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第24話 これからの事



 ギルドは昼過ぎのこの時間、すごく空いてる。


 昨日、受付をしてくれたエドさんと目が合い、またまたにっこり笑って手招きしてくれたので、遠慮なくそちらに向かう。


 討伐は、ゴブリンなど魔石だけの魔物は、討伐規定数より少ないため出さずに、ホーンラビットだけ買取して貰う事にする。

 採取は、薬樹の葉っぱを、全部出した。


「ホーンラビットは大きくてきれいな状態なので、これなら高く買い取れると思います。宝火樹の葉、これはいっぱい採ってきましたねえ。とてもいい品質なので買取価格が上がりますよ。百枚につき、報償金を10シクル出します」


 今日はエドさんがそのまま査定してくれるみたい。


 宝火樹の葉は十枚から買取可能だけど、昇級ポイントは一度に百枚持ち込んで、品質が「上」以上ないと付けてくれないんだよね。


「虹色の樹の葉の品質は、『普通』ですね。これから夏に向けて日照時間が長くなってくると、陽光がよく当たって品質が良い葉が増えますよ。その時は報償金も出ますから」


 こっちも宝火樹の葉と同じ買取条件だけど、同色の葉が百枚じゃないとダメってとこがめんどいところ。

 ちゃんと赤と黄の葉っぱ、百枚ずつ採ってきましたよ。


 昇級ポイントは品質が「普通」だった為、今回はなし。き、厳しい。


 こちらが見本です、と「上」や「特上」の葉っぱを見せてくれた。実物があると分かりやすいね。


 話ながらてきぱきと処理してくれて、あっという間に査定が終わった。


「全部で140シクル、昇級ポイントは1点ですね」


 魔方陣魔法の板に左手を置いて点数の更新をしてもらう。

 う~ん、採取中心だと買取価格も昇級ポイントもとっても少なめです。


 お礼を言ってギルドから出た。


 まずはお昼ご飯を買おう。


 あのパンの実を売ってるおじさんの屋台、今日出てるかな?ギルドから近いんだよね、あそこ。


 あ、いたいた、昨日と同じ場所だ。


「おじさん、約束通り買いに来たよ!」


「おっ、あの時のねーちゃんか! いらっしゃい!」


 昨日買えなかった、おじさんおすすめの美味しいパンの実と果実水のセットを買う。お昼は様子見がてら、東の草原で食べようと思っているので、果実水は手持ちの水袋に入れてもらった。


 それから気になってた、屋台の隣の街路樹に生ってるパンの実。

 手を伸ばして二、三個もいでもいでみた。どんな味か食べ比べてみたかったんだよね。


 これだけだとあれなので、近くの屋台で串焼肉も買う。

 食欲を刺激するいい匂いしていたので、ついつい塩とタレ、それぞれ一本ずつ買ってしまった。美味しそう。

 これ、結構量があって、ずしりと重いね。ちょっと買いすぎたかもしれない……。


 昼食はたっぷり確保したので早速、東門まで向かう。

 ここからだと近くてすぐ門についたので、門番さんにギルド証を見せて通してもらった。


 門から出て、軽く走りだしながら考える。


 今日の稼ぎがずっと続くと、中々厳しい。


 どうしても必要なものだけ買って、装備代を貯めたいけど……高いんだよね、いつになることやら。


 一番稼げるのは魔物討伐だけど、危険も一番大きい。

 今のレベルで安全に狩れるのは弱くて安い魔物だから、討伐数が規定に達しないと買取価格だけで、報奨金が支払われなくなるから苦しくなるし。


 野性動物だと人を見たら逃げていくので危険は少ないけど魔物の討伐より安い上に、重くて嵩張るから量を狩れない。

 血抜きや後処理にも時間がかかるから、積極的に狩りたいとも思えないし。


 採取は元々単価が安いので、たくさん集める必要があるから時間が掛かるんだよね。

 加えて今回のように、虹色の樹の葉が「普通」の判定を受けると買取価格も通常額で、報償金もでないし昇級ポイントもつかないという悲しい結果にもなる。

 

 逆に「上」以上の色艶の葉だと、宝火樹の葉のように買取価格が上がることもあるから、『鑑定』と『採取』のスキルを伸ばせれば結果がついてくると思うけどね。


 さっきギルドで見本を見せてもらえたのはよかった。

 しっかり観察してたら、いつの間にか『鑑定』で、「普通」とか「上」とか「特上」とかの状態が感じとれるようになったんだよ!

『鑑定』レベルは上がらなかったけど、今度から違いが分かるからとっても便利。この調子で経験値を貯めていきたい。

 

 採取依頼中心だと確実に稼げるけど、嵩張ってあまり量が採れない。

 背負子には余裕があるんだけど、でもパンパンまで乗せるっていうのは魔物も多い森の中では身動きとれなくなるから危険だし。


 う~ん、どうしよう?


 考えてるうちに、だいぶ町から離れた。

 草原は平地なので、遠くまで見渡すことができ、出来なかった……。


 何このやたらと背の高い草は!

 この世界の大陸は大半が大森林に覆われていることは『異世界知識』で知ってたけど、草までこんなに強いとは……逞しすぎる。

 街道沿い以外はわっさわさだね!


 見通し悪すぎて、遠くにちらほらと歩いている冒険者も、頭の天辺だけしか見えてないよ。


『索敵』にはそれ以上に冒険者と同じ表示がされているから草丈に隠れて見えないけどもっといるんだろうな。


 絡まれると面倒だし、十分離れたところまで歩き、まずは薬草や野草の生えていない場所を探す。

 ここから辺でいいかな?無駄に生い茂ってる背の高い普通の草を刈り取って座れるスペースを作る。


 よしできた、ちょっと遅いけどここでお昼ごはんにする。



 まずは果実水。香草も入れてあるみたいで、さわやかな甘味となってて中々美味しい。のどが渇いてたから一気に飲んじゃった。


 串焼き肉はどうかな。ホーンラビットのお肉を使ってるって言ってたけど、うん、やっぱり塩があると全っ然違う! すっごく美味しい!


 タレの方も何の香辛料を使っているのかは分からないけどピリっと辛味がきいてて、いくらでも食べられそう! 両方買ってよかった。


 おじさんが自慢するだけあって軽く火を通してあるパンの実も、匂いだけじゃなく味もバター風味がきいてて、肉と一緒に食べるとこれまたいい感じに。


 食べてみたかった街路樹のパンの実も素朴な黒パンって感じで、ちょっと固いけどよく噛んで食べると旨味が出てきてなかなか味わい深い。

 両方とも個性があって、どっちも美味しいね。


 でもちょっと買いすぎたかも。


 結局食べきれなくて、残りは大葉に包んで明日の昼食にすることにした。

 この大葉ってすっごく便利なんだよね。

 森の中ならどこにでも生えてるし、火に強いから即席の器としても使える。

 効能も朴葉に似てて抗菌作用があるから、こうやって包んでおくと明日まで持つんだよね。

 

 さて、お腹もいっぱいになったことだし、当初の目的通り、この草原の薬草を調べて見ますか!




いつもお読みいただきありがとうございます!

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