索敵』スキルのおかげでどこから来るかが分かるし、下手にこの場所から移動せず、迎え撃った方が戦いやすいだろう。


 私は武術スキルもなく接近戦では足手まといになるので、いつも通り遠距離からの魔法攻撃を担当する事に。手近な樹にスルスルと登ってその時を待つ。


 リノとラグナードは背中合わせになって、それぞれ大剣と短剣を構え、魔物の群れがやってくるのに備えた。




 ガサガサっと茂みが揺れる音と共に、木々の隙間から一体、二体、三体と次々ゴブリンの姿が見え出した。


 すかさず用意していた魔法を放ち、先制攻撃を開始するっ。


 ラグナードも、距離がある内は私が対処しているのと別方向から来る奴等を、魔法で攻撃して数を減らしていっている。


 そうして接近戦になるまでに十数は倒したはずなんだけど、困ったことに数が多いので一向に減った気がしないんだよね。


 絶え間なく放たれる魔法の隙間をぬって、ウギャウギャと騒ぎながら四方から一斉に迫って来て……。


 ――ついに二人と激突した。




 接近戦になったら主にリノの後援をすると決めてあったので、彼女の背後から向かって来ようとした個体を、魔法攻撃で削っていく。

 ラグナードの言った通り、上位個体に率いられ小賢しくなっているゴブリン達は、戦闘力が低い私達の方を先に排除しようとこっちに群がって来た。


 個別だと私達の方が強いんだけど、こうして少し知恵をつけた魔物に集団で連携して向かって来られると討伐の難易度が上がる。


 剣を持つ個体は少なく、主に素手や棍棒を使っており、石を投げてくる以外は弓矢や魔法などの遠距離攻撃をするものもいない。

 安心しかけたんだけど、どうやら魔力量が多い個体が身体強化をしているらしくて、油断出来ない相手だと分かった。

 やけに素早い動きを見せたり、リノの振るう短剣の刃が思ったほど通らない個体がいるなぁと気づいて『魔力感知』で見てみて判明したんだけどね。


 私の魔法は今までより精度も威力も上昇しているので問題ないんだけど、リノには地味に細かな傷や打撲が増えてきているし、長引くとまずい。

 混戦状態で危険だし、身体能力が上昇している個体を先に倒さないと。彼女に当たらないよう、集中して魔法を放っていく。


 登っている樹に向かって来るゴブリンを倒しながらもリノの援護をし続け、そうやって戦っているうちに果てしなく感じて精神的に疲れが出て来てしまった、その時……。


「上位個体が近いっ。ちょっと行ってくるから少しの間、耐えてくれ!」


「了解!」


「はいっ」


 いつの間にかゴブリン達の指揮官が前線まで出て来ていたらしい。


 奴を倒さないと群れの攻撃は止まらないから、ラグナードが倒しに行くことになった。


 でもその前に高位の冒険者らしく、一方向へと誘導して集団になったゴブリン達を範囲魔法で一気に殲滅し、私達の安全を確保してから戦線を離れていった。一瞬であの数を引き付けて倒すなんて流石です、すごいっ。


 ありがたいことに、残りは二人でも何とかなりそうな数にまで減っている。


 よしっ、もう一頑張りしますか!






いつもお読みいただきありがとうございます。

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