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第68話 スモールトレント



 六級冒険者の(但し実力はもっと上)彼が今回、九級と十級の新人冒険者である私達とパーティーを組んでくれた理由の一つに、一緒に行動した方が効率がいいスキルを持っていたことが挙げられる。


 そのスキルとは、私の持つ聖魔法の『浄化』だ。


 元々、聖魔法の素質があるものが少なく、冒険者となると更になり手がいないから稀少な存在だったみたい。

 態々危険な冒険者稼業に就かなくとも教会や貴族などに高額で雇ってもらえるし、町中での仕事も引く手あまただから、それも当然かもしれない。


 長寿種族は人族より聖魔法の素質があり、その中でもエルフ族は種族的に親和性が高いことが知られているので、見つかると勧誘が厄介だったと思う。冒険者の大半は人族だからね。

 色々とバレる前にラグナードとパーティーを組めたのは、そう言う意味でもよかった。




 パーティーを組むにあたって話し合いで決めたことは、二つ。


 まずは迷いの魔樹討伐を優先させる。その場所まで護衛するから、魔力を温存して後は頼むと言われた。うん、頑張るよ。

 迷いの魔樹を倒したり魔素溜まりを探索するのはラグナードが、その後の『浄化』処理は私が、リノはその間、荷物と周辺の見張りを担当することに。安全の為も役割分担って大切だよね。


 もう一つは、仮のパーティーなので報酬はきっちり人数分で割って、パーティーの共有費は作らないってこと。

 実力差的には、私達二人とラグナードで半折でいいと言ったんだけどね。最終的にはリーダー権限で彼が三等分にと決めてくれた。いい人過ぎる。せめて、お荷物にならないように気を付けよう。







 予定通り、街道を10km程進んでから北の森に入り巨木群へと進んでいく。


 今回は、私達よりずっと強くて五感の優れた獣人族のラグナードがいるので、この辺りにいる弱い魔物なら連続して群れで襲って来られても余裕で対処出来そう。


 彼の『索敵』スキルはなんとレベル5に達していて、意識せずとも常時発動出来るらしいよ。すごいよね!?


 その為、一番前で先導してくれてる。


 下草も多く、木の根がゴツゴツとしてて歩きにくい場所が続き、獣人族やエルフ族ほど森が得意でない人族のリノには厄介な道程だ。

 この中を物音を立てず気配を消しつつ進むのは難易度が高いので、そこは気にせず移動を優先して進んでもらう事にした。


 当然、魔物を引き寄せちゃうんだけど……ちょうどいいので最初の数回は私とリノとで連携して討伐するのを見てもらい、その後は三人でのパーティー戦を試した。

 北の森の中でも弱い魔物としか遭遇しない場所にいる内に役割分担の確認もしておきたかったしね。




 ラグナードに指導を受けながら魔物を次々と討伐していく内に、段々と連携も取れて来たんじゃないかと思う。彼のOKも出て、これで一応は森の奥へ向かう準備が仕上がった。


 最初の目的地である巨木群へ着いたので、一旦休憩をする事にした。


「結局、ここまで魔素溜まりはなかったな」


「この二日間で『浄化』して回ったからその成果が出ているのかも? 同じ場所に再発生している事もなかったし」


「新たな迷いの魔樹も見つからなかったですし、よかったですよね」


「そうだな。後は巨木群の奥がどうなってるか……」


 他の冒険者もまだ来てない場所だろうし、行ってみないと分からないから不安もある。ウジャウジャ湧いてたら嫌だなぁ。




 移動する前に、いつものように自分とリノに支援魔法で『HP回復』と『MP回復』を掛け、彼女には聖魔法の『治療』と『浄化』もしっかりと重ね掛けしておいた。

 ラグナードは回復の魔道具を身に付けているし、元々の能力値が高いからまだ必要ないって言われた。


 リノの魔力欠乏症のような体質の事も彼には伝えてあって、効果が切れる一時間おきに掛け直してるんだけど、限界を把握しておくのも大切だからと指摘されて、敢えて休憩をいつもより減らして見極めることにしている。過保護過ぎるのもよくなかったらしい。

 私とパーティーを組んでからは体調も安定してきているけど、少しでも不調を感じたら倒れる前に早めに申告してもらうことにした。


 それに、もし倒れても、ラグナードが持っているポーションや魔道具で回復出来るから。

 それでも駄目なら、背負って帰ってくれると言うので不安そうだったリノも挑戦することを了承した。


 そういえば、私達ってポーション類を一切買っていないね……。支援魔法が使えるからと後回しにしてきたけど、危険な中奥まで来るなら必要だったよね!?


「支援魔法があっても、ローザが魔力切れになれば使えなくなるんだ。万が一を考えて買っといた方がいいな」


「うん、ありがとう。準備不足だった。今後は気を付けます」


「まぁ、冒険者に成りたてで金もなかっただろうし仕方ないさ。とりあえず今日は初戦だし、無理せずいこう」


「はい、よろしくお願いします!」







 ラグナードを先頭にリノを挟んで私が最後尾を歩く。


『索敵』で周囲の状況確認を行い魔物の接近を避け、迷いの魔樹と魔素溜まりを探していく。レベル5の『索敵』はやっぱりすごくて私じゃ感知出来ない距離を看破するので、無駄な戦闘がなくて捜索が捗るのがいいよね。私も『索敵』スキルのレベルをあげたいなぁ。


 ラグナードも聖魔法を使えるらしいけどレベル1なので、レベル2の『浄化』は出来ない。

 どれだけ魔素溜まりがあるのか分からないから、魔物との戦闘中は二人を補助するだけにして魔力を温存することになっているんだけど、今のところはそれさえなく、ただ後ろに付いて歩いているだけになっている。


 でもこのまま森の中を進めば、会敵するのは必至だろうから油断はしないけどね。




 暫く歩き回って、前方に魔素溜まりがあるのに気づいたラグナードに、その場所まで誘導された。


「ローザ、頼む」


「うん、わかった」


 ここのは結構大きく歪な魔力を感じる。なので少し強めに魔力を込めて……。


ピュリフィケーション』!


 よしっ、きれいになった。これくらいの強さでやれば一度で消し去れるんだね、覚えとこう。


 そしてこの大きさの魔素溜まりを『浄化』した後には聖魔水晶がある可能性が高い。期待して『魔力感知』スキルを使ってみると……。


 あっ、あったよ。これを採取すると、より森の侵略を食い止められて危険が遠ざかるので回収していく。


 私とリノとで『魔力感知』を使い土の表層部分を掘り返したりして、他にもいくつか小さな欠片を見つけた。


 その間、ラグナードが周囲を警戒してくれてたんだけど、こうやって魔法を使って魔力を放出し足を止めるとすぐ魔物が寄って来ちゃうから急いで拾っていく。


 私の『索敵Lv1』にはまだ引っ掛かってないので少しは猶予があるけど、移動し続ける方が危険を回避出来るということで、手早く出発の準備をしてその場を離れた。





 いくらも進まないうちに迷いの魔樹が生えている所をラグナードが察知した。しかもその個体は厄介なことにスモールトレント付きの成体だという。


 今回の迷いの魔樹は私達が今まで対峙した中でも一番の大きさで、幻術も強力になっていると教えて貰った。




 結論を言えば……勝てない相手じゃない。


 ただ、スモールトレントの数が多い。少し進むと私の『索敵』にも表示されたので分かるようになったんだけど、敵を示すマーキングで真っ赤に染まってしまった。


 幻術に耐性ない人族のリノも「幻術耐性+1上昇」のブレスレット型魔道具がある。

 スモールトレントの幻術くらいなら引っ掛からないだけの効果はあるみたいなので、念のため私も彼女について幻術に掛からないギリギリの所で待機し、彼が先行して本体を倒すことに。


 火魔法もレベル4まで使えて魔力量も私より多いのでそこはお願いして、倒したらすぐ私達も現場に駆けつけ、スモールトレント狩りに参加する事になった。




 獣人族らしく、音を立てずに素早い動きで木々の中へと消えていく。


 前方からラグナードの魔法が迷いの魔樹に命中する音がして、本体とそれに寄生していたスモールトレントの反応が半分くらい一気に消える。


 それを確認してすぐ走り出したんだけど、進行方向からゆっくりとした魔物の反応が二つ、三つと地味に増えてきた。

 

「これ、逃げて来たスモールトレントのだ。こっちに向かってきてるっ」


「分かりましたっ」


 とはいえまだ反応数も少なく、初めて対峙する魔物だけどゴブリンより動きが遅いらしいので二人でなんとかなりそう。


 回り道をする必要も無さそうだと突き進んでいくと、さっそく何体ものスモールトレントが這ったり跳ねたりしながら向かってきた。



 この距離だと、ラグナードがいる場所も直接見える。


 さっさと倒して合流しよう。






お読みいただきありがとうございます。

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