表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/124

第27話 エルフの特性

 


  しっかり朝食を食べた後、今日もまず先に北の森へ向かう。


『索敵』をしつつ、視覚、聴覚を同時に意識しながら昨日よりペースを上げて走っていく。


 これは『視覚強化』、『聴覚強化』のスキルを取る為にやっていること。

 スキルを訓練でも取れると判ってからずっとしてる。


 誰を信じていいか分からないし、エルフじゃなくとも、女性冒険者が一人で行動しているのを見て、よからぬ事を考える奴がいないとも限らない。


 危ないので、一応、自分なりに偽装はしているんだ。


 フードも深めに被ってなるべく外見も分からないようにした上で、町中では常時、『隠密』を発動させてなるべく目立たない様にって。


 外套さえ着てれば、あっちもこっちも凹凸がないからね私の場合、ぺちゃっとしてるから性別もバレないはず!


 用心しすぎだって思うでしょ?


 違うから!


 自意識過剰とかでも何でもなく、事実として、エルフってとんでもなく美形だから。想像してたのよりずっと凄かった……。


 もう可愛いとか美しいとかそんなレベルじゃない、本当現実離れした美しさなんだよ? 神々しいっていうかね!?


 鏡に写った姿を初めて確認しときは、びっくりを通り越して、むしろ唖然としてしまったよ。


 まんま森の妖精さんだったから、何だこれって……。


 真っ白で瑞々しい肌、淡く光る金の髪、エメラルドのようにキラキラと煌めく緑の瞳、スレンダーな体型……。


 ま、まあ最後のは置いとくとして、語彙力が全く追いついてないけど、とにかく誰ですかこの人って感じだった!



 ()()()()()()()! 


 隠さなきゃと思ったんだよね、トラブルに巻き込まれないためにも。

 一応、すぐにショールを買い、ターバン風に巻き付けて髪と耳を隠すようにしたから、万が一フードが外れても少しは誤魔化せるはず。


 私は魔法以外貧弱なスキル構成だし、人族には性別関係なく体格で劣るから武力行使に出られたら完全に負けると思われる。


 少しでも強化するためには、装備を買うお金が全然ない今、エルフの得意な魔法でなんとか凌ぐしかない。

 魔法ならタダで、魔力があるかぎり使えるし、毎日鍛えれば魔力総量も増えるし。


 身体強化とかを魔力を使って出来るといいんだけど、どうやればいいか、まだ全然取っ掛かりすら掴めてない感じなんだよね、残念ながら。



 それにもうひとつ、注意しなくてはいけない事がある。


 ここ数日街中で暮らしてみて気付かされたことなんだけど、『異世界知識』って村で暮らす子供程度のものしか無いんじゃないのか、と言うこと。


 これは前から思ってた事で必要最低限っていうかね、最新の情報だけ分からないというよりはむしろ、知識全般が漠然としたもので、大まかにしか分からないという事の方が多いという感じがする。


 人族に一番普及している魔法が魔力消費の少ない、魔方陣魔法だっていうのも『異世界知識』になかったし。

 ただエルフの三分の一の魔力しかないってことだけしか載ってなくて……。


 便利な魔道具の普及率、街に入る時の「真実の鐘」の設置の事、そういう町中の情報もまるでなかった。


 エルフにしても魔法は得意とわかっても、多種族と比べてどのくらい有利なのか、どの属性魔法と相性がいいのか等、詳しくは分からないまま。


 多種族の事も、人族の街で暮らしていることは分かっていても、どれくらい共存出来ててどんな割合で住んでいるのか、住民感情はどうなのかなんてのもうっすら表面的なことしか分からない。


 まあこれまでに出会った人族は、みんないい人だったけどね。

 他人種に慣れてる偏見の少ないギルド関係者がほとんどなので参考にならないと思うけど。



 だから毎日しつこいくらい言ってるけど、自分を強化するのは急務なんだ……。





 手っ取り早く有益なスキルを増やす。


 経験値が貯まるまでが長く、なかなかレベルが上がらないのを実戦で地道に鍛えていく。


 その必要があるんだよね。


 その為にはやはり、エルフという種族の特性を生かして、五感や魔法関連を伸ばすのが近道かなと思った。


 スキルとして取るだけで、種族特性以上の、それまでと全然違う力を、はっきりと体感できたから。




 五感については、まず最優先で必要そうな、視覚、聴覚に絞ってスキルを取りたいと思い、こうやって練習している。

 

 他にも、感覚が優れているエルフなら、木登り中に意識すると『平衡感覚』スキルも覚えられるかも知れない。

 巨木群で安全に活動するためも欲しいスキル。


 まずはこの三つを試してみる。冒険者の仕事を意識してやっていれば、自然と鍛えられていくと思うし。




 次に魔法だけど、レベルを効率的に上げるには魔導書を読むのが一番いいと『異世界知識』にはある。


 なぜなのかは知識になかったので知らない。

 ともかく魔導書は専門書なのでとっても高額だというし、お金がないので当分買えない。


 なので、今できるのは魔法を使う回数を増やして、精度を上げることぐらいかな。


 時間があれば、魔導書を読む以外の方法で魔法のレベルが上がらないのか、上がらないならレベルの中で使える技を新たに創れないのかも試してみたい。


 実際、保存食を作るのに水魔法で水分を抜き出す「乾燥」っぽいのが出来たんだから、創作できないことはないと思うんだ。

 昨日も魔力操作で土を少しだけ「耕作」できた訳だし、初日に「水作成」や「着火」もすぐ出来るようになったし。

 イメージをしっかり持てば、攻撃魔法以外なら割りと簡単に成功できるのかも。



 最後は自分のパーソナルレベルを上げること。


 今のところ『鑑定』で表示されないからどうやって確認すればいいのかわからないけど、魔物を倒すとパーソナルレベルが上がるっていうのは『異世界知識』にあった。こればかりは訓練しても上がらないらしい。


 生物としての生命力が上がるっていうことだから、どうしてもやっとかないとね。一人で魔物と闘うのはとっても怖いけど。


 そんなところかな?


 と思ったけど、もう一つ大切なことがあったよ!


  それは逃げ足を鍛えること! 最後に必要なのはやっぱりこれでしょ。


 取っててよかった『俊足』スキル! もっと育てていきたい。


 でも地道にトレーニングするより、実践形式の方が私の性に合ってるから、毎日の北の森までのハーフマラソンをこれからも続けようと思う。




 そうこう考えているうちに今日の目的地へ着く。


 巨木群から少し手前の森、今回はここから中に入っていく事にする。


 森の奥へは入らずに外周付近を通ってマッピングしながら、最終的に虹色の樹まで行く。


『マップ作成』があるので迷わないし、そこまでの道をレベル上げの為、魔物を討伐しながら進もうと思うんだよね。




 ここら辺はギルドで聞いていた通り、冒険者があまり来ない事もあって、私から見ると森の中が荒れ放題というか、倒木が道を塞いでいたり、草が生え放題になってて見通しも、足場も悪い。


『索敵』がなければ何か潜んでるんじゃないかと、怖くて真っ直ぐ進めなかったかもしれない。


 昨日、東の草原で確認したところ、何もないところでの『索敵』の範囲は広がっていた気がしたけど、こうも遮断物が多いと100m以内が限界みたいです。


 しかしこうやって改めて魔物を討伐しようと探していると、面白いようにすぐ『索敵』に引っかかるな。


 これはポイズンラット? すぐ増えるから即殲滅しなきゃいけない魔物。


 まず手始めにこの群れから討伐して行きますか!

 

 燃えやすいものが周りにいっぱいあるので、いつもポイズンラットを討伐する時に使っていた火魔法が使えない。


 でも私には、聖魔法と水魔法のコンボがある! これで倒していく。


『聖火』の光で足止めして、怯んだ隙に『水弾』で止めを刺す。


 サクサクと手際良く順調に仕留められた。六体の群れならもう余裕かもしれない。


 じゃあ次も行ってみよう!


 同じ反応だからまたポイズンラットっぽい。


 どんだけいるのポイズンラット!?


 ほんと一匹見つけたら三十匹はいるってやつだよっ。地球にいるみんなの嫌われ者、例の黒光りするやつと同じだ、これ!



 虹色の樹へ辿り着くまでそれからも四度ほど戦闘したが、魔力不足に陥ることもなく、何も問題なく倒せた。


 ――全部ポイズンラットの群れだったけどね!


 


  


いつもお読みいただきありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ