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第28話 スモール・ワームとの遭遇



 ポイズンラットを次々と討伐していくうちに、今日の目的地、虹色の樹へ着いた。


 昨日、邪魔になる草や枝なんかを最低限払って道筋をつくっておいたので、近付くほど進みやすかったよ。



 相変わらずの巨木に圧倒される。


 今日は昨日よりもさらに高く、樹の天辺まで登る予定。

 途方もない高さだけど、昨日の経験からして行けるはず。


 が、頑張るぞ――!


 僅かな樹の節を足掛かりに一番下の枝まで登り、そこに採取に必要ない荷物を置いて身軽になる。


 昨日そのままにしといたロープをつたいながら、するすると登り、もう一本ロープを出して更に上へと登って行くと、この高さは風が少し強めに吹いていた。


 主枝も側枝も多いし、バランスの取り方は本能で分かるので採取に支障なさそうだけど、念のため命綱はだけはつけとこう。


 吹き抜ける風が気持ちいい!


 この高さからだと昨日は見えなかった、ボトルゴードの町と、最初に立ち寄ったジニアの村の両方がよく見えるね。絶景です!


 じゃあ、お仕事、始めますか。




 今日もいいお天気なので、葉っぱはキラキラしてますね。そんなに煌めかなくてもいいのに。


 『鑑定』して、状態が「特上」の葉を探しているんだけど……どれだろ?


 あ、あった! 


 見た目では判断つかないけど、これが「特上」だって『鑑定』さんがいってる。


 やっぱりよく陽が当たる、この天辺付近は多いみたいだね。

 一枚ずつ確かめていくが、ほとんど移動せず採れてる。

 キラキラ攻撃にもちょっとずつ慣れてきたし、段々と採るスピードもあがってきてると思うよ。


 七種類の葉色をそれぞれ百枚ずつ、合計七百枚集めて一セットで、更に「上」か「特上」だけが、昇級ポイントの3点を貰える。


 厳しい条件だけど、これなら何とか数を集められそう。


 昨日は、二種類の葉色を集めただけだったので、適当に二つの袋に分けて突っ込んでいっていたけど、それだと嵩張っちゃってたんだよね。


 なので今日は五十枚ずつを、紐がわりの長めの草で束ねてから、袋にしまっていってみると、随分とコンパクトにまとまった。

 ちょっと時間はかかるけどこれはいいね、今度からこうしよう。


 


 一旦、保存食とお水を飲んで一息つく。

 支援魔法が切れていたので『HP回復』と『MP回復』を掛け直しておいた。


 休憩後はステップアップのため、町へ戻る道すがら、もう一度魔物討伐をすることに。




『索敵』で今まで倒してきた魔物の種類が見分けられるようになってきたのはうれしいな。レベルは上がってないけどね!


 行きと同じように、森の浅い場所から外周に向けて進んでいるんだけど、強い魔物はやっぱりここら辺には出てこないみたい。

 表示されるのはゴブリン並みかそれ以下のものばかりでほっとする。


 ゴブリンの他にはホーンラビットやポイズンラットなどもいて、旅してきた森とそれほど種類は変わらないみたい。


 


 出てくる魔物を倒しながら進んでいると、行きにはなかった果樹が割りと多く点在してる場所に出た。

 行きと帰りでちょっと別のルートを通っているんだけど、こんな所があったとは! 


 果樹園でもないのにこの数は凄いなあ。


 近くには初めて見る、ハニー・ビーやビッグ・フライなど昆虫系の魔物がたくさんいて、その大きさと色鮮やかさに驚いた。


 ハニー・ビーなんて蜂蜜色で、飴細工みたいに艶々してて、なんかやたらと周りにいい匂いを振り撒いてるし!


 美味しそうな名前のビッグ・フライはでっかい蝶の魔物だけど、ピンクに黄色の網目模様で、全体的にもふもふした体毛に覆われてる。

 これも見た目だけはメルヘンカラーでとっても愛らしい。



 そしてスモール・ワーム、ついに現物に遭遇しちゃった。


 うっかり可愛いって思っちゃったじゃん、いもむしなのに!


 こっちはビッグ・フライとは反対の配色になっていて、黄色にピンクのシマシマだよっ。

 モフモフでふっかふかの体毛、丸っこい寸足らずのフォルムなんて卑怯だ、こんなのかわいいって言うしかないじゃん!?



 なんかここにいる昆虫型の魔物って、デフォルメされたぬいぐるみみたいな見た目をしているね。

 配色も異世界っぽいし、あんまり昆虫っぽさも魔物っぽさもなくないこれ?

 


 昆虫型の魔物は、一体ずつはそんなに強くはないけど、一撃で倒さないと仲間を呼ばれ、群れで襲って来るので注意が必要。


 なので、空を飛ぶ魔物に関しては今回は挑戦しない事にする。


 装備を整えてパーソナルレベルがアップしてから挑戦するよ!




 ただ、スモール・ワームだけはこの機会に討伐しとこうと思ってる。昇級ポイントだけは高いし、十級の強制依頼だからね。


 スモール・ワームだけが群れている果樹を探していると……ちょっと離れたところにある一本の樹を見つけた。


 ウルルの実がなっている樹だ。


 目の前で私の大好きなウルルの実に群がっているっ。


 これは早く駆除しなくちゃっ、全部食べられてしまうよ!


 それに栄養豊富な果物をいっぱい食べているスモール・ワームは、時に急成長してビッグ・フライに進化してしまうらしいし。


 そうなると非常にまずい。


 町まで飛んできちゃって町の果樹園をスモール・ワームだらけにしちゃうから。だからその前に討伐しないとね。


 


 今回は果樹に群がっている魔物を討伐するので、火魔法じゃなく水魔法を使おうと思う。

 スモール・ワーム自体はポイズンラットよりも弱い魔物だし、動きが遅いというから、水魔法だけで倒す練習をするのにもちょうどいいからね。


 では早速……。


水弾(ウォーターショット)』!


 あ、あれ!?


 もしかして、これ、想定してたよりもずっと弱かったの?


 いっぱいいるので一撃で倒せないからと、出来るだけ連続して『水弾』を放ち、倒せなくても群れ全体を弱らせるつもりで乱れ打ちしていたんだけど……。

 バタバタと半分以上、果樹から落ちてきちゃったよこれ。


 一緒にウルルの実もいくつか巻き込まれて落ちゃってるけど。


 なんかラッキーだったね! もうほぼ全滅してるから後は残ったやつを一匹ずつ確実に倒すだけでよくなったよ!


 もう一回、水魔法で撃ち落とし、仕留めきれず目を回して気絶しているのにだけ、万能ナイフでとどめを刺していった。


 こうして予定していたよりもずっと早く、倒しきることができた。


 そして幸いなことに、戦闘後の後始末に苦手意識を持たずに済みそうなんです。


 グロくないんだよこれが。


 スモール・ワームの体毛がメルヘンチックなこともあって、果樹の下にモコモコのファンシーなクッションを積み重ねてあるみたいに見える。

 それにスモール・ワームの体液って、なんか甘くていい匂いがするから血の匂いに酔うこともなくて、精神的にとっても楽なんだよね。



 冒険者ギルドで買った大きな皮袋に、傷が少ないスモール・ワームだけを選んでを詰めていく。

 三十匹は軽く入ると言われていただけあって、楽々収納できる。


 肉が売り物にならない、傷だらけのやつだけ万能ナイフを使って魔石を取り出し、残りはまとめて火魔法で燃やして後始末をしておいた。




 なんか今日の戦闘で、スモール・ワームに対する苦手意識がちょっと減ったよ。

 これからも遭遇したら討伐しないといけない魔物だからよかったけどね。

 それに実物を見た今なら、昆虫型の魔物を使った料理に前ほど嫌悪感を抱かずに済みそう。

 なんか地球にいる昆虫とは別物に見えてきたから。


 エルフとしてこの世界に、順応できそうな気がしてきたっ。


 


 さて、スモール・ワーム討伐のついでに、思いがけず大きなウルルの実がきれいな状態でたくさん手に入った事もあり、背負子がいっぱいになっちゃった。ちょっと、重いです……。

 一旦ギルドに行って、買取して貰おうかな。


 まだ魔力も体力も余裕があるけど、疲労を溜めて疲れたって思う前に余力を残して止めないと命に関わるからいいタイミングだったかも!


 ここら辺には冒険者も来ないし、誰も助けに来てくれないから、引き際を見誤らないようにしないとね!



 

 

いつもお読みいただきありがとうございます。

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